第7話 決闘


「ほら?どうしたのかかってきなよ。あ、もしかてしハンデが欲しい?なら僕はここから1歩も動かない。これでいい?」


 僕は心底相手をなめた態度をとり煽ると思った通りの反応をする。


「っ!いいですわ!その挑発にのってさし上げます!」

「そうだ!今すぐ貴様のその慢心を後悔させてやるぞ!」

「そんなボロボロの状態のお兄様に負けるわけないじゃん!」

「はは!いいねぇいいねぇ!その生意気な態度!もっとしてよ!そういう奴を徹底的に叩き潰すのが一番楽しいんだからさぁ!」

「っ!減らず口を!」


 煽りに煽られとうとう我慢できなくなったのか脳筋騎士が剣を抜き、尋常ではないスピードでこちらに近づいてくる。

 凡人なら反応できずに斬り殺されているだろう。だが僕は違う。

 そう思いながら指を鳴らしてを使う。すると緑色の何かががドロリと僕の前に現れた。


「っ!」

「アハっ」


 アンナの剣が緑色の剣で受け止められるを見て笑いが出てしまう。

 僕を守ったのは先ほど緑色の何かがが変形し作られたもので、緑色の燕尾服を着ている人間らしきものだ。


 そう、人間らしきもの。なぜそう言えるのか。それは所々見える肌が緑色で、一番言えるのは顔がまるでニタニタと笑う笑顔の仮面のようになっているからだ。


「ギャハっ!主様なにかご用ですかぁ?」


 そいつは男の声で言葉を発する。仮面の化け物がだ。

 端からみれば不気味な光景。だが僕は楽しそうにそいつの名前を言う。


「うん、仮面執事。実はそいつのこと倒して欲しいんだよね」

「ギヒっ!ご冗談をぉ。私一人では無理ですよぉ」

「だろうね。だから」


 また指を鳴らす。そうしたら仮面の化け物が剣を持って50体ほど現れ、中にはメイド服を着ている仮面メイドもいる。


「チっ!眷属魔法!相変わらず卑怯な魔法だ!」

「卑怯?はは!なにその言いぐさ!もしかして僕の魔法に嫉妬してる?まあそうだよね。お前は魔法が使えない無能だし」

「っ!貴様ァっ!」

「ギャッ!?」


 アンナは顔を真っ赤にして怒るとさっきの仮面執事が斬られ真っ二つになる。すると奴はドロリと溶け、姿形もなく消え去ってしまう。


「何ということだ!仲間がやられてしまった!」

「何と残酷なことでしょうか!ですが安心してください!」

かたきは我々がとります!』

「ふん!こい!」


 その言葉と共に男と女の仮面がアンナに襲いかかる。うるさいのが玉に瑕だがこいつらは本当に優秀だ。

 魔力の消費も少ないし、結構強いし、人間並み知能はあるから勝手に戦ってくれるし。

 そう思いながら戦闘を見ていると暇になってきた。ちょっと煽ろう。


「ところでさ。お前ちゃんと魔法をどういう風に出すか知ってる?」

「はっ!……何?」


 着々と仮面執事メイドを斬りながらもアンナは僕の質問に反応を示す。


「いやさ。お前、魔法使えないだろ?できることと言ったら魔力を流して身体能力を強化するか、それを体に纏って防御しかない。だからちゃんと魔法のこと知ってるのかなって」

「ば、バカにするな!それぐら、いっ!」

「イヒっ!余所見は厳禁ですよぉ!」

「貴様!」

「え?それぐらいなに?もしかして知らないの?なら優しい僕が教えて上げるよ」


 仮面メイドの攻撃に気を取られてうちにそう決めつけ話を強制的に進める。


「魔法はね、魔力と呼ばれる生物なら誰もが持ってる力を使って出せるものだよ。でも出せる力は人によって千差万別だし、才能と魔力量によって魔法の規模も変わる。まあ僕は眷属魔法っていう便利な魔法。それにそれを操る才能と魔力どっちもあるんだよねぇ」

「……貴様は一体なにが言いたいんだ」

「いやさ。僕はこんなに持ってるのにお前は魔力しかないのが可愛そうで可哀そうで。ま、御愁傷様」

「……貴様は確実に殺してやる。いいか絶対だ」


 怒りが臨界点まで達したのか逆に冷静になり真顔で殺害予告をしてくる。だがそれがまた僕を楽しませる。


「イヒッ!じゃあ殺してみろよ!この数の相手を斬り殺せるならさぁ!」

「っ!?」


 仮面執事メイドを数百体まで増やしアンナを追い詰めていく。これだよこれ。この数の暴力で叩き潰す感じが……!


「あら。もしかして、ワタクシをお忘れで?」

「なに?」


 そうだ。楽しすぎて忘れていた。他にも僕の相手がいたことを。


「なら今度こそワタクシの氷魔法で殺して差し上げますわ!」

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