第49話:紙の時代へ、国家事業始動

国家事業となる“木簡もっかん竹簡ちくかん、紙作り”は、パンダ族・クマ族が機転を利かせてくれたおかげもあって、早い段階から製造を本格的に開始出来た。製造量は予想以上に安定しており、販売価格を想定していた額よりもさらに低く出来る事が分かった。


ホウ蝶姫チョウキと一緒にブロンに乗り、この日もまた木簡・竹簡・紙作りの工場に向かった。



豊「クマ吉のお母さん、コパンのお母さん。あのね、大量に作りたいと思っている“お値打ち”な方の紙なんだけれども、市場価格の1/30ではなく1/50まで下げられそうだよね。1/50まで販売価格を下げても、皆さんへの報酬を十分にまかなえると思うんだけれども、大丈夫かな?」


クマ吉の母「モウっ、モウっ、モウ~っ(訳:そうね~、1/50であっても、実は十分な利益は出るわね)」


豊「じゃあ、皆さんへのお給金を少しベースアップしてもいいんじゃないかな?」


クマ吉の母は、コパンの母と目を合わせて、うなずいた。


クマ吉の母「モウっ、モウ!(訳:ベアゼロで大丈夫よ!クマベアだけど、ベアゼロで!今は大丈夫だベア)」


豊「にゃんと!?(ボクはネコじゃないけど、ネコ語が?いや、みおみおちゃん語がまた勝手に!?)」


クマ吉の母「モウッ、モウ、モウっ!(訳:もし、支出する経費に変化が出て、収支のバランスが想定する枠組みから大きく変わるようであれば、早めに私たちからあなたに声をかけるわよ。だから安心して。予算を事前に決めた中で、うまく支出を調整出来そうだから、ある意味予算準拠主義でいけそうよ。だから、その予算が足りなくなる場合や、新しく予算枠を設けた方がいい時には、事前に言うわね。もちろん、売り上げが落ちた場合や、資金そのものを大きく消費する必要が出た際にも、前もって伝えるわよ)」


豊「にゃふんっ!?(そうだった。クマ吉のお母さんは、“お仕事がデキる女子”だった。お任せしちゃった方がむしろ経営が安定する)」


豊は改めてふたりのモフモフさん達に一礼した。


豊「ボク、定期的に顔を出すけれども、何かあれば迷わずにボクに声をかけて。急な案件であれば、門番さん経由でお知らせしてね~」


ふたりのモフモフ達は首を縦に振った。



その後、豊と蝶姫は再びブロンに乗り、執務殿に寄り、大姉にこの事を報告した。



姉の話では、


今から間もなく、木簡・竹簡・紙の3種類が正式に国家主導のもと、製造・販売・流通していく事となる。


“高級な仕上がりの紙”も、“安価で気軽に使える紙”も、どちらも全て一度王宮に納められる。“高級な紙”は、国務の記録用や、一部の上官の政務で使われる。王族も公務で紙を使う場合に限り、こちらを使う。一方の“安価な紙”は、街の役所や王宮内での事務処理で使われ、主流だった木簡・竹簡から紙が主流になるように徐々に切り替えをしていく。つまり、しばらくの間、紙は王宮と役所で消費される事になる。そして、生産量、及び在庫が十分となり、明らかな余剰分が出た場合には、国民向けに“安価で気軽に買える紙”を国内で販売をする。この時に身分証の提示が義務付けられる。そして“高級な仕上がりの紙”は、商隊を編成し、帝都でそれなりの値段で販売をして利益を得てくる。なお、ごく少量ではあるが、国内でも販売される予定だ。だが、そう毎日買い手が現れるような価格帯ではないので、技術の高さを見せる展示の場とする狙いがあるそうだ。


そして、木簡・竹簡のうち、“安価で買えるもの”については、パンダ達に北門付近で売ってもらう事になる。大量購入による買い占めや、その後の転売を避ける為にも、人々が一度に購入出来る数を定め、また国の許可なく木簡・竹簡・紙を販売する事と、国外に未使用品、及び未使用相当の状態で持ち出す事を禁止する事を法に定めた。なお、“高級な仕上がり”の木簡・竹簡は、帝都を含めた近隣諸国で販売し、代わりにその土地の名産品や珍しい品々、または金貨・銀貨・銅貨に変えて京国に持ち帰るのだ。


という流れになるよう役人達が動き始めているそうだ。



姉は弟に、「何か問題があった時には、ヒト族とパンダ・クマ族との間の通訳役としての対応」と、コパン、クマ吉と遊ぶついでの時でもいいから、「工場や販売所の様子を見て欲しい」と引き続き“総監督”の役を任せたのであった。


大姉「何度も言うけれども、実務については、それぞれの担当者に任せるのよ。豊は総監督ではあるのだけれども、ヒト族とパンダ・クマ族間でやり取りが必要な時の対応をお願いするわね。それ以外で気になる点があれば、各々担当すべき者に伝え、その者達が責任を持って対応していくからね」

と、改めて豊に念を押した。


豊は首を縦に振る。


こうして国家事業の1つである木簡・竹簡・紙作りは、その大きな歯車が既にゆっくりと動いているのを豊と蝶姫は感じた。



そして豊は、次に『陳述箱(意見箱)』の設置に着手していく事になる。




この時、執務殿の奥が騒がしくなった…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る