第10話:つながる耳飾り
豊「なぁにそれ?蝶のおねーちゃん、また『大丈夫』だけのパターンじゃん。ウケる~。あー、ははははっ。…う~、イテテテ、傷口が痛む。でも、笑いが止まらない…」
豊「ほら、また『大丈夫』って。あはははっ」
大姉「その赤子は“あなた”なのよ、豊」
豊「えっ!?マジで…!?」
と、急に真顔になる。
大姉「生まれた時から、綺麗なお姉さんが好きで、まわりの
豊「すると…?」
大姉「100人とも全くダメだったのよ…。仕方なく姉である
豊はちょっと顔を赤くした。
蝶姫「それに赤子のあなたは、
豊はもっと顔を赤くした。
豊「赤ちゃんの時の事は、覚えていないもん。赤ちゃんに罪ナシ!だもん」
「ホーホケキョ」と鳴く鶯は、この時ばかりは上手く歌えず、
蝶姫と大姉はクスクス笑った。豊の顔はまだ赤い。
豊「あれ?さっき、
大姉「あなたが寝ている時に、蝶と色々とお話が出来たの。それで“仲良しさん”になったの」
蝶姫「えぇ。大変興味深いお話を聞かせてもらったわ、あなた」
と、豊の方を見て、微笑む。
豊はドキっとしながらも、
豊「姉上っ、余計な事はしゃべってないでしょうね?」
と姉の方を向いて問う。
大姉「どういう事が“余計な事”になるのか、おねーちゃんに説明してくれたら、答えてあげる」
豊「例えば、ボクが、小さかった頃に、よく…。はっ。こ、これは、ボクが“余計な事”を自らしゃべってしまう…という計略なのでは?」
警戒する豊に
蝶姫「大丈夫。私はどんなあなたであっても…。大丈夫」
蝶姫が『大丈夫』ばかり言うので、再び豊は大笑いした。
豊「姉上、それで、蝶のおねーちゃんからもらった耳飾りは返せたの?」
大姉「いいえ、今もあなたが持っておりますよ。その懐に。お守りとして」
豊「も、もしかして、匂い袋の中に入っているの?姉上が、『この中には女神さまのご加護が入っております。開けてはいけません。開けると、女神さまは帰ってしまいます』って言っていたっけ。だから一度も開けたことはないんだけど、蝶のおねーちゃんの耳飾りが入っているの?」
大姉「えぇ。正しく言えば、匂い袋ではなく、耳飾りが入っている小袋であって、その香りの元は耳飾りのご利益なのよ」
豊「えぇ~、はじめて知った~」
大姉「そうよ、はじめて教えたのですから」
豊「この香り、すごく好きで、眠れない時とか、枕元に置くと自然と眠れるんだよね」
そんなやり取りをしている二人を見て、蝶姫はくすくす笑う。
豊「じゃぁ、これ、蝶のおねーちゃんにお返ししないとだよね?」
蝶姫「いいえ、そのままあなたが持っていて…」
豊「でも大切なものなのでは?」
蝶姫「そう、とても大切なもの。だからこそ、あなたに持っていて欲しいの。それに…」
豊「それに…?」
蝶姫「ううん。大丈夫。なんでもないわ」
豊「そう?じゃぁ、蝶のおねーちゃんのお
と、飛び上がろうとしたが、身体は動かなかった。
豊「いたたた」
蝶姫「もう少し休んでいた方がいいわ。お休みになって」
豊「うん。なんか急に眠くなってきた」
蝶姫「京香、あなたも休んできては?つかれたでしょう?」
大姉「えぇ、そうさせてもらうわね」
大姉は再び隣の部屋へ戻っていった。
まゆは、先ほど大姉をこの部屋まで案内をした後に、一旦席を外して居なかったのだが、しばらくしてから部屋に戻って来た。
まゆ「お嬢さま、よろしかったのですが、色々とお話をされて」
蝶姫「えぇ。私は構わないわ。それに、お話しをするって、こんなにも
まゆ「お嬢さま…(だいぶ変わられましたね。よい方向にすすむ事を、まゆは願っております)」
蝶姫は再び豊をやさしく、あたたかく包み込み、その寝顔を飽きもせずにじーっと見つめる。
メジロが梅の花を
風たちは、それを落とさないよう、気を使ってよそで遊ぶことにした。
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