第6話:ドキドキ
しかし、
豊は蝶姫の正面に立ち、その美しい瞳を見つめながら左脚で
蝶姫「わぁ、嬉しいわぁ。ありがとう」
続いて、蝶姫にかがんでもらい、その綺麗な黒髪に髪飾りをやさしく着ける。
豊「痛くはないかい?」
蝶姫「えぇ、大丈夫。とても綺麗だわ。ありがとう」
そして蝶姫はそのお礼に豊の左
蝶姫「ありがとう」
と
…というのを想像し、頑張ってやってみようと思うものの、どうにもこうにも全く身体が動かない。そして鼓動が急に変になる。
豊「ちょ、蝶のおねーちゃん。ボ、ボク、ちょっとドキドキしちゃって、ダメかも」
蝶姫「…。」
蝶姫の塩対応に、さらにどうしようもなくなる。ドキドキ感は増していく。
しかし、急に豊は蝶姫の胸に抱きついた。いや、胸に飛び込んだのだ、しかも勢いよく。
蝶姫「
と言った瞬間、蝶姫は大きな“衝撃”を感じ、地面に身体を打ち付ける。
胸に飛び込んで来た豊は、
豊「蝶のおねーちゃん、大丈夫?」
と、なぜか心配そうに聞いてくる。
蝶姫「…。大丈夫よ」
豊「よかった…。やばい、ドキドキが止まらない…」
蝶姫は不思議な感覚を覚えたのだが、すぐに今の状況を理解した。
近くを通った荷馬車同士がぶつかりバラバラに。そして、その車輪の破片が豊の背中に刺さっており、周りは怪我人で大騒ぎになっていたのだ。
蝶姫は“いつもと違う自分”を感じながらも、
蝶姫「…ねぇ、大丈夫?」
と、豊に声をかけ続ける。
豊「せっかく、綺麗なお姉さんに出会えたのに…。一緒にお茶とお菓子を食べたかったなぁ…」
と、声にならない声量で話す。
豊「(そういえば、こういう場合って、本の中や、町によく来る
横道は悲惨な状況になっていた。
その事故と、先ほどの『黄色い頭巾』の騒動は、すぐに
“ドキドキ”はゆっくりとなり、やがて…
鳥たちは歌うのを止め、春の風も通るのを控えた。
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