第20話 レベル上げ
40層到達。広大な円形のフロア。
「では、古の加護を試してみましょうか」
誠は青い結晶を掲げる。
「ふむ、まずは軽く」
マクシミリアンも同意する。
結晶が、父子の重力と共鳴を始める。
その瞬間—。
「これは...!」
周囲の空間が大きく歪む。今までとは比べ物にならない重力場が形成される。
「なんという増幅率だ」
マクシミリアンの声に驚きが混じる。
(すごい...!ゲームの攻略本にも書かれてなかった相乗効果!)
「重力嵐!」
誠の何気ない一撃で、フロアの床が大きく抉られる。
「おっと、これは予想以上だな」
父が苦笑する。
「もう少し制御を...」
「はい...これならもしかして」
(45層の"アレ"も行けるかも!)
「父上、良い場所があるんです」
「ほう?」
「本で調べた所45層に、恐ろしい隠し部屋があるそうです」
ゲーム知識を総動員しながら、誠は説明を始める。
「壁の模様を特定の順序で...
そうすると、仕掛けが作動して...
モンスターが無限湧きするトラップが!」
「なるほど」
マクシミリアンが興味深そうに。
「それを利用してレベル上げ、というわけか」
「はい!新しい力なら、効率も上がるはず!」
45層。
父の協力で、難なく隠し部屋を発見。
「ここで仕掛けを起動すると...」
壁が震動し、魔法陣が発動。
次々と出現する魔物たち。
「では、参りましょう!」
「重力無双の時間だな」
古の加護を帯びた重力が、部屋中を覆う。
早朝。
隠し部屋に響く機械仕掛けの音。
湧き出す魔物の群れを前に、父子は作戦会議。
「まずは効率を求めて、範囲攻撃で」
「ふむ、では—」
古の加護を帯びた重力場が、部屋全体に展開される。
「我らが重力無双、開幕といこうか!」
「父上まで厨二病に...!」
次々と出現する魔物たちを、重力波が薙ぎ払う。
・骸骨戦士の大群
「重力圧縮!掃除の時間です!」
「ほう、その掛け声も悪くないな」
昼食休憩
「母上の風干し肉、最高です...」
「エレノアの料理は、昔から冒険向きでな」
午後の部
・ゴーレムの群れ
「父上、威力が上がってます!」
「ああ、レベルの上昇を実感できるな」
一日目終了時、レベルは15も上昇。
しかし、これは始まりに過ぎなかった。
二日目。
「新しい重力技を考案しました!」
朝一から、誠は嬉々として説明する。
「重力を螺旋状に展開して、そこに圧縮波を—」
「なるほど。では、私からも一つ」
マクシミリアンも新技を披露。
父子で技の研究を重ねる。
・デーモンの群れ
「螺旋重力波!」
「重力切断!」
新技の連発に、魔物たちが悲鳴を上げる
「父上、その技の由来は?」
「実は、お前の特訓を見ていて思いついたものでな」
「えっ!?」
・キメラの大群
「この感じ...レベル70突入!」
「よし、更なる高みを目指すぞ」
二日目は、技術的な向上も著しい。
重力の制御が、より繊細に、より強力になっていく。
三日目。
最終日は、より実戦的な訓練へ。
「では、連携重視で」
父子の重力が交差する様は、もはや芸術的とも言える領域に。
・混合モンスターの群れ
「重力共鳴、父子の型・改!」
「完璧な同調だ、アレクサンダー!」
「父上、古の加護が更に共鳴を!」
「ああ、これは想定以上の相性の良さだ」
狂化ドラゴンの群れ
「我らが重力よ!」
「天地を統べる力よ!」
「共鳴せよ!」
「これだけ成長できれば...」
「ああ、50層以降も」
二人の表情に、確かな自信が宿る。
休憩時間には、持参した母の手作り食事。
エレノアの魔力回復菓子が、特に効果を発揮する。
「母上の研究の賜物ですね」
「ああ、エレノアらしい細やかさだ」
(三日でこれだけレベルが...!
これなら50層以降も、いけるかも!)
「さて」
マクシミリアンが立ち上がる。
「そろそろ、次に進もうか」
「はい!」
父子の無双劇は、まだまだ続く。
50層ボス:魔浄騎士団
「かつて聖戦に散った騎士たちよ...」
「父上、重力波で装甲を!」
「ふむ、ではこう!」
一瞬の重力共鳴で、騎士団の装備が粉砕される。
60層ボス:古代機凱システム
「制御装置は12箇所です!」
「ほう、では順に」
父子の重力が精密に機械を破壊。
ゲーム知識と実戦経験の完璧な融合。
70層守護者:次元の歪み体
「これは厄介だったな」
「いえ、父上との連携なら!」
空間歪曲に対し、より強力な重力場で対抗。
順調な攻略に、誠は密かな自信を深めていた。
(これなら、100層も夢じゃ...!)
