第14話 転移
「……」
結局のところ僕はギルドマスターを殺せなかった。クソ。
「まあまあ先輩。そう拗ねないでくださいよ」
「そうだよ。王都に行ったら美味しいもの一緒に食べよ?」
「……別に、拗ねてないけど」
そう寝っ転がったまま言う。ルエールは僕が落ち着いたのを確認すると皆を呼んでくると言って外に出ていった。
「というか、僕たちを王都に呼ぶのはいいけどその理由はなんなのか2人は知ってるの?」
『いや?』
「なんで知らないんだよ……」
嫌な予感がする。なにか面倒なことに巻き込まれそうなそんな。
「まあ大丈夫っしょ。俺たち結構強いですし」
「うんうん!大丈夫大丈夫!」
「お前らそういうとこだぞ」
そんな風に呆れているとガチャリとドアが開く音がし、ルエールと取り巻き共が睨みつけながら大勢入ってくる。はぁ。
「あのさぁ。お前ら怪我人がいる部屋にゾロゾロ入ってきて睨みつけるとか良識とかないわけ?」
「は?何ですその言い草!ぶち殺しますわよ!」
クリュスが怒りの表情を見せながら睨みつけてくる。はっ。
「ん?なに?僕は負け犬の声は聞こえない耳してるから。ルエールさ、こいつがなに言ってるか伝えてくれない?」
「~~~!」
「クリュス抑えて抑えて!」
公爵令嬢様が顔を真っ赤にして僕に突っ込んでくるのをルエールが肩を掴んで阻止する。
「兄さんも!皆のこと煽るのやめてよね!」
「はいはい」
そう言うとフラムが僕の耳に近づきヒソヒソと話をしてきた。
「先輩。なんであの人たち睨んでくるんすか?」
「ちょっと前に全員ボコした」
「え?なにしてんすか?あの人たち上流階級の人でしょ?俺仲良くして甘い汁啜ろうとしてたんすけど」
「お前ホントいつか痛い目みると思うよ」
呆れていると次はクロフが良識なし共に近づいて行く。
「ねえねえ、お姉ちゃんたち」
「ん?どうしたのかな?」
それをティナが聖女様らしい笑顔を見せて対応をする。
「うん!質問があるの!」
「む?なんだ?私は騎士だからな!どんな質問でもかっこよく答えてあげよう!」
「そうなの!?ありがとう!じゃあ」
無邪気な笑顔をする。だがそれとは裏腹にとんでもないことを言う。
「貴方たちってジェロアお兄ちゃんより強いの?」
『……ん?』
「だから強いの?弱かったら私と勝負しようよ勝負!皆キレイだから血を浴びてみたいの!」
『……?』
あいつらが困惑の顔を見せる。だろうね。本当にあいつは。
「おい!初対面の人間にそういうこと言うなって何度も教えたでしょ!」
「えー。だってー」
「いいから戻ってこい!さっさとしないとお仕置きするぞ!」
「むー!分かったよー!」
不服そうにしてクロフが僕の方へ来る。はぁ。また1から教育しないとダメか?
「……大変そうだね兄さん」
「まあ、こいつもこいつで大変だったから。仕方ないよ」
といってもこれはいただけない。こんな性格だと絶対に早死にするから今のうちに変えとかなきゃ。
少し気まずい雰囲気になる。それを変えようとしたのかルエールが口を開いた。
「そ、それじゃあ全員揃ったことだし王都に行こうか!レイラ、人数分の場所を用意」
「必要ないよ。ヴァルがいるから。ねえ?」
「はい。私の転移魔法なら王都まで安全に一瞬で移動できます」
真面目な声でヴァルがそう答える。そしてチラリとレイラの方を見た。
「……なんですか?」
「いえ。ルエール様のメイドをしている癖にこの程度できなくてどうするんだ、と思っただけです」
「……」
「マジでそういうのいいから」
ホントこいつら仲悪いな。前より悪化して気がする。
「てかそんな口喧嘩する暇あるならさっさと転移魔法の準備してよ」
「申し訳ございません。では」
ヴァルが頭を下げて、それを直すと視点が変わる。瞳に映る光景はセシニュスより栄えて、賑わっている場所。
ああ。本当に、懐かしい。ここが僕が育った場所。王都だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます