№Ⅱ 斬首
拝啓――父上、母上。シャーリーは今、幸せでございます。
「斬首」
今日は真っ赤な薔薇に囲まれた花道を散歩しております。曇り空なのが残念ですが……
「斬首、斬首、斬首――斬首斬首斬首斬首斬首――――――っ!!!!!」
空模様に反して私の胸の内は晴れ晴れとしております。あぁ、愉快愉快……待っていてください。すぐに……あの男の骨で作った髑髏の首飾りを貴方たちへ捧げます。
「ははは……アーハハハハハッッッ―――――――!!!!!!」
私は長く尖った爪で帝国兵どもの首を切り裂いていく。
真っ赤な鮮血が
指に付いた血を口紅代わりに塗っていると、曲がり角から鉄の剣を持って兵士が飛んできた。
「うわああああああああああああっっっ!!!!」
グッ……。
思っていたより湿っぽい音が流れた。剣は私の腹を貫き、背から飛び出している。
熊から逃げる子供のように純粋な叫び声をあげて私を貫いた兵士は
「――あれ?」
ようやく手ごたえの無さに気づいたのか、男は剣を引っこ抜いた。同時に、私の腹の傷が塞がっていく。
「でも変な話ね。〈死神〉と契約して
【人間は“死”から“終わり”をイメージする。だが俺たち亡霊からすると、“死”は“再生”の“はじまり”なんだ】
「ななな……! なななななななななななななーーーーーーっっっ!!!!??」
【全ての生物は生きている間に魂を消費し、死んだ後で魂を修復する。そいつの魂も修復させてやることだ。苔の生えた、醜い魂だぜ。おー、やだやだ】
壊れた時計を見ている気分だ。
恐怖に沈んでいく表情。可哀そうに、すぐに首を裂いてあげ――
「ひぃっ!?」
「――あら?」
私は伸ばした爪を振るおうとして止めた。
「あなたは……」
見たことのある顔だ。髭を蓄えたこの男は、よく私を犯した男。
「――思い出した。あなたは自分のションベンを女に飲ませるのが趣味の……名前は確かジーペラス、だっけ?」
私の声を聞き、ジーぺラスは信じられないという顔をする。
「ま、まさか貴様……シャーリー=フォン=グリム、なのか……?」
そうか。この変貌具合じゃ私だとわからないか。……いいや、それでも大部分は昔のままだ、よく私を見ていれば気づけるはず。会うのだって一度や二度じゃない……
――屑が。
「それはそうよね。便器の形なんて覚えてないわよね……」
私は足で地面を砕き跳躍、
「がっ――!!!」
ジーぺラスは蹴りの衝撃で
私はそのまま空中で縦回転して仰け反ったジーぺラスの顔面にかかと落としをくらわせる。そしてそのまま落下と同時に仰向けに倒れたジーぺラスの股間に着地し、股間を踏みつぶす。
「ぶくっ!!? いっ――――――てぇええええええええええええええええ!!!!? はぁ、はひぉ! お、降りてくれ!!!! いたい、いたいぃいいいいいいいいいいっ!!!!!」
「せっかくだわ、あなたにお返しをしなくちゃ」
私は右足でジーぺラスの口をこじ開ける。
「私は貴方にションベンを飲まされたわけだけど――あなたはなにを飲む? ネズミの糞か、蛇の毒液か。それとも――あなたの心臓?」
私はくり抜いたジーぺラスの心臓を口の上で絞った。
赤い濁液がジーぺラスの喉になだれ込むが、彼は何の反応も示さなかった。
「…………。」
「――もう死んじゃったの? もっと粘ってくれないとつまんないわ。こんなにも人が死にやすいなんて誤算ね」
私が落胆すると、リーパーが人差し指を私の背後の階段に向ける。
【良かったなお姫様。どうやら、退屈しのぎになりそうな輩が来たみたいだぞ】
「ん?」
重い足音が聞こえる。
二階へ繋がる階段、そこから降りて来たのは見たことのない大男……
「そこまでだ。シャーリー=フォン=グリム! 帝国兵士長の名にかけて、ここで貴様を殺す!!!!」
明らかに他の人間と様子が違う。
体中に血管が走り、瞳は白。筋肉が肥大化している。
「もしかして、私と同じ契約者?」
【違うな。アレは眷属だ。契約者の血を分け与えることで作成できる、魔人だな。用心しろ、契約者には及ばないものの高い能力を持つ】
リーパーの言い方だと、私にも眷属は作れるみたいだ。
良い事を聞いた。それなら……私に従順な、最強の軍隊を作れる。あの男を殺すため、そのためだけの軍隊が――
「血を分け与える、ね」
【言うなれば契約の又貸しだな。亡霊が人間と
私は兵士長殿に見えないように、自分の太腿に傷を付ける。
都合がいい。目の前の男で、眷属という存在の力を測らせてもらおうか。そして、私自身の能力についても――
「合わせろ
【あいよ
――――――――――
【あとがき】
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何卒、拙い作家ですがよろしくお願いします!
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