第4話 冒険者

 辺境都市セシニュス。そこは凶悪な魔物達が周りにいるところで、それを王都の近くに寄せない役割をしている。


「ところでさ。何でお兄様はそんな場所にいるんだろう?」

「ふん!魔物に自分の鬱憤でもぶつけに行ったのだろう!奴はそう言う男だ!」

「ああ。それはね」


 馬車に乗って目的地につくまで喋っているとそんな話題が出たのでボクは答えを出す。


「セシニュスは主に冒険者っていう人たちが魔物退治をしているんだ。兄さんはそれになってかなり高い地位になったみたいだよ」

「それ。本当に魔物に鬱憤をぶつけていたら地位が上がったとかいう話もありそうですわね」

「それは……うん、否定できないね」


 ボクが納得の声を出していると馬車が止まる。


「どうやらセシニュスについたみたいだね。それじゃ降りよっか」


 馬車から出るとそこには活気もある街が広がっていた。


「わっ!凄いですね勇者様!」

「うん。そうだね」


 ティナの驚いた顔がとても可愛らしくボクの顔が緩んでしまう。


「皆さま。お疲れさまでした」

「いやレイラ。何時間も馬車を操縦していた君の方が何倍も疲れているだろう?お疲れ様」

「い、いえ。従者として当然です」


 馬車から降りてきたボクのメイドに労いの言葉をかけると赤面をしてしまう。可愛いなぁ。


「はい。そこまでですわ。ルミール様。さっっさとあの男を探しましょう」

「あ、うん。そうだね」


 止められたレイラがとても悲しそうな顔をするが仕方ない。兄さんを見つけたら続きをしよう


「よし。じゃあここから徒歩で行こうか」

『はい!』


 セシニュスを歩き観察していると武器屋とご飯屋がとても多く、そこを冒険者と思わしき人たちが出入りしている。

 そしてボクたちのような格好が珍しいのかジロジロと見られ、いや睨まれているようだ。


「ご主人様。いかがいたしましょう」

「いや。面倒事は起こしたくないから絡んでこないなら放置でいいよ」


 そんな会話をレイラとしているといつの間にか目的の場所についていた。


「ここが冒険者ギルドかぁ」

「お、お姉さま。何かボロボロじゃない?入って大丈夫?」


 確かに何か襲撃があったのかと見間違うような建物だ。でも。


「入らないと兄さんも見つからないからさ。行くしかないし、怖いならボクの手を繋いでてもいいよ」

「本当!?やったー!」


 無邪気にレイラがボクの手と自分の手を繋ぐ。

 それを見た皆が小声でらやましいと言っていたのであとでしてあげようと決心し、冒険者ギルドに入るとそこには。


『ヒィッ!』


 レイラとティナが悲鳴を上げる。それもそうだ。だって建物に入った瞬間、中にいた柄の悪い人たちが一斉にこちらを睨み付けてきたのだから。


「おい。おいおいおい!なんだお前ら!ここはお貴族様たちが来るような場所じゃねぇぞ!」

「そう言ってやるなよ!こういう奴らは自分の家から1歩も出たこと無いような箱入り娘なんだからよぉ!迷っちまったんだろ!可哀そうになぁ!」

「はっ!違いねぇ!」


 木でできたコップに入った酒らしきものを掲げながらギャハハという品の無い笑い声が聞こえてくる。 


 なにここ?犯罪者の巣窟?来る場所間違えたかな?


「き、貴様ら何という侮辱を……!」

「……不愉快ですわね」

「ご主人様を侮辱するとは……。身の程を分からせて差し上げましょう」


 あ、マズイ!攻撃の準備してる止めなきゃ!


「ま、まあまあ。ここは穏便に……」

「お前らうるっさいんだよぉ!!!」

『!?』 


 机に物を叩きつけるような音が聞こえ建物にいる人たちが目を向ける。そこには。


「僕が気持ちよく酔ってるのになに邪魔してくれてんの!?てかなに、お貴族様が来る場所じゃないって!僕が貴族に見えないっていうの!?」


 ああ。そこにはボロボロになった貴族が着るような緑色の服を着て、緑色の手袋をし、鋭いが正気じゃない目をしている男がいた。


「兄、さん……?」


 そう。2年前に失踪した自分の兄がいた。変わり果てた姿で。

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