第41話:みおみお、参上!

『胃袋をつかめ!』大作戦は、数日続いた。


その間、蝶姫チョウキが鶏の卵を持つと、卵が大爆発したり、蝶姫が牛の乳絞りを始めると、その牛が失神したり、ネギのみじん切りが細かくなりすぎて見えなくなったり…と、多少の事件があったものの、愛しいヒトの子は、「うん、美味しいよ!」と言い、元気にパクパクと食べてくれたのであった。


そう、ホウはみるみるうちに回復していったのだった。


医食同源いしょくどうげん』という言葉があるように、蝶姫は大姉ダイシに相談しながら、豊の健康を第一に考え、食材と調味料(薬草/生薬しょうやくを含む)を丁寧に選び、最適な調理が出来るように気を配っていたのであった。


そして、蝶姫は、「初めて苦戦した相手であった」と、“料理”を評した。




ある日、いつも通りに突然未央みおが、豊の病状と、蝶姫の内面の状況を診にやってきた。


ビューんと突風が吹き、未央が蓮月殿の中に現れる。



未央「おはみーお!ボンジュールおはようサ・ヴァげんき?」


豊「おはみーお!サヴァ…(あれれ?また勝手に口が動く…)」


未央「ヒトの子よ~、そこは『サ・ヴァ・トレ・ビア~ンめっちゃ、げんきだよ』っていうのだぞぉ~」


豊「うん、わかった!コムシィ・コムサ~まぁまぁだよ~(あれれ?思っていたのと違う言葉が勝手に口から出て来る…)」


未央「スィ・トレ・ビア~ンめちゃいいね。では、今日からみおみお特性のゲキマズお薬は不要じゃ。飲まんでよきよき」


豊「…。(みおみおちゃんも、やっぱり激的げきてき不味まずいという認識だったんだ~。もう飲まなくていいと言う事が、よかったような、…残念なような)」

と、蝶姫の顔を見上げる。その顔は、残念度100%であった…。


未央「あ~んしんせぃ、ヒトの子よ。キミは冷え性で虚弱体質きょじゃくたいしつであ~る。さらに…。ん~、まあいいっか、今話す事ではないか…。うんむ、その弱っちい身体を根本から良くせねばにゃらん。お主の“根”・“幹”をしっかりせねばアカンのにゃ。せやから、お嬢に人参をつかった漢方を作ってもらい、毎日飲むのじゃ。これも朝と晩の食事前じゃぞ。食事前の方が効果はでるのにゃ。食事後だと、身体の中にある食べ物、特に糖が邪魔をして、腸内細菌ちょうないさいきんが薬を十分に吸収できなくなる。ま、そんなもんだにゃ」


豊「??」


蝶姫「??」


未央「そんな、『鳩が豆鉄砲を食ったような』顔をするでにゃい。ピヨるでにゃい。ほいでもって、お嬢っ。お嬢のもろもろの調子を診てもよいか?」


蝶姫「ええ、いいわよ」


未央「…。ほんだら、ちと、胸に手を当てさせてもらうズラ」


そう言って、未央は、蝶姫の胸元にいつもいる小さきヒトの子の顔を見ながら、蝶姫の胸に右手を当てる。


未央「…。にゃんと!?ふむふむ。バリよかね。よかばい、よかばい」


蝶姫「みおみお?あなたはなぜいつも変わった喋り方をするの?」


未央「お嬢っ、そいつぁ~、医者に野暮やぼなしつもんだぜぇ~って。こほん。医学や薬学を学ぶと、こうなります」


蝶姫&豊「…。(絶対にならないと思う)」



未央「う~む、やはりアレが不思議だにゃ~。って、せやった、みおみおは“こっち”には長居できひぃもんやったんだったワイ。ヒトの子よ、お嬢っ、自分の身体と気持ちを大切に、そして素直であり続けるのだにゃ。へば、まんず」


豊「へばなぁ~(あれれ?また勝手に反応しちゃう。知らない言葉だし…。みおみおちゃんの影響?)」


そして再び風と共に去った。



蝶姫「ねえ、あなた。今日も体調は良いのかしら?」


豊「うん、バリバリえぇよ(あれ?あれれ?まだ、みおみお語が…)」


蝶姫「では、今日もお天気がよいので、一緒にお散歩をしましょう」


豊「うん。また街で珍しいものがありそうだもんね。あと、少しだけコパンとクマ吉にも会ってもいいかな?」


蝶姫「えぇ、もちろんですとも。さぁ、始まったばかりのこの初夏を愉しみましょう」



歩けるようになった豊は、蝶のおねーちゃんと手をつないで、街を散策するのであった。


桜道では、桜の花はもう終わってしまったけれども、その代わりに新緑の葉が美しかった。そして、薔薇バラ、チューリップ、アネモネ、ラベンダーなど様々な色合いの花達が店先の花壇で咲いていた。



初夏の風がその花々の香りを二人に届ける。

蝶姫の長い髪がなびき、その香りを味わう小さなヒトの子がいた。


今日もふたりは幸せだった。そして今日も街は平和であった。






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