1-3.時差ボケ

 フーちゃんが市場の魚屋さんで巨大な魚を仕入れちゃった光景は、周囲の人々を驚愕させた!食材を見極める目がフーちゃんに備わってたので、市場内はフーちゃんの行動が目立ってしまっていた···。ナツのお店でいろんな食材を見ちゃってるからだろうなぁ~。



「おじさん?これってどくあるんじゃない?」


「えっ!?そんなわけ···、うわっ!?ホントだ!コイツは『マグロっぽいもどきもどきもどき』じゃあないか!?」


「なんだってー!?あの珍しすぎて『マグロっぽいもどきもどき』より観賞用として売られてるのがこんなところに並んでたなんてー!?」



 ···フーちゃんが鑑定士になっちゃってるわ。的確に偽物を見抜き、さらに珍しい食材ばかり買っているんだよ。ナツ?いったいいくらフーちゃんにお金もたせてるんだよ···?


 ちなみにモンドくんとフーちゃんには事前にキッズスマホをナビさんが用意してエレさんからプレゼントされてるから、身分証もスマホ画面だ。さらに魔力剣までプレゼントしてるんだよ。エレさんはホント、フユとナツに甘すぎるなぁ〜。


 そしてナツはフーちゃんの口座に仕入れ代金を振り込んでるんだろうなぁ〜。



 そんなこんなで時間はお昼になったよ。スマホ上では午後5時なので、こちらでは正午だね。


 夕食···、って言ってもここじゃ昼食なんだけどね。



「なんか変な感覚だなー。ちょっと早い夕食なのにこっちでは昼食だなんてなー」


「そうだね、リオ。まぁ、これが一気に遠くへ旅行したら付き物なんだけどね」


「アキ?これってアクロに戻ったら同じようになるのかしら?」


「そうだよ、ナナ。ここを今日みたいに午前9時に出発して4時間で帰ったら、アクロは午後6時だね」


「···朝食食べて飛んだら、家では夕食だね」


「ハルの言う通りだよ。だからアクロで寝ようとしても寝付けないんだ。これを『時差ボケ』って言うんだよ」


「へぇ~。となると、今回はアクロで少し遅くまで起きて寝た感じにしたら、こっちでは早寝早起きになるのね?」


「ナナの言う通りだよ。リオも早起きになるんだよ」


「それはいいなー!」


「逆に帰ったら夕方でも起きないかもね?」


「それはあたしが困るわよ!?」


「だいたい2〜5日ぐらいで慣れるからね。アクロに帰った時はちょっと慣れるのに時間かかっちゃうから、今回は少し早めに帰るけどね」



 特に東行きはキツイんだよ。ボクが元の世界でアメリカへ行った時やヨーロッパから帰ってきた時も、元に戻すのに3日はかかったからね。西行きは夜更かしで対応しやすいけどね。学園が始まる10日前にはアクロに戻る予定だよ。



 さて、昼食を終えて今度は冒険者ギルドヘ向かった。ホテルからはかなり近い位置にあったよ。


 さっそくハルは掲示板に行って依頼内容を確認していた。請けなくてもここの周辺の情報が依頼内容である程度把握できるからね。



「ハル、どうだった?」


「···魔獣に関しては極端過ぎるね。強力なヤツしかないから、普通に街道歩くならだいじょぶ」


「まー、出てもオレたちの戦力からしたら対処できるけどなー」


「それでも何も出ないほうがいいよ。ハル?依頼受ける?」


「···今はいいかな」


「了解。じゃあ、そろそろホテルに行こうか!」



 ちょっと早いんだけど、ボクたちはホテルに向かった。チェックインにはまだだけど、ホテルのロビーにあるレストランでお茶飲みながら待たせてもらったらいいか!


