第48話:九品中正制度

陳羣ちんぐんが残していった九品中正制度の発案を、京国の現状に合わせて内容を少し変え、それを採用し、運用を開始した。


在籍している文官・武官を、現在の俸禄ほうろくと役職を基準に振り分けをした。そこに、これまでの実績、これから先への期待、そして本人の能力(統率、武芸、知識、教養・作法)について、上官が査定を行ったものを官位の上下に反映させた。また、その者に対する評価(実行力、勤務態度、公平性、法律準拠、日常における善悪の行い、人柄など)を、上官、同僚数名、部下が居れば部下数名が行うという『360度評価』を実施した。これらも、官位決定の判断基準とした。


さらに、本人からこの先取り組みたい事案や目標、希望する職種などを聞き出し、それを1年後に改めて査定し、昇給・昇進・転属等を判断していくのである。明らかに今すぐに転属した方がよい者については、適材適所となるように速やかに配置変えをした。



一番下の9品官には、街の役人のほとんどがそれになった。民や国の為に事務をする者、街を警備する者、兵士として戦争に赴く者達が9品官に該当した。この9品官の層が厚い為、正9品官と、従9品官の2つを設け、上下の区別化を図った。


そして、彼らの上官が、8品官となり、そのうちさらに秀でた才があり、大きな功績を積んだ者は7品官となった。


国の繁栄に大きく貢献したり、国の存亡に関わる事案などにおいて、見える成果や結果を出した者は、さらに上の6品官となった。また、名士と評される者達も6品官とした。武官については、その武名を国内・隣国に広めた者達をこの6品官とする事にしたが、まだ該当者は居ない。


その名士のうち、大陸全土にその名が広まっている天下の名士数名を5品官とした。同様に、その武名が全土に轟かせている者達を5品官とする事にしたが、こちらもまだ該当者が居ない。


国の規模がまだ小さい為、4品官、3品官、2品官には誰も任命しなかった。


女王に次ぐ最高位となる1品官には、三公、及び大将軍が任命された。

つまり、大司徒だいしとの小姉、大司馬だいしば兼大将軍の香織、大司空だいしくうの杏寧妃の3名であった。


なお、大姉の食客である蝶姫と、王子であるホウには、官位を割り当ててはいない。



こうして、文官・武官達の昇給・昇進への意欲を上げる為にも、低い水準からスタートさせたが、大きな仕事で成果を出した者には別途恩賞を与える事を公布したので、多くの者はやる気に満ちていた。一方で、普段仕事を他人任せにし、ダラダラと過ごしていた者にとっては、うまみのない制度となった。



この京国版九品中正制度を、街の者達にも知らせる為に、さっそく王宮前の門に、『立て札』を設けて、そこで告示した。さらに、身分と出生の地を問わず文官・武官(兵士含む)を広く募集する旨も書き記した。


街の人々はそれに興味を持ち、手に職がある者も、まだ職に就いていない者も、「役所で働いてみたい」、「国の為に働きたい」という声が上がり始めた。



こうして、この地を去った陳羣による案は、託された豊から、決めるべき者達によって意外とすんなりと、まとまっていったのであった。




時を同じくして、『道路法』についても、その『立て札』を通して発布された。“街中(桜道、梅道)における馬の速度制限と、違反時の罰則”について、街の者に知らせたのであった。念の為、この法令については、北門と西門の入口にも、それぞれ立て札を設置し、門番達がそこを通行する者達に口頭でも伝えるなどをして、国内外の者達に対して周知の徹底を図ったのであった。



これらが、涙を共に流してくれた三日月から、今宵の十三夜月じゅうさんやのつきまでに起こった事であった。



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