2-24.試合が終わって

「さあ!始めましょう!どこからでもどうぞ!」


「じゃあ、いくよ。かいでんひぎ!ばんじんけん!!」



 最初はフユにーちゃんの究極奥義、皆伝秘技の万仞剣だよ!見ただけで初めてやってみたけど、うまいこと技を出せた!!


 けどもエマさんは全部弾き返したり避けたりしちゃった!さいきょーわざなのに〜!


 次は魔法だ!龍脈と一体化してるから魔法は詠唱も溜めも必要ない!すぐに発射ぁ〜〜!



「リナおねえさんじきでん!ドラゴンキャノン!!」



 ズドーーーン!!!



「まだまだぁ〜〜!!れんぱつだよ〜〜!!」



 ズドーーーン!!ズドーーーン!!



「はぁはぁ···。これで···、どうかな?」



 爆発の煙が晴れると···!?エマさんは無傷だったよ!?直撃だったはずだよ!?



「いや、素晴らしいね!技も魔法も理に至ってるね。まさかここまでとは思わなかったよ」


「え〜〜〜!?ぜんりょくぜんかいでやったのに〜〜!」


「ははは!正しい選択だね!初手で最強技を出すのはね。乱戦になれば発動に時間がかかる必殺技は使いにくいし、そういう事を許すほどスキを与えることはほぼない···。いいセンスだよ。じゃあ、今度は私の攻撃に付き合ってもらおう」


「くっ!?」



 するとエマさんはゆっくりとフーに向かって歩き出した!これってママの空蝉に似てる?


 後ろにいるかもしれないから、この技で応戦だ!!



「ひぎ、せんぷうぎり!!」



 フーはその場でグルグル回りつつ技を決めた!しかし当たらなかったよ!?



「正しい選択だね。でも、最善が最良とは限らない···」


「きゃっ!?」



 後ろから背中を蹴られたよ!?もしかして、フーも邪法にかかっちゃった!?


 リング上で倒れて起き上がると、エマさんは目の前にいた!すぐに剣で突きにかかると···、当った感触がなかったよ!



「ふふふ!ハズレ〜。さて、どうしてかなぁ〜?」



 続いてフーは殴りにかかった!接近戦なら当たるでしょ!そう思ってぱーんちすると···、これも当たった感触がなかったよ···。どーなってるの!?



「おやおや···、もしかしてここまでですか?時間制限もあることですし、そろそろ終わりにしましょうか」



 目の前は影があるのに本物じゃない!じゃあ、本物は···?


 あっ!?そういえばじーじのすまほに似たようなマンガがあったよ!隠しているのを気配だけで見切ってやっつけちゃうって!


 よ〜し!フーもやってみよう!


 目を閉じて···、耳を澄ませて···、気配を感じ取れ!!


 ···いる!フーの斜め左後ろ。そこにエマさんはいる!


 フーはゆっくりと魔力剣を納めて集中する。



 そして···!



「ひぎ!ざんげつ・月光げっこう!」



 エマさんの気配の方向へ斬月と弦月斬の合わせ技、斬月・月光を撃った!



「ぐはっ!?お、お見事···。よく、見破ったね···。この世界の魔法でない・・・・・・・・・・幻術を見破るとは···」


「もう、これでフーにはそのわざはきかないよ」


「そうですね···。今回はここまでとしますか···。十分私も楽しめましたよ」


「えっ!?」



 そう言ってエマさんはこの変わった空間を解いて降参を申し出ちゃった···。これでフーはゆーしょーしちゃったよ!?


 観客の皆さんは拍手してくれたよ!でも、みんなにフーの『ほんき』見られちゃったよ〜!?



「かっこよかったぞ〜!」


「剣術が素晴らしかったよ〜!」


「魔法もよかったぞ〜!」



 ···あれれ〜?ふつーに戦ったような感想だね〜?



「観客にはそのように見えただけですよ。フーちゃんの正体はバレてないですから安心してくださいね。それでは失礼···」


「あっ···、ありがとーございましたー!」


「ええ。また会いましょうね」




 びっくりした···。まさか向こうから直接話をしてくるなんて思わなかったよ···。



『あなたがこの子のお祖父様ですね?この声が聞こえているという事は、あなたもやはり神なんでしょう?』


『なっ!?ど、どうして···』


『やはりそうか。お前、フーになにする気だ?』


『レオ!?』


『何もしませんよ。ただ、個人的にこの子の本気が見てみたくなりましてね。そこで、私が特殊な空間を作って、この子に全力で暴れてもらおうと思うのですよ。外からは普通に戦ってるしか見えませんから大丈夫ですよ』


『アキ!聞くな!!目的はアキの神の力の核だぞ!』


『それは違いますよ、そこのナビさん。もう神に戻る気はないのでね。気ままにここで過ごしてるだけで、滅ぼそうとしたりはしませんから。これは単に私の趣味みたいなものです』


