頭の中の幽霊/みかみさんへ💗
頭の中の幽霊/みかみさん
https://kakuyomu.jp/works/16818093089637126652
ようちゃんをご指名ありがとうございます💗
わたしのファンサとしてこちらにて感想及び僭越ながらアドバイスなどをさせて頂こうと思います。先に言っておきますと、今回はアントニオ猪木ばりのビンタはありませんのでご安心くださいませ。
まず、みかみさんの作品を拝読いたしましたところ思うところがありまして、みかみさんご本人の現状や目指しているところなどを伺いました。今回はそれに基づいてお話をしていきたいと思います。
みかみさんは書籍作家を目指していて、公募も熱心で日本ファンタジーノベル大賞では一次を通過しながらもなかなか二次に手が届かないという話を伺いました。また拙作「ちょっと厳つい創作論」も読んでいただいているということでした。
ですので、今回は創作論だけは足りないもう一つ上の話をさせていただいだこうかと思っております。完全に公募で勝つということに特化してお話をしますので、みかみさん以外には参考にならないレベルかもしれませんことを、先にお伝えしておきたいと思います。
みかみさんの小説は、非常に「ちゃんとした」小説だと思いました。いわゆる趣味として書いている小説とは一線を画しております。収束すべきところでは収束し、発散させるところでは発散しております。これは起承転結よりも上の次元の技術で「文芸」というものを書き慣れた人の作品だなと思った次第です。日本ファンタジーノベル大賞に出した作品も読ませていただきましたが、若年層のライトノベル主体なカクヨムで活動するレベルではないかなと、上級者ゆえのなかなか主戦場をみつけにくい段階なのではと感じました。
さて、そんなみかみさんには最初に大局を示してから具体的な話をしていこうかと思います。小説の上達あるいは進化の段階というのを理解してほしいのです。
第一段階:自分が書きたいものを自由に書いている。
第二段階:読者が小説として読めるものを書いている。
第三段階:読者が魅力を感じる小説を書いている。
第四段階:読者が「みかみさんの作品だから読みたい」というものを書いている。
第五段階:ビジネスとして売れる小説を書いている。
第六段階:自分が書きたいものを自由に書いている。
という感じになるとわたしは思っています。最初と最後が文字面では一緒なのがとても面白いですよね。
第五、第六段階はさておき、今のみかみさんの段階というのは、第二段階は80点以上、第三段階と第四段階がこれからという感じだと思います。ちなみにですが、第二段階が80点以上というのは、カクヨムにおいてわたしの知っている限りでは数人もおりませんので、結構かなりの誉め言葉だと思ってくださいませ。さいかわ賞での受賞者でも大半が60点あるかどうかですので。
さて、ここから少し例えをひいて説明をしたいと思います。わたし自身はよくケーキを例えに教えられてきたので、そのままパクッていこうかと思います。
第二段階というはきちんとしたスポンジが焼ける段階になります。小説であればストーリーや構成にブレがなく、登場人物に一貫性があって、作者の表現が読者にきちんと伝わるということです。特に読者にきちんと伝わるという点が非常に大事で、ここで大半のアマチュア作家は落第してしまいます。みかみさんはこの小説における最初の難関はすでにクリアしているので、わたしのような編集者視点のコーチ屋みたいな人間も安心して読むことができます。80点というのはきちんと焼けていることはもちろんのこと、おいしいスポンジであることも保証されております。この時点であまたいる小説作家において上位20%には位置していると言っても過言ではありません。
さて、きれいでおいしいスポンジはできております。次はそこに生クリームという第三段階が待っております。ここではいかにきれいでおいしい生クリームをデコレーションできているかが問われるわけです。小説においては演出力や表現力に相当します。今みかみさんが直面しているのがこの段階でして、ここに努力すべき戦場があるとわたしは考えます。
もう少し進みましょう。第三段階をクリアすると、「美しくおいしそうなショートケーキ(小説)」が出来上がったことになります。するとショーケース(二次選考)という場に収まることになります。いよいよ、お客(審査員)に買ってもらえるチャンスや権利を得たわけです。
しかしながら、どんなに美しくておいしそうなショートケーキであっても、買ってもらえなけば何の意味もないわけです。どんなにスポンジが良質でクリームが上等であっても、買ってもらえない限りは宝の持ち腐れです。つまり「みかみさんの作ったショートケーキだから買いたい」という購買意欲をそそるようなものが必要になるというわけなんですね。ショートケーキなんて世の中いっぱい売っております。なので、いかに他のショートケーキと差別化できるかが問われるわけです。
