ニュース
現在 テネブラファミリーのアジト20階の廊下
「コタロー君、入りますよー」
ドアをノックしてドアの隙間の影から部屋に入る。一応鍵は掛からない様に取り外されていますが、ドアを開けるよりこっちの方が楽だから荷物が無いときは基本的にドアは使わない。
寝室に入れば、コタロー君は毛布を頭まで被った状態で眠っていた…毎回毎回息苦しくないのか?
「起きてますかー?」
「………」
返事がない、まだ寝ている様です。
一応脱走してないか確認する為に、毛布を捲り中を覗いて見れば体を丸め寝ているコタロー君がいた。
「…」
口元に手を置けばちゃんと息している…窒息していないみたいですね、私は再び毛布を被せ頭上の電気を消し、カーテンを開ける。
時計を見れば7時過ぎ、本来なら子供はとうに起きている時間ですが…起こす理由も無いしこのまま寝かせておいて、朝食でも作りに行きましょうか。
×××
「失礼致します、コルヴォ様朝食をお持ち致しました」
「…」
部屋に入ればコルヴォ様は煙草を吸いながら、テレビを点け仕事机に資料を広げ新聞を読んでいた…情報収集は1つずつと何回言えばわかるのだろう?というかちゃんと頭に入ってるんですか?
『8時のニュースです、本日は9月1日夏休みが終わり訓練所や学校では始業式が行われ、今日からまた子供達が訓練所に通う姿が―――』
「コルヴォ様、どちらに置きましょうか?」
「ん?…ああ、ここに置いといてくれ」
声をかけようやく気付いたコルヴォ様は、広げていた資料を纏めスペースを作る、私は朝食の乗ったお盆を開いた場所に置いた。
『―――次のニュースです、ここ数日10件以上もの飲食店で起きている連続無銭飲食事件の犯人は、マフィアであるナイヤファミリーのボスである事が判明致しました、現在も逃走中であるため飲食店には注意を呼び掛け、警察では情報提供を…』
「なに?生きてたのか…」
「え?ナイヤファミリーは壊滅したのでは?」
テレビから流れるニュースに私は耳を疑った、ナイヤファミリーは一週間前にコルヴォ様自ら抗争に参加した相手だったからだ。
「…超能力並みの悪運の強い奴だったんだな」
「え?能力者じゃなかったのですか?」
「いや確かに能力者だった、しかし逃走には関係ない能力だった…組織を潰した後逃走した奴を追跡し、町外れまで追い掛け崖に追い詰める事が出来た、しかしトドメをさす直前に崖が崩れてな…あの高さでは助からんと思っていたがまさか生きてたとは…」
ナイヤファミリー
狙った獲物は必ず仕留め、その組織に睨まれた相手は恐ろしさ故、蛙の様に身動きが取れなくなる我らは蛇<ナイヤ>を名乗る集団。
…実際は戦争すれば必ず負ける程とことん弱く、マフィア界の中で最弱の部類に入る弱小ファミリーだ。
しかし幾度潰すが数日経てば直ぐ再建され、自分達を壊滅に追い込んだファミリーに報復しようと、何度蹴散らそうが卑怯な手を使いながらも挑んでくる。
余りのしつこさにノイローゼになり負けを認めた組織も少なくない、しつこさだけで相手に勝った功績から“しつこさだけは蛇の様だ”と称される様になった。
つまりは弱いが敵に回したくない相手である。
「めんどくさい相手を敵に回したもんですねぇ」
「逃がしてしまった以上、ヤツは再び力を付け報復すべくしつこく狙って来るだろう…紅菊、外出時には一応警戒する様に」
「かしこまりました」
「それから…様子はどうだ?」
「?…なんのですか?」
「ほら…あの子の怪我の具合はどうだ?」
「え?…ああ」
コタロー君の事を言ってるのだと気付く、というか何故そこまで聞きにくそうなのか?
「コタロー君の肩の傷ならだいぶ塞がり包帯が取れ、ガーゼを軽く当てる程度まで回復しました、もう動き回っても大丈夫でしょう」
「そうか」
「それでコタロー君に何させるんですか?」
「…なに?」
「ただここで暮らさせるだけに連れてきたんですか?それとも何かお仕事させる為に連れてきたんですか?具体的には何をさせるんですか?」
「…お前に任せる」
「え?」
黙り込んだかと思えばまさかの言葉、本当に何の為に連れてきたんですかと問い詰めたい。
「紅菊に懐いているみたいだしな…暫くはお前に任せる事にする」
「まぁ確かにコルヴォ様の事を異様に怖がっている様ですし、それが良いかもしれませんね」
「………私の姿はそんなに恐ろしいのか?」
「え?何を今更な事を言うんですか?」
「…」
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