理由がわからない

「因みにテストで高得点を出したのはその1回何ですよね?」

「え…う、うん」

「…」


コタロー君の話を聞いていて、ますますコルヴォ様がコタロー君を此処に連れてきた理由がわからなくなりました。


話を聞いている限り、能力者でも無さそうですし、天才である事をひた隠しにしてきていた…そんな子を何でアジトに連れてきてエムエムに治療させたんでしょう?


まさか…本気でエムエムが言っていた…?………?


「(いやいやそんなまさか…とは思いたい)」




ガチャガチャ…コンコンッ


コルヴォ様がコタロー君を連れてきた理由を考えていると、仕事部屋の廊下へと通じる扉からノックオンが聞こえてきた。そういえば鍵を開け忘れていました。


「すいません、少し席を外します」

「う、うん」


コタロー君に声を掛けてから、仕事部屋を通り抜け鍵を開けるべく扉の前に立つ。念の為に影を伝いドアの向こうの様子を伺えば2m近くの大男…間違いないコルヴォ様ですね。


「紅菊、いないのか?」

「今開けます」


扉を開けると、そこにはアジトを出る前と変わりないコルヴォ様の姿があった、どうやら圧勝だったみたいですね。


「何故鍵をかけたんだ?」

「鍵をかけたのはコタロー君です。暗闇の中で声を掛けたところ、パニック状態になってしまい色々とありまして…」

「大丈夫なのか?」

「ええ、貧血を起こした程度で此方の受け答えも問題なく出来ています」

「そうか」

「それで、何でコタロー君を此処に連れてきたんですか?」

「コタロー?」

「あだ名です、霊園で何があったんですか?」

「その…色々あってな」

「何ですか色々って」


「ひぃっ!?」


「?」


後ろの方で悲鳴が聞こえ、振り返ると寝室の方から此方を窺い見たであろう、コタロー君が寝室の奥に逃げる音が聞こえた。しまった、お化けが苦手な彼がコルヴォ様を見て脅えてしまった様だった。


「コタロー君、お化けでも怪物でもありません。脅えなくて大丈夫です」



私はまた彼が貧血を起こしてないか心配になり、寝室の方へと向かいコタロー君の様子を見る。部屋の隅で毛布の塊が震えているのが見えた。


「コタロー君」

「本当に巨人さんだった!!しかも吸血鬼だ!僕食べても美味しくないよー!!」

「…確かにホラー映画に出てきそうな外見ですもんね」

「…」


私の後ろでコルヴォ様が毛布に包まるコタロー君を窺い見る。何ですかこの状況。


「コタロー君、確かに見た目は怖くとも別にとって食ったりしませんよ、人を見かけで判断してはいけません」

「…本当?食べない?」

「コルヴォ様にカニバリズムの趣味はありません」


コタロー君は恐る恐る布団から顔を出し、コルヴォ様を見る…完璧に恐ろしいモノを見る様な表情だった。


「…」

「……」

「………」


2人共何か喋って欲しい、私はかける言葉が見つからない。


「…紅菊、部屋はもう使えるな?」

「ええ勿論」

「部屋に連れて行って休ませてやれ、私はシャワーを浴びて一眠りするから、夕食時までは部屋に来るな」

「…かしこまりました、コタロー君こちらですよ」

「え?…あっうん」


私は怖がって私にしがみ付くコタロー君を連れ、コルヴォ様の部屋を出た。

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