3・0・0・1 命題を思考する

○前段


1 : Die Welt ist alles, was der Fall ist.

世界は全てである。あらゆる何か、その現象がそこにあるに依る。


2 : Was der Fall ist, die Tatsache, ist das Bestehen von Sachverhalten.

事実、事実は、事態の存在です。


……


2.225 : Ein a priori wahres Bild gibt es nicht.

アプリオリな真のイメージは存在しません。


3 : Das logische Bild der Tatsachen ist der Gedanke.

事実の論理上の像が、思想。



○派生図


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3.001 : »Ein Sachverhalt ist denkbar«, heißt: Wir können uns ein Bild von ihm machen.

「状況が考えられる」とは、次のことを意味します: 私たちはそれについてのアイデアを得ることができます。


3.01 : Die Gesamtheit der wahren Gedanken sind ein Bild der Welt.

真実の思考の総体は世界の絵である。


3.02 : Der Gedanke enthält die Möglichkeit der Sachlage, die er denkt. Was denkbar ist, ist auch möglich.

思考には、それが考える事態の可能性が含まれています。考えられることは何でも可能です。


3.03 : Wir können nichts Unlogisches denken, weil wir sonst unlogisch denken müssten.

非論理的なことを考えることはできません。そうしないと非論理的に考えなければならなくなるからです。


3.031 : Man sagte einmal, dass Gott alles schaffen könne, nur nichts, was den logischen Gesetzen zuwider wäre. - Wir können nämlich von einer »unlogischen« Welt nicht sagen, wie sie aussähe.

かつて、神は論理の法則に反するものを除いて、あらゆるものを創造できると言われていました。 - 「非論理的な」世界がどのようなものであるかを私たちは言うことができません。


3.032 : Etwas »der Logik Widersprechendes« in der Sprache darstellen, kann man ebensowenig, wie in der Geometrie eine den Gesetzen des Raumes widersprechende Figur durch ihre Koordinaten darstellen; oder die Koordinaten eines Punktes angeben, welcher nicht existiert.

空間法則に矛盾する図形を幾何学の座標で表現できないのと同様に、「論理に矛盾する」ものを言語で表現することはできません。または、存在しない点の座標を指定します。


3.0321 : Wohl können wir einen Sachverhalt räumlich darstellen, welcher den Gesetzen der Physik, aber keinen, der den Gesetzen der Geometrie zuwiderliefe.

確かに、物理法則に矛盾する状況を空間的に表現することはできますが、幾何学の法則に矛盾する状況は表現できません。


3.04 : Ein a priori richtiger Gedanke wäre ein solcher, dessen Möglichkeit seine Wahrheit bedingte.

ア・プリオリに正しい思考とは、その可能性がその真実性を決定するものである。


3.05 : Nur so könnten wir a priori wissen, dass ein Gedanke wahr ist, wenn aus dem Gedanken selbst (ohne Vergleichsobjekt) seine Wahrheit zu erkennen wäre.

この方法でのみ、その真実が思考自体から(比較の対象なしで)認識できる場合に、その思考が真実であることをアプリオリに知ることができます。


3.1 : Im Satz drückt sich der Gedanke sinnlich wahrnehmbar aus.

文章では、思考が感覚的に知覚可能な方法で表現されています。


3.11 : Wir benützen das sinnlich wahrnehmbare Zeichen (Laut- oder Schriftzeichen etc.) des Satzes als Projektionsmethode der möglichen Sachlage. Die Projektionsmethode ist das Denken des Satz-Sinnes.

私たちは、起こり得る状況を投影する方法として、文章の感覚的に知覚可能な記号 (音声または書かれた記号など) を使用します。射影法とは文章感覚の考え方です。


3.12 : Das Zeichen, durch welches wir den Gedanken ausdrücken, nenne ich das Satzzeichen. Und der Satz ist das Satzzeichen in seiner projektiven Beziehung zur Welt.

私は、思考を表現するための記号を句読点と呼んでいます。そして文は世界との投影関係における句読点です。


3.13 : Zum Satz gehört alles, was zur Projektion gehört; aber nicht das Projizierte. Also die Möglichkeit des Projizierten, aber nicht dieses selbst. Im Satz ist also sein Sinn noch nicht enthalten, wohl aber die Möglichkeit, ihn auszudrücken. (»Der Inhalt des Satzes« heißt der Inhalt des sinnvollen Satzes.) Im Satz ist die Form seines Sinnes enthalten, aber nicht dessen Inhalt.

投影に属するものはすべて文に属します。しかし、投影されているものではありません。つまり、投影されるものの可能性であって、そのもの自体ではないのです。文にはまだその意味が含まれていませんが、それを表現する可能性は含まれています。 (「文の内容」とは、意味のある文の内容を指します。)文には、意味の形式は含まれますが、内容は含まれません。


3.14 : Das Satzzeichen besteht darin, dass sich seine Elemente, die Wörter, in ihm auf bestimmte Art und Weise zueinander verhalten. Das Satzzeichen ist eine Tatsache.

句読点は、その要素である単語が特定の方法で相互に関連しているという事実から構成されます。句読点は事実です。


3.141 : Der Satz ist kein Wörtergemisch. - (Wie das musikalische Thema kein Gemisch von Tönen.) Der Satz ist artikuliert.

