1-10.天気予報はちゃんと見ましょう

 雨の中をボクたちは進んでいた。ボクの一家はボクが雨除けの魔法をかけて、リオ一家は竜気で雨を弾いてるんだ。だから傘いらずで普通に歩けるんだよ。


 ホント、便利な魔法を開発しておいたものだよ!


 雨脚も風もそれほど強くはない。普通の雨だったよ。


 歩いてると、行商の荷馬車が通りがかった。ボクたちが傘をささずに歩いてるのを見て声をかけてくれたよ。



「よお、そこの子連れさん!雨なのに傘ささずに街道を歩くなんてただ事じゃないのかい?」


「ああ、こんにちは。ボクたちは魔法で雨を弾いてるんですよ。ほら、服濡れてないでしょ?こっちはドラゴン族だから特殊能力で濡れないんですよ」


「そう言われてみれば、確かに濡れてないな!?すごい便利な魔法があるもんだなぁ〜」


「ははは。ですのでお気遣いなく。親切に声をかけていただき、ありがとうございました」


「なんの!道中気を付けてな!」



 もしかして、途中まで乗せてあげようと考えてくれたのかな?気の良いおっちゃんだったなぁ。



 昼食はタープを張って、折りたたみイスと机を用意して軽めに食べた。



「じーちゃんはたびなれてるんだなぁ〜。あったらべんり!ってものをちゃんとよういしてるもんなぁ〜」


「ははは!そうだね〜。リオと出会って旅立って、長期間旅行していろいろ買い揃えたしね」


「おれもたびをしてみようかなぁ〜?」


「もうしてるけどね。今回の経験は絶対に今後の人生の役に立つから。フユとナツだって、旅行に連れて行ったのは9歳だったからね。それを考えればモンドくんとフーちゃんは早すぎるぐらいだしね」


「フーもたびしてみたいなぁ〜。でも、パパがこまっちゃうからきびしいかなぁ〜?」


「フーちゃん?それはパパの前で言わずにママにまずは言おうね。でないとパパがひどい目にあっちゃうからね」


「だいじょぶだよ〜。『ケンカするほどなかがいい』っていうらしいから!いっつもパパがまけてるけどね〜」



 フーちゃん···。どこでそんな言葉を聞いたんだろう?常連さんかな?それとナツはヨウくんとケンカしてるのか···。完全に尻に敷かれてるなぁ〜。




「ハーックション!!もしかして、今フーが俺の話をしたかな?」


「ヨウさん!?そんなうわ言を言ってないで動いて下さいよ!出来た料理がカウンターに並んでますよ!早く持っていってくださいよ!」


「あ、ああ。悪い、バッツ!待たせたな!鉄板が熱いから気をつけろよ!」


「すいませ〜ん!」


「すぐ行くぜ!あぁ~!フー!早く帰ってきてくれーー!!」


「あっ···、ナツさん?(営業中に厨房から出るなんて···。手には麺棒持ってるよ!?ヨウさんによっぽど怒ってるなぁ〜)」


「···やかましい。···お客さんに迷惑だ。···さっさとしろ」


「はい···」




 ん?なんかヨウくんの声が聞こえたような···?気のせいか。



 そうして休憩をしてから移動開始だ。今日も早めに宿に入るとしよう。雨の中の移動は魔法のおかげで楽ではあっても精神的にはちょっとツラい部分があるからね。


 宿場町にはチェックイン時間より早めに着いたよ。ちょっと雨風が強くなってきたからいいタイミングだったね!とりあえずチェックイン手続きだけしておいて待たせてもらおうか。



「すいませ〜ん。先にチェックイン手続きだけお願いできますか?」


「いらっしゃい。それは構わないよ。何人だい?」


「2家族9人なんです」


「う〜ん···。うちにはファミリータイプがあるけど4人用なんだよ」


「1人はエクストラベッドってできません?手前の宿場町ではそういう対応をしていただけたんですけど···」


「うちはそこよりちょっと狭いんでなぁ〜。エクストラベッドはできないんだよ」


「そうですか···」



 ということは部屋割りを考えないといけないね。そう思ってたらフーちゃんからこんな提案があった。



「じーじ!フーがじーじといっしょのベッドに寝る〜!」


「えっ?フーちゃん、ボクのベッドでいいのかい?」


「うん!」


「わかったよ。すいません。その2部屋でいいですよ」


「悪いね。じゃあ午後3時までちょいと待っててくれな!」



 併設されている酒場はまだ開いてないので、空いている席にみんなで、座った。天気が悪いせいか、新規客はいないね。その分、連泊客が多そうだね。



「フーちゃん?ボクのベッドで一緒でホントにいいのかい?」


「うん!じーじはばーばといつもいっしょにねてるってママからきいてるけど、きょうはフーとねてみて!」


「そう?じゃあそうさせてもらうね。ハル?今日はごめんね」


「···ツインベッドだし、別にいいよ」



 チェックイン時間になり、部屋に入った。確かにちょっと狭いなぁ〜。


 まぁ、いいか!家族一緒に寝れるならそれに越したことはないしね。小さい孫もいることだし。


 そして夕食時になり、酒場で食べていると外は土砂降りになり、風も強くなり始めていた。



「アキー?ちょっと荒れそうだなー」


「そうだね。でも、いいタイミングで宿泊できて良かったよ。これがキャンプなら大変だったよね〜」


「アキじーちゃん!あたい、キャンプやってみたいぜ!」


「あたしも〜!なんかたのしそうだよね〜」


「アトラちゃんもルメちゃんもキャンプやってみたいのか〜。じゃあ、いい天気ならやってみようね〜」


「「やったぁ〜!」」


「そういえばアキ?明日の天気は大丈夫なのかしら?いくら魔法や竜気で大丈夫って言っても、こんな土砂降りの中は勘弁したいわね」


「おっと!?ナナの言う通りだね。そういえば天気予報アプリ開いてなかったなぁ〜。どれどれ···。えっ···?マジで?」


「···アキ?···どしたの?」


「ハル···。ちょっと大荒れの予報になってる···」


「えー!?どういう事だー!?」


「リオ···、台風が来ちゃった···」


「たいふうー?なんだそれー?」



 しまった···。ちゃんと天気図見とけばよかったよ。週間天気しか見てなかったわ···。


 すぐ東の海上に大型で非常に強い台風がこっちに向かってきてるわ!これは被害出るかもしれないなぁ〜。

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