流行り病

因みに僕勉強と運動両方が駄目だったんだ。と言うコタロー君に、ますますそんな子が1人で生きてきた事が信じられなかった。


「本当に一年間でも1人で生きてきたんですか?さっき成績下から数えた方が早いって言ってませんでした?」

「う…うん、去年まではそうだったんだ」

「どういう事ですか?」

「あのね…2年前から流行ってる風邪に感染しちゃってすっごい熱出して、それから頭良くなったの」

「2年前の?2年前といえば…」


2年前、日ノ本が有する領土をめぐり敵国との戦争が勃発した。そして戦時中…敵軍人により人が生きていくに欠かせない水を溜め込む貯水池に、腐敗した動物の死体を投げ込まれる事件が発生した。


腐敗した血肉が溶け込んだ水から疫病が蔓延し、多くの日ノ本人が死に追いやられた。


そのウイルスは新種のバクテリアでありワクチンは1から作らねばならなず、ワクチンの製造が遅れた事と死体が放り込まれた時期は大量に水分が必要とされる夏季、貯水池が封鎖されるまでの間にその水を口にした者達から、尋常ではないスピードで感染していった。


ワクチンが完成された後も感染者の多さから、軍の関係者とワクチンの製造に多額の援助を出した企業や、華族を優先的に回される事となった。


疫病による死亡者は日ノ本人口の5分の1…しかしその病でにほん軍の体制を崩された事により戦争は敗退。今まで日ノ本が有していたその領土は食物の製造を拠点にしていたが、相手に取られた後、日ノ本国民は食糧難に追いやられ更に人口の5分の1が餓死する事となった。


…餓死・病死した家庭の八割が庶民・貧民の者達だった。


世間は「増えすぎた人口を減らす為に、わざと流行らせたのではないか?」と不信感を露わにしたが2年経った今ではワクチンの製造に余裕が出来、その噂を消し去るようにワクチンが無料提供される様になり、ウイルスの大半が死滅している。


しかし合計日ノ本人口の5分の2が死亡、そのウイルスは重症の者の脳に爪痕を残し、食糧難は改善される事の無く物価は上昇したまま、にほんに多大な損害を残す結果となった。


「…あなたは脳に後遺症が残る様な重い病に犯され逆に知能が上がったと?」

「うん…すっごく苦しくて、涙出ちゃうくらい頭が痛くて、凍えそうに寒くて死んじゃうかと思った…でも風邪が治った後ね、なんか視界が広がった感じになって頭の中が凄くスッキリして、先生が言った事や教科書に書いてある事が全部頭の中に溶け込んでいったの」


だからそれが面白くて、小訓練からの教科を学年順に読み返していったんだ〜っ。と嬉しそうに語るコタロー君に私はまだ信じられないでいた。


「本当ですか?今までの言動から頭良く見えないのですが?」

「本当だよー、前は九九覚えるのに1ヶ月以上かかったのに、今じゃ三桁のかけ算も一瞬で出来るようになったんだ!試しに何か問題出してみてよ」

「では…258×369は?」

「95202!!凄いでしょ!!」

「…今ここに計算機がないので、あっているのかどうかわからないのですが」

「あっ!そうか」

「まぁ嘘では無さそうですしどうやら本当の事の様ですね」


急激に上がった知能に精神がついて行けてない…完全に振り回されてますね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る