第16話:おウチへ帰ろう

大姉ダイシ京香ケイカ)と小姉ショウシ律香リッカ)は、帝都・中央軍事府での今回の任務を無事に終えて、蝶姫チョウキホウの居る部屋へと入って来た。



大姉「豊~、その後はどう?まだ痛むの~?」

と、太陽のようにあたたかい声で尋ねるが、その様子は過剰な程に心配している事が手に取るように分かる。


一方、

小姉「あぁ~、まったく。あなたは自分の立場をよく理解していない!『無茶をしてはいけません!』ってあれほど言ったのに!この子ったら~」

と、少しご立腹の様子を見せる二番目の姉。


大姉「良いではありませんか。こうして無事なのですから」

豊「そうだよ~。お姉ちゃんはね~、いつも厳しいんだよ~。もう」



小姉「あぁ、これは失礼致しました。私は、その子の姉、小姉ショウシです。色々とご迷惑をおかけしたようで、申し訳ございませんでした」


小姉は蝶姫に丁寧に一礼をする。


蝶姫「いいのよ。大丈夫。わたくし蝶姫チョウキ。そして侍女じじょのまゆ。よろしくね」


まゆは一礼し、小姉も一礼した。


小姉「って、あなた!なんでそんなところにいるの?お姉さまに失礼でしょう!早く降りなさい」

と、蝶姫の胸元でまったりしている豊に向かって怒る。


蝶姫「大丈夫。色々な事情があって…。こうやって温めてあげる事で治りが早くなるの。だから、大丈夫」

小姉「蝶姫どの、しかし…。しかも、そのようなお姿で…」

蝶姫「大丈夫」


豊は小姉に向かって、「あっかんべー」とやってみせる。


小姉「この子ったら…。あとでお仕置きをしないと…」

殺気立つ。


大姉「はい。そこまで。じゃぁ、そろそろおウチに帰るわよ~。蝶、あなたも来るでしょう?」

蝶姫「えぇ。もちろん」

大姉「じゃぁ、みんな~、準備してねぇ~。馬車はもう入り口で待たせてあるから」


大姉は小姉の手を取り、先に部屋を出て馬車に向かった。



まゆ「お嬢さま、私はそろそろアレですので、帰ります。また、折を見て、お伺いいたします」

豊「えぇ~、まゆのおねーさん、帰っちゃうの~?」

蝶姫「そうよね…。(あれ…?わたしは…?なぜ…?いつもと違うこの感じ…。この子と出会ってから?一緒にいるとなぜか…。この子の力?ひかれあう何かが?)」


まゆ「お嬢さま?いかがなされましたか?」

蝶姫「…。ちょっと不思議な事が…。想定外の展開で…。興味が…」

まゆ「!?…。はっ。た、たしかに!私や未央みお様は定期的に帰っておりましたが、お嬢さまはずっとこの地に…。お加減は大丈夫なのでしょうか?」


蝶姫「…。大丈夫…。不思議な感じ。むしろ、みなぎるの…。“力”というのか、“気”が…、みなぎるの…」


豊「!?(なんのお話しだろう。子供のボクには分からないカモ(んん!?また語尾が変だにゃ))」


まゆ「我々の言い伝えにある…、アレですかね?」

蝶姫「えぇ、初めてだから、分からないけれど、そうかもしれないわ」


まゆ「いずれにしましてもお嬢さま、慎重に。ご無理をされませぬように」

蝶姫「ありがとう、まゆ」

まゆ「いいえ、では、私は失礼します(あぁ、お嬢さまに『ありがとう』と言われたわ。嬉しいわぁ)」


ルンルンな気分のまゆは、一瞬で消えたように見えた。



馬の「ヒヒ~ン」という泣き声のあとに、大姉の「豊~、まだなの~?おねーちゃん達、待ってるよ~」という声が響いてくる。


さあ、荷物をまとめて、身支度を手短に済ませて、馬車に乗ろう!



おウチへ帰るんだ。





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