ということで、この段階では、「いかにみかみさんらしい作品を書くことにこだわれるか」ということが大事になります。この第四段階で最低でも60点をとれないと、大きな公募においてラッキーはあっても、実力での二次突破はできないということを理解していただきたいわけです。つまり、みかみさんの当面の最終目標は第四段階のクリアということになります。
おそらくみかみさんは、今まで第二段階に不足や不安を感じて、第二段階の中から問題や課題を探そうとしていたと思いますが、今解決すべきは第三段階です。今回は主にここを手を入れていきたいと思います。
第三段階は二つの要件によってなっております。それは、「おいしい生クリーム」であることと「美しいデコレーション(ここでは見栄えと理解してください)」であることなります。これらを解説しながらみかみさんの作品と比較しみましょう。
「おいしい生クリーム」というは演出力だと思ってください。作品の世界観や雰囲気、登場人物や物語へのスポットライトの当て方あるいは影の作り方になります。小説全体というマクロ的な設計です。
この点は、みかみさんはできていると思います。特に「それから一年が経過したが」以降のくだりは綺麗に発散して広がりや余韻を与えていると思います。これが趣味で書いているだけだとなかなか難しい点なのですが、おいしい生クリームという点は満たしていると思います。これ以上演出力を前に出してしまうと、みかみさんの作風では悪い面だけが出てしまいます。
おいしい生クリームがマクロ的だといすると、美しいデコレーションはミクロ的な話になります。ミクロとは一文であり、単語レベルであると思ってください。
ここだけは是非とも歯を食いしばって聞いてほしいのですが、みかみさんの文章は一文一文に分解していくと、装飾という意味においても、研ぎ澄まされているという意味においても、もう少し美しさが欲しいところです。デコレーションとは盛ることでもありますが、研ぎ澄ますことも立派な装飾です。着飾った美しさと無駄のない美しさ。この両方があって美しいショートケーキができあがります。ですので、この点をふまえて力をつけていくことで、読者がその美しさに魅力を感じてくれるわけです。今のままでも十分おいしそうなショートケーキでありますが、厳しい言い方をすればショーケースに入れてもらえるまでの突き詰めた品質には及ばないという現実を、しっかりと受け止めてほしいのです。
具体的なポイントをあげてみましょう。
雑居ビルに囲まれた土砂降りの交差点で、傘をさしていたのは僕だけだった。...①
冒頭というは物語に没頭するために極めて重要な文です。厳しい現実としてここで入れないと読者は読む気を失ってしまいます。とくに公募では審査員を物語の世界に強引でも乱暴でもいいから首根っこ捕まえて引きずり込んでいかなければなりません。ですので、きわめて神経を使って書かなければならないのです。
本文自体は非常に良い出だしと思います。アマチュア作家だったら「いいですねえイメージがバッチリと浮かびます」と褒めたいところです。
雑居ビルに囲まれた土砂降りの交差点で、傘をさしているのは僕だけだった。...②
どうでしょう。これは文法的な話をしたいわけではありません。読者が読んだときにどちらが動態としてイメージができかということになります。①は「さしていた」と「だった」で過去完了的な意味合いに見えて、読者はどこか遠くのおとぎ話を聞いているような、ややアウトレンジな視点でしかイメージができない可能性があります。
②では、いるということで動態が現在なので、読者は直接傘をさしている僕にリアリティを感じます。①ですと文意が「土砂降りなのに傘をさしていない僕以外の人間が異常」みたいな展開を想像してしまいますが、②ですと、僕が次にどんなことをするのか期待して読むことができます。繰り返しになりますが、文法的におかしいという話ではなく、読者に何をイメージさせたいかという点において、こだわりを感じないというところに着目してほしいのです。
夜のしじまに裸体を横たえている
読者としては、美優さんが作中における『幽霊』であることは暗黙の了解として読み進めていると思うのですが、触れることができるのはやや違和感があります。同衾することはともかく、うまく触れないような設定をするか、あるいは触れているかいないかわからないような表現をしたほうがいいかなと思います。あるいはすべての『幽霊』に接触できるという設定をつくるということでしょうか。美優さんが恋人でありながらも『幽霊』でない一貫性を持たせるデコレーションを考えたいところです。認識次第によって触れられる触れられないないという演出であるとしても、一考の余地があると思います。
普段はあまり作品の内容自体については触れないように心掛けているのですが、例としてあげたかったのでお許しください。
質問とともに、僕をじっと見つめている綺麗な二重が瞬きを繰り返した。暗い中で見る彼女の瞳は、オニキスと同じ黒さだ。
読者にオニキスをダイレクトにイメージすることを要求するのではなく、どうせなら読者を魅了する表現にして、美優さん自身も美しく見せたいところです。
質問とともに、僕をじっと見つめている綺麗な二重が瞬きを繰り返した。暗い中で見る彼女の瞳は、僕の何もかもを受け止めてくれそうな、深淵という漆黒にも似たオニキスの石ようだ。