文は単語の混合ではありません。 - (音調の混合ではなく、音楽のテーマのように) 文章が明確になっています。


3.142 : Nur Tatsachen können einen Sinn ausdrücken, eine Klasse von Namen kann es nicht.

事実だけが意味を表現できますが、名前のクラスでは意味を表現できません。


3.143 : Dass das Satzzeichen eine Tatsache ist, wird durch die gewöhnliche Ausdrucksform der Schrift oder des Druckes verschleiert. Denn im gedruckten Satz z.B. sieht das Satzzeichen nicht wesentlich verschieden aus vom Wort. (So war es möglich, dass Frege den Satz einen zusammengesetzten Namen nannte.)

句読点が事実であるということは、文章や印刷における通常の表現形式では曖昧になります。たとえば、印刷された文章では、句読点は単語と大きく異なるようには見えません。 (つまり、フレーゲがこの文を複合名と呼んだ可能性があります。)


3.1431 : Sehr klar wird das Wesen des Satzzeichens, wenn wir es uns, statt aus Schriftzeichen, aus räumlichen Gegenständen (etwa Tischen, Stühlen, Büchern) zusammengesetzt denken. Die gegenseitige räumliche Lage dieser Dinge drückt dann den Sinn des Satzes aus.

句読点が文字ではなく空間オブジェクト (テーブル、椅子、本など) で構成されていると想像すると、句読点の性質が非常に明確になります。そして、これらの相互の空間的位置が文の意味を表現します。


3.1432 : Nicht: »Das komplexe Zeichen >aRb< sagt, dass a in der Beziehung R zu b steht«, sondern: Dass »a« in einer gewissen Beziehung zu »b« steht, sagt, dass aRb.

「複素記号 >aRb< は、a が b に対して R の関係にあることを示しています」ではなく、: "a" が "b" に対して特定の関係にあるという事実は、aRb を示します。


3.144 : Sachlagen kann man beschreiben, nicht benennen. (Namen gleichen Punkten, Sätze Pfeilen, sie haben Sinn.)

状況は説明できますが、名前は付けられません。 (名前は点に似ており、文章は矢印に似ており、それらには意味があります。)




 考えとは何か。「世界」を感得して得た「像」を想起すること。そして一切の反証のしようがない像が存在しないなら、一切反証のしようがない考えもまた存在しようがない。ここが3を論じるに当たっての大前提ということか。1,2というチュートリアルステージを経ていよいよ本編に入りますよ、という気分である。


 しかし「論理に反する」ことを言語で描写することはできないって、そりゃお前がオリジナルで用語の意味を定義してんだからそこに基づきゃそう言う話にしかならんやろ感があって、なぜこれをいちいち言明する必要があった……? と気になって仕方ない。


 今回はそのまま3.1にも踏み込む。だんだんノリもわかってきたから。とは言えまたキツくなってきたら減速もします。


 Satz、命題についての話が出てきた。命題とは何か。「考え」を解読可能な形で具現化したもの、という形のようだ。それは多くの場合言語という形を取るし、また五感という形を取るのかもしれない。あるいはそれ以外の何か、自分では想定し得ないような形式。これなんかもう十八界の話じゃんね。


 そして、ここまでの話からすれば、命題は「こと・もの」そのものを語ることはできず、「こと・もの」に付与されている様々な形式、いまの自分にわかりやすい言葉に置き換えてしまえば属性と、「こと・もの」の配置「を、自分が想定しうる形」でしか論じることができない。


「こと・もの」には、たとえば「喜怒哀楽」という感情も含まれている。喜びという感情がある、怒りという感情がある。以下略。これも「感情空間」にある「こと・もの」に付帯される属性とその配置を論じたものに過ぎず、想起された感情そのものについて語れはしない、となるだろうか。


 とか言っていたら3.13がわからない。いや「命題にこと・ものそのものは含まれない」はいいんだ。「命題の意味は含まれない」? 命題の意味とはなんぞ? まあいいや、留保して次。


 3.14 が大長編である。3.13もこのくらい手厚くしてほしいんですけどね。「命題記号」もまた事実、ときた。これはわかる。「命題記号として提起された」段階で「思考空間」における「こと・もの」と化すのだから。そうすると命題の中に示されたパーツ、テキスト空間におけるパーツであれば単語、が特定の配列に置かれることで事態を構成する、となるわけだ。


 んー、このへんは他ならぬ論理哲学論考がテキスト空間を形成していて、このテキスト空間に配された特定の配置がそのまま事態である、という自己言及になってくるな? 「命題とは必ずしもテキストという形式を帯びるとも限らないのだが、これを表現するためにはテキストという形式を帯びなければならない」、か。


 で、「テキスト空間」における命題が文章、「こと・もの」が単語、「事態」が文脈、「形式」が意味、と言う感じかな。


 3.2 に踏み込む前のラスボスが 3.1432 。そもそも階層が深いので注意を要しなければならない。aRb という記述は a と b における R という関係を語っているのではなく、「a と b が含有されている特定の状況」について論じている、のだそうだ。


 んー、これも後回しかな。3.2を追って、もしかしたら書かれていることがわかるかもしれない。

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