第5話 再会
「ほら何か言えよ!返答次第では全員ぶっ殺してやるからさぁ!」
兄さんは周りにいた1人の胸ぐらを掴んで絡んでいく。
「じぇ、ジェロアさんのことを言ったわけじゃないんですよ!勘弁してください!」
「そ、そうですよ!」
「じゃあ誰だよ!ここには僕以外、貴族っぽい奴なんていないでしょ!?」
「あ、あの小娘たちのことを言ったんです!あそこにいる!」
「あそこにいるぅ……?っ!」
柄の悪い人がこっちに指を向けその先を兄さんが見る。すると驚いたような顔をし、不機嫌そうにこちらに近づいてきた。
「何で、お前ここにいるの。落ちぶれた僕でも見て笑いに来た?」
実に2年ぶりのボクに向けた言葉。好感なんてない嫌悪の言葉。それでもボクは。
「兄さん……!」
「あっ……」
「っ!お、おい……!」
ボクがナタリーの手を離すと残念そうな声が聞こえたが、気にする余裕はなく兄さんに抱きついた。いつもはしない恥や外聞もない行動をする。
本当に嬉しかった。双子の兄が五体満足でいてくれたことが。
「よかったぁ……!」
「おい離れろ!僕が人にベタベタ触られるの嫌いだってこと忘れたの!?」
「あ、ごめん」
「ちっ!」
そう言われ離れるとまだ不機嫌そうな顔をしていた。
「それでぇ?愚妹2人と駄メイド。そしてその他のカス共は本当に何で来たの?」
「だ、誰がカスだ貴様ぁ!」
「……相も変わらず口が悪いですわね。矯正して差し上げましょうか?」
「事実を言っただけでしょ。脳筋騎士と尻軽公爵令嬢」
『なっ!?」
兄さんのあまりの暴言にアンナとクリュスが絶句している。その間にそれを言った本人は口角を上げていた。
「そういえばさぁ、全員久しぶりだよね。ならちゃんと挨拶しないと」
そう言い僕の後ろにいた皆に向かって歩を進めた。
「久しぶりだねぇ邪教の聖女様。まだあの邪神を信仰してるの?」
「なっ!?アレル様は邪神なんかじゃありませんっ!」
「はっ。勝手に力を渡して世界を守れとか言ってくる神のどこが邪神じゃないんだか。ま、いいや次」
「……お久しぶりです。ジェロア様」
「ああ。久しぶり贔屓駄メイド。よかったよね僕がいなくなって。存分に愚妹2人のことだけ構えたでしょ?ああ、それは子供の頃からそうだったから変わりはないかぁ」
いつも無表情のレイラの顔が歪む。なにかを後悔するように。
「……申し訳、ございません」
「いいよ別に。気にしてないし。じゃあ次は、お前だよナタリー。逃げるな」
「ヒィっ!」
兄さんは静かに入り口に向かっていたナタリーを止め、また他の人たちのように挨拶をし始める。
「久しぶりだねナタリー。どう?最近はさ」
「ふ、フェクシオ家として恥じない立派行動を心がけていますよ……?」
「ふーん。じゃあ今の手を繋ぐって行為は立派なんだ」
「うっ!」
ナタリーは気まずそうに顔をし、兄さんが呆れたような表情をする。
「あのさぁ。お前ももう成人したんでしょ?そんなんだから婚約者が決まらないんだよ」
「お姉さまが結婚してくれるからいい……」
「できるわけないだろ姉妹だぞ」
「できるもん!」
兄さんははぁーとため息をはき、一段落したのか少しは落ち着いた顔をする。
「まあ、言いたいこと言ったら気分よくなったしお前らが来た理由も聞いてやるよ」
「そ、そっか。じゃあ……」
「お待ちなさい!なに自分だけ好き勝手言って終わろうとしていますの!?ワタクシだって言いたいことはたくさんありますのよ!」
「はぁ……?」
クリュスに詰められた兄さんは不思議そうな顔をする。また長くなりそうだなぁ……。
「なに、言いたいことって」
「もちろん貴方が絶縁するとか言ってフェクシオ家から出ていった話ですわ!」
「……今関係ないだろ」
「関係ありますわ!あんな勝手をしたのによくもまあワタクシたちのことをボロクソ言えましたわねぇ!見上げた精神ですこと!」
兄さんの顔はさっきまでの顔から豹変し真顔になった。
「は?なにお前?喧嘩売ってるの?」
「ええ!売っていますわ!決闘です!」
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