第23話:オトナは大変だぁ~

パンダ族との交流、そしてパンダ族と共に熊族と3者で話し合う件について、ホウは考えていた。いや、実際には悩んでいた。


豊「う~ん、姉上に買って出てみたものの…。はぁ、パンダ語も、熊語も、ボク、分からないからなぁ~。どう進めていけば良いのだろうか…?あぁ~、わからない…」



普段、一緒に寝ている一番上の姉・大姉ダイシの寝室で、ひとりため息をつく。何度も、何度も、繰り返して…。


見上げると満月で、月明りが周りを明るく照らしてくれている。


豊「オトナの人たちは、こういうのを毎日やっているんだよな~。凄いよなぁ~。ボクの場合、自分でやってみたくって、言いだした事だけど…。でも、やりたくない事も任命や命令されたら、やらないといけないんだよなぁ~。…。オトナって大変そうだぁ~」

と、ますます気が重くなる。



すると、再び太陽が現れたと思うほどにあたたかい声が聞こえてくる。


大姉「ただいまぁ~。遅くなってしまったわ。ごめんね~。もうご飯は食べたの?あっ、またお野菜残しているなぁ~。おねーちゃんが食べさせてあげるから、こっちにきなさーい!」


豊は、声がした方へテクテクと歩き、椅子に座る。そして、あらがう様子を見せずに、おくちを「あ~~ん」とした。


大姉「は~い、いい子だね~。しっかりお野菜も食べるのよ~」


野菜をはしでつかみ、一つ一つ豊の口に運ぶ。


大姉「あららっ!?今夜は上の空うわのそらっていう感じね。どうしたのぉ~?おねーちゃんに言ってみん?もしかしてぇ~、『今夜はボクをギューっと抱きしめて寝て欲しい』とか、『チューして欲しい~』とかかしら~?っふふ」


豊「いやぁ~、オトナの人たちは大変だなぁーと思って…。国の為、人の為、そして自分の為にもなるんだけれど…。そうだとしても、お仕事…、任務…、大変だよなぁ~って。色々と背負って生きているんだな~って」


大姉「ふふふ。そーーーんな事を考えていたの?」

と、笑う。


豊「姉上は、かなり責任がある立場じゃん。大変なはずなのに、いつも太陽のようにあたたかく振舞い、誰にでも公平に接し、公正に判断して…。すごくステキなオトナだなぁ~って、改めて思うんだ」


大姉「あらあら。おねーちゃんを口説いてくれているの?」

と言い、急にオトナなお姉さんの色気を出し、豊の左胸をツンツンする。


豊「あっ、姉上っ!ボ、ボクは本気で…」


すると、大姉はその豊の口を人差し指でふうじる。


大姉「は~ぃ。今夜はそこまで…。おねーちゃん、もう眠くなっちゃったから、寝るわよぉ~」



ふたりで寝台へ向かう。大姉はルンルンしながら。豊は下を見て、考え事をしながら、トボトボと。


そして寝台に上がる。


大姉は豊をやさしく包み込む。


大姉「大丈夫よ。わたくしは、あなたのおねーちゃんっ。おねーちゃんねぇ、こう見えて結構なんでも出来ちゃうの。だから、明日、色々とお話をしましょう。香織カオリだって、頼れるおねーちゃん。私に相談できない事がもしあれば、香織に聞くのよ。…。あーでも、おねーちゃん、嫉妬しっとしちゃうかもだから、やっぱりおねーちゃんに聞いてねぇ。だって、おねーちゃんは、キミの事が…。とっても…。とっても…。だいす…き…なの…」


気づいたら、大姉は眠っていた。


豊は姉の言葉の最後の方が気になったが、姉の体温が心地よく、豊も眠くなってきた。



姉は、まだ小さく幼い弟をやさしく包む。



姉の鼓動が、その胸から弟に伝わる。


やわらかい。やすらぐ、いい匂いがする。


満月は二人を見守る。





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