『···わかりました。傷つけないという条件でならいいです』


『アキ!?本気か!?コイツを信用するのか!?』


『···うん。そうでなかったらこんな試合に出場しないでしょ。それに、フーちゃんが全力出せるいい機会だとボクは思うよ』


『···どうなっても知らないぞ!』


『その時はレオとハル、モンドくんで取り押さえたらいいよ。ボクはアキと言います。創世神様から押し付けられて13の世界を開拓した者ですよ』


『素晴らしい功績をお持ちのようで···。私はエマ。かつてこの世界に侵攻して自分の世界の連中から置いてきぼり・・・・・・にされた、情けない元神ですよ』


『フーをよろしくお願いします』


『はい。楽しませていただきますね』



 フーちゃんがボクを見てきたから、大きく頷いた。すると、フーちゃんはわかってくれたようだね。


 そして、見ているだけだと普通にいい試合をしているように見えたよ。ただ、レオにはフーちゃんがフユの皆伝秘技を出したりドラゴンキャノンを連発しまくったり···、と大暴れしてる様子が見えていたんだって。


 そして、空間が解かれてエマさんは降参して大歓声が上がった。レオ以外、全員幻を見せられていたんだ···。



 こうして、フーちゃんが優勝したよ。賞金は100万ジール。リオがカジノでスッた金額と同額だったね!もちろん、リオにはあげずにフーちゃんの口座に入金後、ナツの口座に振替しておいたよ。子どもが持つには金額が多すぎるからね!



 そして、その日の夜はフーちゃん優勝記念として1番高いレストランで夕食をしたよ。なんと!王様からのお祝いで無料で食べ放題だった。意外だったよ〜!


 みんなたらふく食べて大満足だった。



「さて、明日にこの国を出るけど、最後にちょっとだけカジノで遊んでおこうか?今回は、リオはボクの監視付きでね」


「アキ···?本当にコイツにさせて大丈夫なの?」


「ナナ、ここを離れたらもうできないからね。いきなり断つと反動があるし、気休め程度しかやらせないから」


「···まぁ、アキを信じるわ」



 ということでカジノにやってきて、また1万ジールでみんな楽しんでもらった。


 リオも恐る恐るやってたよ。それでも数字にしかかけなかったけど···。ルーレットをボクも一緒にやってみると···!?



「赤の18!おめでとうございます!大当たりですよ〜!」


「やったぞーー!!ついに当たったぞーー!!」



 なんと!?リオがルーレットで数字を当てちゃったよ!?一気に36倍にもなっちゃった···。



「これで多少は戻したぞー!」


「リオ?なんでこの数字にしたの?」


「おー!ナナと結婚して今年で18年だからなー」


「アンタ···。まぁ、今回はこれで許してあげるわ。もうバカな事はしないでよね!アンタはバカなんだから!」


「おう!ナナ、任せとけー。この儲かった分はナナにやるぞー!プレゼントなんて思いつかないからなー」


「はいはい、元から期待なんてしてないけど···、ありがと」



 よかったよ〜。これで夫婦仲が戻ってくれたようでね!


 しかし···、これで安心したボクは油断していたんだ···。



  グロー歴523年8月15日 晴れ


 朝、起きると横にリオがいない···。昨日勝って満足してご機嫌だったからもう行かないと思って縛ってなかったのに···。油断しちゃった···。


 ボクが探しに行こうとすると、リオが戻ってきたよ。顔が真っ青だけど···。ま、まさか···?



「やっちまったー···」


「···ナナに怒られなさい」



 そうしてナナの部屋へボクと一緒に謝罪に行ったら、ボクまで正座させられてお説教されちゃったよ···。止められなかったバツだってさ···。孫たちの冷ややかな視線が痛い···。


 ナナの呆れ果てた説教が終わり、最後にハルからボソッとこう言われちゃったよ···。



「···こんなカジノゲームにマジになってどうするの?」



 ハルさん···。なんで某有名ゲームのネタ知ってるんですか···?もしかして怒ってます···?




   第2章   完



 ハァハァ···。やっと因果律を書き換えて・・・・・・・・・なかったことにできたぞ···。まったく!あれ以降フーたんの活躍が見れなかったし全財産賭けれなかったではないか!!


 ···まぁいい。引き続きフーたんにストーキ・・・・···、ゲフンゲフン!見守っていればいいだけの話だ···。ハァハァ···。




『フーちゃんとモンドの試合は見せてもらったなぁ〜。他の人との試合があんまりなかったから、2人にとっていい経験になっただろうね。


 リオパパは負けず嫌いが悪い方向に働いちゃってカジノ中毒っぽくなってしまっちゃったね。実は帰ってきてからもこっそりと超音速飛行でビオに行っちゃったこともあって、怒ったナナママに家に入れてもらえなくさせられて、玄関前で野宿させられちゃったこともあったんだったなぁ~。


 そしてパパは今回も別の神様に関わっちゃったね···。今後もこういったトラブルに巻き込まれちゃうんだよね···』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る