第18話:黄巾賊を諭す

街道で、商隊が『黄色い頭巾』、つまり黄巾賊こうきんぞくに襲われているのを助けた一行いっこう。その街道の先にもまだ黄巾賊が居ると聞かされて、大姉ダイシ小姉ショウシも、そこへ向かった。


馬を進めてみると、既に100人ほどの賊が倒されていた。そこには、あの3人が居て、返り血すら浴びていないようで、清々しい装いであった。


黄巾賊とは言え、元々は農民だった者が多い。


劉備は、彼らに「本来するべき事をせよ!」と、つまり「農地を耕し、生活に活路を自分たちで開きなさい」とさとした。何人かはうなずき、黄色い頭巾を捨て、劉備に一礼し、どこかへと歩み始めた。


残った者達には、関羽が「お主らは腕に自信があるように見える。自分の村や町で、警備隊や軍兵として仕官してはどうか?」と、こちらも諭す。すると、悟った者達は、同様に黄色い頭巾を投げ捨て、同じようにどこかへと歩みを進める。


数名残った。すると張飛が「おめぇら、次はオレが真っ二つにするからな!もう悪さをするなよ!」と一喝いっかつすると、方々ほうぼうへ散らばって逃げ出した。


そして、その討伐により命を落とした黄巾賊の亡骸なきがらを一か所に集めては、丁寧に土葬どそうをする。



それらの光景を見ていた大姉ダイシは、小姉ショウシを伴い、劉備達3人に先ほど助けて頂いたお礼をするのであった。


大姉「私は京国の大姉、こちらは私の妹の小姉。先ほどは危ないところを助けて頂き、ありがとうございます」


大姉と小姉は深々と一礼をする。


劉備「私は玄徳。劉備です。お嬢さまがたの慈悲ある行動に感謝申す」

関羽「雲長。関羽じゃ。お嬢さん方の豪胆ごうたんさ、実に見事!はっ、はっ、はっ」

張飛「益徳。張飛だ!嬢ちゃん達、オレらと勝利の一杯でもやらねぇか?わっ、はっ、はっ」


大姉「是非とも!と言いたい所ですが、実は大怪我をした弟を待たせている為、すぐに戻りませんと」


張飛「なんだっ!残念だな。ひょっとしてだが、べっぴんさんと一緒の幼い少年か?」


小姉「!?いま何と?益徳さま、詳しくお教えいただけませんか?」


張飛は、さっきホウと出会った話をする。


大姉「あらあら。あの子ったら、もう。好奇心旺盛こうきしんおうせいなのね。ふふ」


小姉「あの子ったら…。姉上さまの命令を聞かぬとは…」

と、殺気立つ。


張飛「おいおい。物騒だな。嬢ちゃんも、意外と猛者だな…。おそろしや、おそろしや」


小姉「教えてくださり、ありがとうございます」

と、張飛に一礼し、

小姉「姉上っ、すぐに戻りましょう!」

と急ぎ戻ろうとする。


大姉と小姉は、改めて3人にそれぞれ礼をし、自分たちの馬車へと向かった。



張飛「いやぁ~、嬢ちゃん達と一献いっこん、交わしたかったなぁ~」

関羽「また会うだろう。そんな気がするわぃ」

劉備「あの者達も見事。そして先ほどの少年の眼差まなざし…。実に良いものであった。将来が楽しみだ」


張飛「って、誰もあの超絶べっぴんさんの話をしねぇのかい!?オレの嫁さんになってくれねぇかなぁ~」

関羽「お前では無理だ。酒くさいし」

劉備「はっはっはっ。我々では釣り合わんよ。まさに『月とスッポン』。色々な意味でな」

張飛「さすが兄者あにじゃ。『酒にスッポン』とは!ありゃあ、絶品の組み合わせのひとつだぜっ」

関羽「バカもん!お前は少しは『酒』から頭が離れないもんか?」

劉備「益徳。酒とはうまく付き合えよ。じゃないと…」

張飛「じゃないと…?」

劉備「まぁよい」



3人の神様は、またどこかへとゆっくりと馬を脚を進める。


黄巾賊だった者達が、国の為、人の為、自分の為に改心し、行動に移せたかどうかは分からない。でも、そうであって欲しいと願う、3人の神様であった。





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