比喩を使うことで表現にリッチさを付加し、かつ、読者が抽象的・具体的の両面でイメージできる余地を与えることで、文章に魅力をつけていきます。本例自体は上手でも妥当でないかもしれませんが、「僕の何もかもを受け止めてくれそうな、」という点で僕の願望や思いを表し、「深淵という漆黒にも似た」という点でオニキスを知らなくても、なんとなく読者なりのイメージができるようになります。
大事なのはデコレーションというのは「単なる自己表現」ではなく、「読者がよりイメージする」「読者がより作品に没頭できる」デコレーションでなければなりません。拙作の創作論にもあるように、どこまでも読者に説得力を感じてもらうためであり、美辞麗句だけであってはいけないということです。
僕は享受した。
言葉的には間違いではないとは思うのですが、享受というはどちらかというと「(良い物を)与えられた」ものに対して使うのが妥当で、僕の勇気や覚悟によって得た、決心というもので受け止めたというニュアンスとしてはちょっとひっかりました。もっと突き詰めて、読者にここまで読んだある種の達成感と余韻を作ってあげられる言葉を選んでみてはどうかなと感じます。
全体的にweb小説のように二三行書いて改行ではなく、隙間をつくらず地続きで書いております。であるのならば、デコレーションという意味でも「AはBである」というシンプルでweb小説的なジャブ+ストレートのワンツー表現ではなく、「AはCのようなBである」「AはBなのでまるでCのようだ」のようにデコレーションを付加したコンビネーション的な文章を基調にしても良いのではないかと思います。シンプルに簡潔に書くというのはどこまでも素人の基礎的な学習内容であり、みかみさんはもっともっと自分の表現にこだわって、盛り付けたり、研ぎ澄ましていっても良いと思います。ストーリー展開の安定さえ担保されていれば、あとはもっともっと自分を出すために、一文一語にこだわるべき段階だと思うのです。
御作をまったく同じままで、わたしがカクヨムで掲載したとします。おそらく多くの読者は「素敵な話でした」「いい物語でした」と言ってくれると思います。ですが、「犀川らしい(あるいはらしくない)作品ですね」とは言ってはもらえないと思います。ということは、公募の審査員には「上手かもしれないけど、誰に書いてもらってもいい小説」という扱いになります。
公募で勝つというのは、読者に寄り添うだけでも審査員に媚びるだけでもダメなのです。読者を無理やりにでも自分の作品に引きずりこんで、審査員にはそれこそ猪木バリのビンタで殴り倒すくらいの個性とそれを担保する説得力、そして引きつけるだけの美しさが必要です。
第三段階をクリアできない人間が大半です。突破できるのは1%もいないと思います。ですが、第三段階に自信が持て、第四段階に迷いがなくなれば、かならずプロの道は約束されます。話の内容や構成ではなく、今は一文のひとつひとつに書く意義や目的をもってこだわってみてください。きっとみかみさんしか書けない小説が書けるようになると思います。
好きな作家さんの本を「デコレーション」という観点で拾い読みするのも良い勉強になると思います。たとえばですが、わたしが崇拝している吉本ばなな先生ですと、キャラにあった形で金言のようなセリフを言わせることで読者を惹きつけ、ひいては自分の主張あるいは思想を表現しております。他の純文学作家であれば比喩にこだわりがあるでしょうし、難しい漢字を使わずとも奥深い地の文を書いていると思います。先達の紡ぐ魅力的な言葉を遠慮なくパクってしまえいいのです。あとこれはあまり人には教えてこなかったことなのですが、かつて歌謡曲と呼ばれていたちょい古めの歌の歌詞を眺めてみるといいと思います。非常にコンパクトでありながら胸に訴えてくるフレーズがたくさんありますよ。
上記のアドバイスをしておいて何ですが、非常に難しい現実がありまして、それはみかみさんはこれらにトライをして書いたとして、それを正当に評価できる人間がいないという点です。わたしはカクヨム以外で実際に作家相手にコーチ屋みたいなことをしている手前、カクヨムで感想や批評を書いている人の文章を積極的に見ておりますが、みかみさんレベルの作品をきちんと評価してまともに批評をリターンしてくれそうなのは、snowdropさんくらいなかあという感じです。みかみさんにはもはや感情的な評価は不要で、論理的な批評が必要だからです。
ですので、コストをかけてでも本気で臨むのであれば、有料サービスや現役作家さんに添削してもらうことを考えた方が良いかと思います。わたしであればいつでも拝読させていただきますが、わたしはどちらかというと物事の根本や原理原則の話になってしまいがちですので、より実戦的な添削をしてくれる環境を模索することをお勧めします。
以上、わたしなりのファンサを書かせていただきました。参考にしていただければ幸いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます