妬み

「…だって、怖かったから」

「え?」




僕の頭が良くなったってわかったのは中訓練所1年のニ学期の期末テストの時、窓を見たら曇り空で雨が降りそうだったんだ。


その日は朝は天気良かったから洗濯物干しちゃってて、お母さん死んじゃったから洗濯物取り込む人がいないから、洗濯物濡れちゃうなーって思ってたら先生が…


『今日は午前授業だ、先生は忙しいからテスト終わった奴から勝手に帰って良いぞ、但し不正はするなよ!!』


って全科目のテストを一編に配って、教室出て行っちゃったの。


「(本来成績が悪いと厳しくなる筈ですがI組みともなると教師側はもう諦めてるから、教育が適当になってるんですね…)」

「だから僕急いでテストを終わらせたんだ、一時間目で終わっちゃって流石に適当にやりすぎたかな〜って思って見直ししようとしたけど、外ではポツリって雨が降ってきちゃったから、急いで教壇に提出して帰ったんだ」


そん時僕1番目だったから、みんなに見られて恥ずかしかったけど、洗濯物が心配でそんな事気にしていられなかったんだ。


次の日友達に『お前早く帰りたいからって適当過ぎるだろ〜』とか『よっしゃ!コタローのお陰で最下位免れた!!』とかからかわれたんだ、でもテスト返された時に…


『それではテストを成績順に発表する…が、今回特にズバ抜けた者がいる!一位!平均点数80点!!』


80点って言われた途端みんな驚いたよ、だってI組みの平均点数は30点で一番の子で50点だったから…僕も凄いな〜って思ってたら。


『ひのしたぁ!この栄光のテスト用紙を取りに来い!!』

『…え?』


何で僕の名前呼ばれたのかわからなかった、だって僕今まで最高でも50点までしかとった事なかったから…他のみんなも一気に僕の方を見てた。


『ほらひのした何してる?早く取りに来い』

『え?え?…え?』


とりあえず呼ばれたからテストを取りに行ったんだ。


『せ…先生、それ本当に僕の?誰かのと間違えてるんじゃないですか?』

『なに言ってるんだ?名前の所にひのしたって書いてあるじゃないか』

『本当だ…僕の字だ』




テスト用紙を見てもまだ信じられなくて、呆然としていたら『もしかしたらカンニングしたんじゃないか?』『でも一番に教室出て行ってしかもクラスで一番の成績だぜ?』『誰かの見ながら書いてる風には見えなかったし…』『カンニングペーパーじゃないか?』って僕がカンニングしたんじゃないかって話声が聞こえてきた…僕そんな事してないよって言おうとしたら先生が『特に数学!90点もとれるなんて凄いじゃないか!!』


「って…」

「数学で90点…(他の教科ならカンニングは可能…しかし数学は予め答えを知らなければ不可能な教科)」

「それで先生が…」

『次にこの点数とれたらC組以上に行けるかもな!頑張れよ!!』




って言って先生に褒められた時はすっごく嬉しかった。




でも…




みんな僕を睨み付けてきてすっごく怖かった。




「それからね…みんな僕の事を無視する様になったの。」

「…」

「だから独りぼっちになるの怖くて…それからまたテストでは低い点取るようにしてたの…」

「…」






カンニング不可能な状況で出した高得点




それは彼が天才である事を証明するものだった




落ちこぼれ達には羨ましくて、眩しすぎて、妬ましい存在

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る