第6話 準備

「決闘ぅ……?はっ。正気?」

「ええ正気ですわ!こんなに落ちぶれた男に負けるはずがありませんもの!」

「ふーん。なら」


 兄さんは不敵な笑みを浮かべて煽るように言う。


「いま僕と戦いたいやつ全員まとめて相手してやるよ。まあ、一方的にボコボコにされるだけだと思うけどさ」

『はぁ?』


 ボクとティナとレイラ以外が反応をする。それを見たのでボクは止めるように説得をしようとした。


「皆、落ち着いてよ。ボクは君たちが傷つく姿なんて見たくないんだ」

「それは、ワタクシたちがあんな器の小さい男より弱いと言いたいんですの?」

「……いや?」

「なぜルミール様はあいつのことになると口下手になりますの?まあそれはいいですわ。それより負ける?ありえませんわ。なぜなら」

「あんなにも落ちぶれ正気じゃない奴に負けるはずがないからだな!」

「……ありがとうございますアンナさん。そんな大きな声でワタクシの言いたいことを言ってくださり」

「す、すまない……」


 耳元でアンナに大きな声を出されたのが不快だったのかクリュスは笑顔で皮肉を言う。


「はっ。弱い犬ほどよく吠えるってね。それじゃ戦いの場まで移動しようか」


 兄さんはベルを懐から取り出しチリンと鳴らす。すると。


「ジェロア様。お呼びでしょうか」


 一瞬で兄さんと一緒に家を出ていった執事のヴァルが現れた。彼が周りを見て状況を確認したのか、きれいなお辞儀をする。


「お久しぶりでございますお嬢様がた。そして、どうもレイラ」

「……フェクシオ家に仕えるという使命を忘れた男とは話したくはありません」

「家族ならいざ知らず、別の家の貴方にそんなことを言われる筋合いはありません。それに、私はそんなことよりジェロア様に仕える方が重要ですので」

「っ!なんと言うことを……!」

「はいはい。そこまで」


 無表情ながら一触即発の雰囲気の2人を見守るしかなかったが兄さんは手を叩きそれを止めた。


「同じフェクシオ家に仕える別の家どうしで仲が悪いってことは知ってるけど、これ以上主人たちの前で口論するとかいう醜態を晒さないでくれる?」

『も、申し訳ございません』

「いいよ。それよりヴァル、あの草原まで。全員ね」

「は」


 ヴァルが一つ返事で答えると視点が一瞬で変わる。そこは一帯が草原で他の気配はない場所だった。


「……相変わらず、規格外な転移魔法ですねヴァル」

「どうも」


 レイラは羨ましそうな声色で言う。ボクも驚いた。ここまで成長していた何て。

 そんなことを思っていると兄さんはいつの間にか移動していた。


「さーて。それじゃあ始めようか。決闘をさ」

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