第3話 理解できない会話

お互いに泣いたら、わだかまりみたいなモノが

とれた。

だから、いつものように率直に聞いた。


「ヨリコ、ノゾミちゃんの事はわかったけど

あんたはいつ、病気がわかったの?」


「それね。

去年の新月の半年後かな。」


「ねぇ、新月って何?」


「年にね、何回か新月の日があるのよ。

去年の11月13日もそうだったのよね。」


「あ、巷の人がスーパームーンとかストロベリームーンとか騒ぎでるやつ?」


「違うわよ。ばっかねぇ。まあ、アズは迷信とか信じないからね。 

私だって信仰もしてないし、仏壇はあるけど、

毎日チーンで終わりだもん。」


「ばかで悪かったわね!

それで?」


「ふっふっふ、、、。

怒ったわね。すーぐに怒るんだから。

ノゾミにはどうしても治って欲しかったからね

あちこちにお参りも行ったわよ。

食事にも気をつけてね。だけど、ノゾミがね、

抗がん剤に耐えきれなくなってきたのね。

そりぁ、そうよね。

子供も自分の手で育てられなくて、、。」


「双子ちゃんだったしね。ただでさえ、大変なのに、、。それで今はノゾミちゃんはどうなの?」


「うん、それがね、腫瘍が内視鏡で取れるくらいになったの。ほっとしたわ。」


「良かったわねぇ。ヨリコもほっとしたでしょう。ごめん、それも知らなくて。」


「ううん、いいのよ。

嬉しかったわ。私の願いが届いたんだって。」


私はヨリコにおかしなモノを感じた。

願いが叶うと話す時のヨリコの恍惚感が溢れる

表情が気持ち悪かった。

現実離れしてる気がした。

ヨリコはアホだけど、信心とかで何かが変わるとかって考えるタイプじゃない。

何があったんだろ?

あ、新月、、、。そう言えば、新月って言葉を

何回も言ってるような。

新月ってなんだろう?


「ヨリコ!しっかりしてよ。

何だかおかしいよ。

ノゾミちゃんの事はわかったわ。

それで、あんたはどうなってるの?」

私は苛ついてきつい口調になった。


「あ、そだね。

私の事だね。咳がね出るようになったの。

アレルギーがあるから、それだと思ってたの。

アレルギーの薬も飲んだりしてたけど、

良くならなかったの。

それで、森ノ宮総合病院を紹介されて検査したわけ。

そしたら、肺に癌が見たかったの。」


「それで、その時には治療できたの?」


「そうね、、。

肺だけで転移は無いと言われたわ。内視鏡で取れると説明されたわ。」


「え、それで、治療しなかったの??

なんでよ?ノゾミちゃんの事で忙しかったから?入院なんて出来なかったから?

だったら、相談してよ。

アサコやポンだって、近くに住んでるじゃない?私だっているわよ。

何だってやるわ。そうやってお互いに助けて来たんじゃない?違うの?」


「アズ、、。

わかってるって。

みんながそうしてくれるってのもね。」


「だいたい、オヤジは何をしてたのよ!

あの馬鹿タレーー!ほんとっに役立たずなんだから!ヨリコの首に縄を付けてでも病院に連れてけつうの。」


「旦那は俺が仕事休むからって心配いらないって言ってくれたわ。

私が決めたの。これは、誰でも無い私が決めた事なの。」

そう言い放つヨリコは私をぐっと睨むように

見つめた。


私には理解できない。

何故?治療すれば取れた癌だったのに放置したの?

ヨリコ、わかるように説明してよ。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る