№Ⅲ 眷属
兵士長は地面を蹴り砕き、スタートダッシュ。槍をこちらへ向けてくる。
「覚悟ォ!!!」
「避けるのも面倒ね……」
私は右手を前に出し、槍にわざと右手を貫かせた。
血しぶきが兵士長の顔面に当たる。
(この状態で傷口を再生し――)
【槍を固定する】
ぐむっ。
槍の矛先が再生した右手の筋肉・骨・皮で固定される。
「ムッ!? 槍が動かん!!!」
「さよなら♪」
動揺する兵士長の首を伸ばした左手の爪で裂こうとするが――
「――――
兵士長は槍を放棄し、左膝で私の腹を蹴り上げる。
「――ぶっ!?」
血袋が口から吐き出る。
私はすぐに姿勢を戻し、かまいたちのような左脚回し蹴りを披露するが、
「温し! 温し! 温しぃぃいいいいいいいいいいいい!!!!!」
兵士長は軽くバックステップで躱し、伸びきった私の足を掴んで思い切り彼方へ投げ飛ばした。
「温し温し! この程度で我が帝国に仇なすとはナアアアアアアアアアアアア!!!!!」
(これが
【こればかりはしょうがないな。こっちも経験を積み重ねるしかない】
二十メートルほど宙を旅し、窓に激突する。ガラスの破片を体に浴びながら、私は首を鳴らして立ち上がる。
私はジッと右手と繋がった槍を見つめる。
「良い事思いついた……」
私は右手に刺さった槍を左手で
「なにを、している?」
ぶちぶち。と音を立てて右腕を右肩から引っこ抜いた。
槍の先に刺さった私の右腕。私は槍と槍に付いた腕を空に投げ、左手の爪で右手の肉を削ぎ落し、ついでに骨も加工。槍の先に自分の腕の骨で刃を作った。円を描く刃を――
「――――っっ!!!!??」
槍の柄と骨の刃、うん、悪くない。
「どうかしら? 死神の鎌って感じしない?」
【鎌と言うより鍬だな、これじゃあ】
「あら、案外厳しいのね。まぁいいわ」
兵士長は私の姿を見て、心底気色悪げに「化物め……」と呟いた。
化物? 私が? とんだ勘違いをしている。化物とは自然の摂理から離れた、人間を装った獣のこと。だとすれば、私は化物ではない。私は人だ、なるべくして成った存在だ。この力も、姿も、人間だ。化物とは、人の皮を被り欲のまま命の理の魂を、犯し・犯し・犯し続ける……お前ら畜生をおいて他にいない。
「帝国の人間こそ化物。私はそれらを討つ勇者……一匹残らず刈り取ってやる」
右腕を再生させ、両手で軽く鎌を振るうと、斬波が発生し、王城の二階を切り裂いた。兵士長は当然のように躱すも、その顔は驚きで溢れていた。
「なんという――出力……!」
「これは……?」
【初歩的な黒魔術さ。斬撃に魔力を灯して飛ばした。本来ならうちわを仰いだ程度の風しか起きないんだが……どうやら姫様の潜在魔力はタガが外れているらしい。天才亡霊の俺ですら出力を間違えた】
黒魔術とか潜在魔力とかはさておき、そういった奇術に全く触れたことのない私でもこんな芸当ができるのか。
いや、私がなにかをやったと言うよりは、私の中にある魔力の源泉を死神が勝手に使ったと言った方が正しいのか。
【魔術の制御は俺に任せな。姫様は思い切り――】
「暴れさせてもらうわ」
巨漢が接近してくる。兵士長は私が繰り出した鎌での迎撃攻撃をまるで読んでいたかのように躱す。
【動きが予知されているな……恐らくアイツに血を与えた契約者は未来に関する力か、あるいは読心に関する能力を持っている。――“
「あっそう。どちらにせよ、完璧ではないようね」
私は指で合図する。
「むっ――――」
がし。と兵士長の足を
「なに!?」
兵士長は下を見て、目を丸くする。
「ジーぺラス……!?」
それはさっき私が倒した男。
ジーぺラス。記念すべき、私の眷属第一号だ。ちょっと前に眷属の説明を受けた時、太腿から抜いた血を仕込んでおいた。
「なるほど、念じればその通りに動くのね」
【どうやら姫様の〈
動きが止まった兵士長に対し、私は鎌を振りかぶる。
「しまっ――」
「ばいばーい」
私は手に持った鎌で兵士長の胴体と腰を切り離した。
――――――――――
【あとがき】
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