第17話:3人の男・神々?

帝都ていとらくを出発し、おウチのある京国ケイコク京ノ都ケイのみやこへと馬車が街道を軽快に走る。


荒野から山間部に差し掛かった時、馬車が急に止まる。


大姉ダイシさま、前方に賊です。引き返しますか?それとも迂回うかいしますか?」

と馬車の御者ぎょしゃが尋ねてきた。


大姉は迷わずに、

大姉(京香ケイカ)「ここで止めて!」

と答える。


大姉「律香リッカ、行くわよ。ホウはこのまま蝶姫チョウキと一緒にここで待機!」

と指示を出した。


小姉ショウシ律香リッカ)「はっ!姉上っ」


馬車の客車をいていた2頭の馬を客車から外し、サッっと乗る2人。

そしてすぐに小姉はまわりの状況と、前方の様子を見る。


小姉「姉上、賊は50名程。『黄色い頭巾』、黄巾党の賊どもです。商人の一隊が被害にあっており、護衛はもう残り5~6名ほど」

大姉「わかったわ。急ぎましょう」

と、馬を走らせた。


その手際のよい姉達を見て、

豊「姉上は、やっぱりカッコイイなぁ~。なんか面白そうだから、行ってみたい。でも、まだ右腕くらいしか、動かないし…」

抱いてくれている蝶姫を下から見上げる。


蝶姫はその様子を察し、

蝶姫「えぇ、あなたがやりたいように。わたくしがあなたの手となり足となりますゆえ」

豊「えへっ、そうっこなくっちゃ」


蝶姫「ただし、まだ右腕が少し動くくらいにしかあなたは回復されていないのですからね」

豊「うん。じゃぁ、その辺りの人から馬を借りて、向かおう。そして、常に相手ぞくをボクの右側になるように、馬をあやつれるかな?」


蝶姫「えぇ、大丈夫。“操る”のは得意だわ」


蝶姫は自身のおびを一度解き、豊が落ちないようにその帯を締めなおす。さっきまでの体勢と異なり、今度はともに前を向くように。


蝶姫「あなた。痛くはなぁい?」

豊「うん、大丈夫。ありがとう」


そして、2人は馬車から降り、近くで同じように足止めされていた商人らしき男性から馬を1頭借りた。その男性を護衛していた者からやりを1本借りた。


豊を抱えたまま馬にひらりと乗り込む蝶姫の美しさに、周りから「おぉー」と歓声が上がる。


蝶姫「よい、かしら?」

豊「うん、行こう!」


こうして姉達のあとを追う2人。



前方では、大姉が賊達を次々と切り倒し、小姉は生き残った商人や傷ついた者達を一か所に集め、それを護衛している様子が見えた。


豊「また『黄色い頭巾』か~。最近流行っている服装なのかな~。よくない印象だなぁ~。50人くらいはいるよね。急がないと…」

蝶姫は、首を縦に振る。


すると蝶姫達の右後方から砂ぼこりが巻き上がる。


豊「誰か来る!」

蝶姫は、首を縦に振る。


その砂ぼこりから3人の男達がものすごい速さで追い抜こうと近づく、

「なかなか、やるではないか、少年よ。我々が先に成敗してくるゆえ、ムリをするでない」

と、一人の男が話しかけて来た。


でもすぐに、

雲長うんちょう益徳えきとく!急ぐぞ!」

と、声を張り上げて、さらに馬の速度を上げた。


雲長「はっ、兄者あにじゃ

益徳「おうよっ、兄者あにじゃ


勇ましい声が響く。


益徳「よう、小僧、なかなかやるじゃねぇか。じゃ、またな。向こうでな」


豊にそう声をかけて走り抜ける。


豊「…神様…!?。神さま達じゃないかな?いまの」

蝶姫は首を縦にふったようだった。




はじめの男は2本の剣を巧みに使いこなし、賊を次々と斬る。

続いて、雲長は大きな青龍偃月刀せいりゅうえんげつとうを一振りすると、一度に3~4人が斬られた。

そして、益徳がどっしりと重そうな蛇鉾じゃほこを軽々と四方八方に振り回し、5~6人ずつ倒れていく。


大姉はその3人の猛者もさに目で礼を伝え、小姉の元に行き、商人達の護衛役をになった。



蝶姫と豊が到着した時には、すべてが片付いていた。


豊はさきほどの男に、

豊「あ、あなたがたは、神さま?」

と恐る恐る尋ねる。


すると、

「私は玄徳げんとく劉玄徳りゅうげんとく劉備りゅうびと申す」

と答えた。


豊「ぼ、ぼくはホウ。曲の下に豆を書いて、豊」

玄徳「うむ、よき名じゃ。あっちの髭の長い者は関雲長かんうんちょう関羽かんう)、そして顔が真っ赤な者は張益徳ちょうえきとく張飛ちょうひ)じゃ」


豊はそれぞれに馬上から軽く一礼する。


玄徳「われら、この黄巾族を討伐する義勇兵ぎゆうへいである」

雲長「少年よ、その不自由な身でよくぞこの地へ来られたな。あっぱれじゃ」

益徳「小僧っ、勝利の酒でもやるかぁ~。わはははは」


豊「ねぇ、蝶のおねーちゃん。3人とも神様みたいだね。玄徳さんは人徳じんとくの神さま、雲長さんは武神ぶしんみたい、益徳さんは…お酒の神さま!?」

と、ひそひそっと蝶姫に話す。


蝶姫は、首を縦に2回…いや3回振る。



助けられた商人たちは、この道の先にまだ『黄色い頭巾』が居ると伝えると、3人の神さま達は、一度まわりの状況を確認した上で、

玄徳「ここは任せ申した。我々は先へ進む」

豊「はい。わかりました。またどこかでお会いしましょう。ご武運を」

玄徳「少年よ、道を自身で切り開いてゆけよ。また会おう」


お互いにかるく一礼し、

玄徳「雲長、益徳!進むぞ!」

声を張り上げて、討伐に向かった。


雲長「はっ、兄者あにじゃ。少年よ、さらばじゃ」

益徳「おうよっ、兄者。小僧、またなっ」

と再び勇ましい声が響き渡る。



大姉と小姉は怪我人を手当し、商人達は大姉に何度もお礼を言う。


豊「やばば。今になって、急に身体が痛くなってきた…」

蝶姫「ここは京香たちに任せて、馬車に戻り、休みましょう」

豊「そうだね。律香お姉ちゃんに見つかったら、最期さいご。やばみーお!(あれ?また語尾が変に)」

蝶姫「(みおみおの術の副反応・後遺症がまだあるのね…)では、戻りましょう」



さっと、その商隊から離れて馬車に戻る蝶姫と豊。


大姉と小姉は引き続き怪我人をる。



その光景を山の上から見守る男が居た。


ムッキムキであった。






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