魔導器操作研修



リュウは、午後の研修室に案内された。会議室とは思えないほど広々とした空間には、整然と並べられたパソコンが置かれており、他の社員たちがすでに着席していた。みんなが彼の姿を見ると、少し驚いた表情を浮かべていた。


「彼が新入社員のリュウさんか…。異世界から来たとか訳わからないこと言ってるけど。」


「ああ、噂には聞いてたけど、意外と普通じゃない?」


彼らの視線に気を取られつつも、リュウは自分の席に座り、目の前の「魔導器」を凝視した。研修担当の講師が現れ、満面の笑みを浮かべてこう言った。


「皆さん、今日はパソコンの基本操作を学んでいきましょう!まずは、電源を入れるところから始めます!」


その言葉にリュウは、胸が高鳴った。「なるほど、まずはこの『魔導器』に命を与えるのか!」彼は真剣な表情で前方を見つめ、電源ボタンを探した。


しかし、周囲の社員たちがあっさりと電源を入れ、画面が光り始めるのを見て、少し戸惑った。リュウはすぐに電源ボタンを見つけ、強い決意で押したが、思いのほか強く押しすぎて、隣の席の社員が驚いた表情を浮かべる。


「え、いきなりそれを押すの?もっと優しく…」


「す、すまない。魔物を倒すときの力加減が…!」


リュウの言い訳に、講師は微妙な顔をしながらも、研修を続けた。「次に、マウスの使い方です。皆さん、マウスを持ってみてください!」


リュウは「これが武器か」と思い、マウスをしっかり握りしめる。そして、講師が指示する通りに画面上のアイコンをクリックしようとしたが、彼の指がマウスを持つ手と反対の手で「攻撃」をかけるように振り上げていた。


「そうじゃなくて、クリックするのはこのボタンだよ…」


周囲の社員たちが苦笑いする中、リュウは思わず力を入れすぎて、マウスが隣のパソコンに飛んで行ってしまった。隣の社員は驚いて画面を見つめ、「それ、僕のパソコンだよ…」と苦笑い。


リュウは焦りながら「す、すみません、これは僕の戦闘スタイルには合わないな…」とつぶやいた。


研修が進む中、リュウはさまざまな操作を学んだが、彼の中では「魔法のような技術」であって、実際の操作はどれも難解だった。最後に講師が「では、簡単な資料作成をやってみましょう!」と言った瞬間、リュウの目は輝いた。



「資料作成…それなら、戦術書を作成する感覚だな!」


彼はさっそくパソコンの前に立ち、意気揚々と資料を作り始めた。だが、画面に表示されるフォーマットは戦術書とは全く異なり、言葉の選び方もビジネス用語が多く混乱する。


「この戦術、どうやって表現するべきだ…?『魔物討伐のための最善策』じゃダメか…?」


思わず呟いた言葉に、講師が振り返った。「リュウさん、それはちょっと…違う方向に行ってると思いますが…」



「な、何が違うんだ?この『クエスト』は…」


その時、講師は深い溜息をつき、「とにかく、ビジネス用語でお願い」と言いながらリュウの肩を叩いた。


リュウは彼の言葉を理解しきれないまま、「異世界でのクエストがこうだったら…」と、次第に独自の資料を作成していった。その様子を見た周囲の社員たちは、笑いを堪えるのに必死だった。

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