2-23.暗殺者の正体?

「ただいま~!もうヘトヘトだよ~···」



 関係者用の観客席にフーちゃんが来たよ。決勝戦は昼からだからね。


 フーちゃんは魔力をほぼ使い果たしてるみたいだったよ。このままじゃあ午後の決勝戦まで回復は厳しいだろうなぁ~。そう思ったらレオからこんな提案があった。



「フー、ちょっと今からトイレに行ってこい」


「え~?どして~?まだいきたくないけど~?」


「用を足すんじゃなくて、個室でトランスして龍脈と共有しておけ。それで魔力が全回復するぞ」


「お~!?そんなつかいかたもあるんだね~!」


「あんまり多用しちゃダメなんだけどな。ちょっと決勝戦は気になることがあるから、万全の体制の方がいいだろうしな」


「わかったよ~!じゃあ、いってくるね~!」



 フーちゃんはトイレに行っちゃったね。さて···、レオが言ってた気になることって何だろうね?



「レオ?気になることって、あの暗殺者のこと?」


「ああ。···俺の予想だと、あいつは悪神・・だ」


「えっ!?マジで!?でも、ファイアーウォールがあるから入れないんじゃ···?」


「ファイアーウォールを張る前に中にいた・・・・・・・・んだろうな。それなら関係ないしな。それにハルちゃんのお師匠さんを知ってるって事は、相当前からエーレタニアに潜んでたんだろうよ」


「そんなヤツがいたんだ···。でも、暗殺者だったけどエレさんを狙ってなかったね?」


「おそらく神になることに興味がないんだろう。ここに住むのが気に入っただけなんだろうな」


「そんな神もいるんだね」


「まぁな。そういう意味ではアキも相当変わった神だけどな!」


「あはは···。ボクもあんまり興味ないからなぁ~。無理やりやらされてるだけだしね」


「そんな状況でもアキは13も世界を完成させたすごい神なんだけどな」


「レオのおかげだよ。ボクは大したことしてないしね」


「そう言い切るのがすごいんだけどな···」



 なるほどね。確かに昔からいたんだったらファイアーウォールは関係ないし、強さもそのままってわけか。モンドくんが勝てなかったわけだよ。リアと同じく邪法を扱う神だなんて、ボクでも相手したくないしね。


 となると、フーちゃんが勝てるかどうかは厳しいなぁ~。トランスを禁止しているから分が悪すぎるよ。まぁ、無事だったらいいか!アンダーシャツも着ていれば命の危険はかなりないしね。



 そして暗殺者とナギちゃんの試合なんだけど···。ナギちゃんは一切手が出せずに終わってしまったよ···。攻撃が通用しないんじゃなくて、体が動かせなくされてしまって、あっという間に終わらされてしまったんだ···。



「あれも邪法っぽいなー。相手に身動きさせなかったら簡単にやられてしまうなー」


「···そだね。···師匠の技にはあんなのはないね。···師匠は卑怯な手は使いたくなかったし」


「チパさんは正々堂々と暗殺をしていたってわけか···。まぁ、それでも暗殺は暗殺なんだけど」


「これでフーとあの暗殺者が決勝だな。かなり厳しい戦いになるだろうが···」


「レオ、ボクとしては勝ち負けはどうでもいいよ。フーちゃんが無事ならね」


「そうだな···」



 フーちゃんも多少はハルの暗殺技を使えるけど、モンドくんの時にはあんまり通用してなかったからなぁ~。邪法は対策がほとんどないのがやっかいなんだよなぁ~。


 そんな事を考えてると、フーちゃんが戻ってきたよ。



「ただいま~!レオさんのおかげでフーはふっか~つ!」


「おかえり、フーちゃん。昼からの決勝戦はモンドくんを負かした暗殺者に決まったよ」


「フー!おれのかたきをとってくれよ!」


「おー!モンドくんのむねんをはらす!!」



 フーちゃん···。どこでそんな言葉を覚えちゃったんだろう?某皇帝VS山手線の英雄たちのゲームで皇帝が倒れた時の引継ぎのセリフなんだけど···。そういえばパスさんも皇帝継承した時に言ってたな···。



 そして昼食後にまずは3位決定戦だね。クロくんとナギちゃんがやりあって、クロくんが勝ってたよ。総合力がクロくんの方が上だったね。


 そして···、ついに決勝戦が始まる!!



 さ〜て!フーの試合が始まるよ〜!お昼ごはんもたっくさん食べたし魔力も全回復して絶好調だよ〜!


 リングに上がったらモンドくんを倒した暗殺者さんがもういたよ。レオさんの話だと悪い神様らしいんだってさ〜。


 でもね?神様でもフーは普段通りやるだけだよ!全力で頑張るよ〜!



「おやおや···。昨日負けた子に似てますね〜。それに···、どうやったか知りませんが魔力が全回復している···。これはちょっと本気で相手しないといけないようですね〜」


「フーもぜんりょくであおいていたす!いざ、じんじょーにしょうぶ!」


「ははは!そうですかそうですか!子どもは元気が1番ですよ。···でもそれって『見せていい本気』って事ですよね?」


「えっ···!?」


「やっぱりね。昨日の子も同じだったんでしょうね。···どうですか?それも込み・・で全力でやってみませんか?」


「で、でもじーじが···」


「じーじ···、あそこの観客席にいるですね?どうやら実体化しているナビもいるようですし、ちょっと交渉してみますか···」



 そう暗殺者さんが言ってじーじを見ると···、じーじとレオさんが驚いていた!レオさんは睨みつけているよ···。



「ふぅ~。なかなか話のわかる人じゃないですか。ナビの方は抵抗してましたがね。フーさん···、と言いましたか?あなたのおじいさんから了解は条件付きで取れましたよ。私が構築する空間の中でのみ、そして命を取らない条件でね」


「えっ···、それってどういうこと?」


「まぁ、よくわからないですよね?実際に見てもらいましょうか」



 そう暗殺者さんが言うと、リングの上がおかしな雰囲気に包まれた!これって···。



「さて、これで全力で戦ってくれて大丈夫ですよ。周囲からは一部除いて、普通に戦闘しているしか見えないですから」



 そう言ってるけど···。フーが振り返ると、じーじが大きく頷いていたよ。···じゃあ、やっていいんだね!



「···わかった。フーの『ほんき』、みせてあげる」


「ええ、お願いしますよ」


「···はあっ!!」


「これは!?···素晴らしい!」



 フーはトランスしたよ!でも、これじゃ暗殺者さんは納得しないだろうから、もう一段階変身するよ!!



「ぬぅあぁああーーー!!」


「な、なに!?もう一段階あるだと!?」



 フーは龍脈と一体化した!とんでもない力が暴れだしそうになってるけど、なんとか抑えれてるよ!



「そ、そうか!龍脈と一体化したというのか!素晴らしい!!ここまでの力を持つ存在など聞いたことがないぞ!!」


「じゃあ···、そろそろはじめる?」


「ええ、ええ!いいでしょう!そうそう、申し遅れましたね。私はエマと言いますよ。かつて神なる存在でしたが、今は気ままにこの世界でのんびり暮らしてますよ。それでは私も楽しませてもらいましょう!」



 さ〜て!ここまで全力全開でやるのは初めてだよ〜!どうなるのかなぁ〜!

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