 そう思ってホテルに入ると···、



「ああ、アキ様ですね?部屋の準備がすでにできておりますので、カギをお渡ししますよ」


「えっ!?チェックイン前ですけどいいんですか?」


「はい。準備が終わってチェックインまで待っていただくのも時間のムダですから。2本カギをお渡ししますね。部屋は3階の361のお部屋です。夕食は後ろのレストランで午後6時から、朝食は午前7時からですよ。どうぞごゆっくり」



 ホテルの人のご厚意に甘えて、ボクたちは部屋に入った。


 10人部屋という事で、リビングがあり、寝室にはセパレートできる大きなダブルベッドが5つあり、すべて個室になってるね。



「なかなかいいじゃないの〜!」


「そうだね~、ナナ」


「お〜い、アキー?オレ、眠くなってきたから寝させてもらうぞー」


「いいよ。お疲れさま、リオ」


「おう!おやすみなー!」


「あたしも疲れたから先にシャワー浴びて寝るわね~」


「お疲れさま、ナナ。さて、ボクはもうちょっと時差ボケ対策で起きておくけど、みんなは好きな時に寝ていいからね〜」


「じゃ〜、ママにしいれのほうこくしとくね〜」


「おれもパパにきょうのできごとをはなしとくぜ!」


「あたいはねちゃったじーじのすまほで『てっかめんらいだーほわいといーえっくす』のつづきをみようっと〜」


「アトラ!それわたしもみる〜」



 モンドくんとフーちゃんは一緒の部屋でちーむッス!でフユとナツに話し始めた。


 扉越しで聞こえたけど、ヨウくんが『フーの分の仕事が乗っかってきて大変すぎるから早く帰ってこい!』って叫んだと思ったら、『ズムッ!』って重低音が響いて静かになったよ···。ナツ···?ヨウくんに厳しすぎないかい···?


 一方のルメちゃんとアトラちゃんは、ボクの元の世界で有名な特撮ものの『鉄仮面ライダーホワイトEX』をかじりついて見ていた···。二人とも女の子だから日曜朝の某アニメを見るんじゃないのか···。



「さて、ハルはどうする?」


「···アキと一緒にいる」


「ははは。じゃあ、シャワー浴びてのんびりしようか?」


「···うん」



 ちょっとしてからボクとハル、そして孫たちは一緒にレストランへ行って軽く食べてから寝ることにしたよ。おやすみなさーい!



  グロー歴523年8月3日 晴れ


 ···時刻は現地時間午前3時。リオ以外全員目が覚めちゃった···。アクロだと午前8時だからこれでもお寝坊さんなんだけどね···。



「···まだ暗い」


「ハルも起きちゃったか〜」


「···感覚狂うね」


「まだ西行の時差ボケは夜更かしで対応できるけど、アクロに帰るともっとしんどいからね」


「···なったことないからわからないけど、頑張る」


「ムリしないでね。もう少し横になってるといいよ」


「···そうする。アキも付き合って」


「はい喜んで!」



 モンドくんとフーちゃんは···、



「んぇ?まだくらいぞ〜?」


「ホントだね〜。モンドく〜ん、いまなんじ〜?」


「え〜っと···、ごぜん8じ···」


「たしかじーじが5じかんこっちのほうがおそいっていってたから3じかな?」


「あ〜、そういうことになるのかぁ〜。もっとおねぼうしないといけないなぁ〜」


「もうちょっとねとこうね〜」



 一方のルメちゃんとアトラちゃんは···、



「おそとくらいのにめがさめちゃった···」


「まだねろってかぁ〜?ぎゃくにしんどいぜ〜!」


「じさぼけってたいへんなのね~」



 そして午前5時半になり、リオ以外は完全に起きてしまっていた。



「みんなおはよう。時差ボケは大丈夫かな?」


「じいちゃん!へんなかんじだぞ〜!くらいのにめがさめちゃったぜ!」


「フーも。よふかしってふだんは・・・・あんまりしないから〜」


「あたしもまよなかにおきてねれなかったわ」


「あたいも···。これもなれなのか?」


「そうだよ。ちょっとずつ慣れるからね。さて、もうちょっとしたら朝食の時間だから、準備しといで〜」


「「「「は〜い!」」」」



 さて···、リオは時差の関係だとそろそろ起きるはずなんだけど···、まだ起きてこないぞ?ちょっと覗きに行くと···、



「ぐぉー、ぐぉー。すぴー、すぴー。うーん···、ムニャムニャ···」



 ···もしかして、時差ボケにいち早く対応したのはリオなのかなぁ~?

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