第3話 勇者パーティー
『全く。ルーエルを待たせるなんて何て恥知らずな人たちなんでしょうか!』
頭の中で女神アレルが与えてくれた聖剣スぺラの声が響く。
「まあまあ。皆、忙しいんだよ」
『貴方は甘すぎます!というか今日することがそもそも気に入りません!もう私寝ますから!起こさないでくださいね!」
「はいはい。おやすみ」
「おやすみなさい!」
そう宥めスぺラの声が聞こえなくなる。剣は眠るのかという疑問が頭を中をよぎるが気にしないようにしよう。女神が与えてくれたものだしね。そういうことも出来るのだろう。
「ルエール様。また聖剣とお喋りですか」
「そうだよお姉さま!私たちともお話して!」
メイド服を着た銀髪の女の人でボクの従者のレイラとボクや兄さんと同じ目と髪をしていて、それを短く切っている2歳下の妹であるナタリーが話をかけてきた。
「ああ。ごめんねレイラ、ナタリー。寂しい思いをさせてしまったね。申し訳ない」
そう笑顔で答えると二人とも顔を真っ赤にさせてしまった。可愛いなぁ。
「もう少ししたら来るはずだよ。皆、ボクの屋敷まで結構距離がある所に住んでるからね」
ボクが迎えに行こうと言ったんだけど全員に拒否をされてしまった。それぞれ準備があるらしい。
「申し訳ございません!」
「お、遅れましたー!」
噂をすればどうやら来たみたいだ。一人は青髪を1本にまとめ、凛々しい顔つきで鎧を着込んでいる長身の女の子でもう1人は金髪と金色の瞳をしてシスター服を着ている子だ。
どちらも走っていて急いでいる姿がとても可愛らしい。
「やぁ。アンナ、ティナ。今日も可愛いね」
「かわっ!?」
「あ、ありがとうごございます!」
鎧を着ているアンナ、シスターのティナの順番にそれぞれ反応を示す。
さて、あと待つのは1人だけ……ん?
「あらあら。皆さま方、随分とまあ余裕の無いことですわね」
「な、何だと!?」
その不遜な物言いにアンナは怒気を強め言葉を返した先には、かつんかつんと音を立てながら歩いていきたのは仕立てのいいドレスを着ている白い長髪の女の子だ。
その子はカーテシーをしてボクに挨拶をする。
「ごきげんよう。ワタクシの婚約者様。今日も凛々しく美しいお顔ですわ」
「あ、ああ。ありがとうクリュス。あといつも言ってるけど破棄されたとはいえ、君の婚約者は兄さんでボクじゃないんだけど……」
「あんな嫉妬にまみれて邪悪な男の事なんて知りません。ワタクシの婚約者は貴方様だけですわ」
「そ、そうなんだ」
ボクが婚約者になった覚えはないけどまあいいか。女の子に恋心を抱かれるのは悪い気分じゃないしね。
「き、貴様!何が婚約者だ!抜け駆けは許さんぞ!」
「そ、そうだよ!お姉さまは私の物です!」
「……長年お仕えしてきたメイドである私が一番ご主人様の事を知っていますが?」
「そ、それが何と言うんですか!私だって」
「ははは。気持ちは嬉しいけど皆静かにして。ね?」
口喧嘩になりそうな雰囲気だったがボクの言葉ですぐに静まり全員がこちらを向く。流石はボク。
「それじゃあ、全員集まったわけだけど今日は何をするか自前に言ったけど重要な事だからもう一度説明するね」
『はい!』
「いい返事だね。じゃあ今日は王国の命令で2年前に家を出て行った兄さんをこの王都に連れて来るのが目的なんだけど……」
『……』
うわ。皆凄い顔してるなぁ。
「……やっぱり兄さんのこと嫌い?」
「大嫌いですわ」
「奴は初対面で私の事をボコボコにしたあげく侮辱した奴です!好きになる訳がありません!」
「お兄様っていつもフェクシオ家としてって私に小言と罵倒言ってきたから嫌ーい」
「……私はフェクシオ家のメイドですから個人的には何も言えません」
「わ、私もあんまり……」
「そ、そっか」
嫌われてるなぁ。それでも。
「ボクはね。兄さんはいつも愚妹とか節操無しとか言ってきたけどやっぱり好きだし、もう一度話したいし、仲直りしたい。だからボクと一緒に兄さんを連れ戻すのを手伝ってくれないかい?」
あんな別れ方でさよならなんてボクが絶対に許さない。そう思っていると全員が渋々ながら了承をしてくれた。
「うん。ありがとう。じゃあ行こうか。兄さんがいる辺境都市セシニュスへ」
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