しかし。
80層の扉の前で、父が立ち止まる。
「この気配は...」
重苦しい空気が、扉の向こうから漏れ出している。
(ここは確か...!)
ゲーム本編でも特に難しいとされた階層。
扉が開かれ、巨大な玉座が姿を現す。
「よくぞここまで」
玉座に座す巨人が、ゆっくりと立ち上がる。
「深層の支配者」と呼ばれる古の巨人。
「我が名は、タイタン・グラヴィタス」
その名に、父子は息を呑む。
「まさか...グラヴィティアス家の!?」
マクシミリアンの声が震える。
「そう」
巨人の瞳が蒼く輝く。
「お前たちの、先祖にあたる存在だ」
(これは...ゲームには無かった設定!)
タイタンが一歩、前に出る。
その足音だけで、空間が揺らぐ。
「我が血を引く者よ」
巨人が両手を広げる。
「貴様らの重力を、見せてもらおう」
「父上!」
「ああ、全力で行くぞ!」
古の加護を帯びた蒼い光が、父子を包む。
「ほう、それは...グラビティ・リーパーの加護か」
タイタンの声に、僅かな懐かしさが混じる。
「懐かしき戦友の力を得たか」
巨人が、両腕を構える。
その瞬間、途方もない重力場が展開される。
「これが...先祖の力!」
床が軋み、壁が歪む。
まるで空間そのものが、巨人の意のままに。
「見せよ、我が末裔たちよ」
タイタンの声が轟く。
「現代に受け継がれし、重力(グラビティ)の真価を!」
父子は互いを見つめ、小さく頷き合う。
「参りましょう、父上!」
「ああ、我らの全てを—!」
最強の敵。
しかし、それは同時に最高の試練。
親子の重力が、真の力を示す時が来たのだ。
重力の渦が交錯する80層の間。
巨人の一撃が、空間を歪める。
「もっと見せよ!現代の重力使いよ!」
タイタンの両腕が上がる。
天井が急速に落下を始める。
「父上、上空を!」
「ああ、任せろ!」
二人の重力が、天井を支える。
しかし—。
「甘い!」
巨人の蹴りが、床を粉砕。
空間そのものが螺旋を描き、父子は宙に投げ出される。
「くっ...これが先祖の!」
「面白い」
タイタンが唸る。
「だが、それだけか?我が血を受け継ぐ者よ!」
その瞬間、誠の記憶が閃く。
幼い頃の特訓。
厨二病全開の掛け声。
そして—
「重力は力ではない」
「世界の理(ことわり)そのものなのです」
母の研究。
エレノアの言葉。
「父上!」
意図が通じ合う。
「ああ、エレノアの理論だな」
父子は背中合わせとなり、古の加護を掲げる。
「なに?」
タイタンが眉を寄せる。
「重力は...!」
「力ではない」
「世界の理そのもの!」
青い光が、渦を巻く。
父子の重力が、完全に同調する。
「世界の理...か」
巨人の目が広がる。
「それは、まさか—」
「母上の研究です!」
誠の叫びと共に、新たな重力場が展開される。
重力を押し付けるのではない。
空間の理を、優しく諭すように。
「見事...!」
タイタンの動きが止まる。
「これぞ、真の重力(グラビティ)」
父子の力が、巨人を包み込む。
しかし—。
「だが、まだだ!」
タイタンの周囲で、空間が砕ける。
より強大な重力場が、部屋全体を覆う。
「我が血統の真髄、見せてやろう!」
「父上、一緒に!」
「ああ、全ての力を!」
三つの重力が、激しく交錯する。
古の加護が、より強く反応を示す。
「我らが重力よ!」
「世界の理たれ!」
父子の掛け声が重なり、空間を震わせる。
タイタンの重力と、真正面からぶつかり合う。
「来い!我が末裔よ!」
「うおおおお!」
「父子の型、極!」
閃光が走る。
重力の奔流が、次元の壁すら揺るがすかのような激突。
そして—。
「...よく重力を極めここまで到達したな、見事だ」
タイタンの巨体が、光の粒子となって消えていく。
「お前たちこそ、真の後継者だ」
最後の言葉と共に、巨人は消失。
その場に、眩い光を放つ結晶が残される。
「これは...」
「タイタンの加護、でしょうか」
父子は、新たな力を手にする。
そして、さらなる確信を。
「父上」
「ああ、100層まで、行けるぞ」
二人の表情に、強い自信が宿る。
タイタンとの戦いは、単なる試練ではなかった。
それは、重力の真髄との出会い。
そして、新たな高みへの道標—。
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