やめればよかった

天川裕司

やめればよかった

タイトル:やめればよかった


ある朝、急いで家を飛び出した時…

「ん、…何やってんのあの人」

向こうの方でうずくまってる人が居た。

女の人だ。


私は近寄って、

「あの、大丈夫ですか?」と聞いた。

女の人「ハァハァ…」

ただ苦しそうにしてる。そして…


女の人「す、すみません…私パニック症で…ハァハァ」

本当に苦しそうだった。

「パニック発作?」一瞬そう思う。

私の友達にも同じような症状の人が居たから

彼女のこの時の苦しさが何となくわかったんだ。


それに私も少し前、

パニック障害とは行かないまでも、

それに似た症状に駆られたことがあり、

その点でも彼女の気持ちが少しわかった。


「あの、よかったら誰か呼んできましょうか?大丈夫ですか?」

女の人「ハァハァ、すみません。でも出来ましたら、アパートまで一緒に付き添って頂けませんか?ハァハァ」


女の人「ゆっくりなら歩けるんですけど…過呼吸で失神しちゃうと怖いんで…」


過呼吸、その症状も知っていたから

彼女の言ってる事は嘘じゃないと思った。でも、

「(急いでるのになぁ)」

これから待ち合わせして、

友達と会おうって時にこんな事…。


「(仕方ない、遅れそうなら電話するか)」

心の中でそう思い、

彼女の言うアパートもすぐ近くだったので

とりあえず彼女の言う通り、肩を貸してあげ、

送ったげることにした。


女の人「ハァハァ…すみません、本当にすみません」


「いいえ!大丈夫ですよ♪そこなんですよねアパート?」


女の人「ハァハァ、そうです」


2階までの急な階段を一緒に上り、彼女の部屋へ。

リビングに着くなり彼女はテーブルにうつぶせって、

「すみません、こうするとしばらくして治ると思うんで…」

と言い、

「あの、申し訳ないんですけど、キッチンからお水持ってきて頂けませんか?ハァハァ…」


「え?あ、お水ですか?」


「ええハァハァ…こ、これ、飲むんで…」


頓服用で発作用の薬のようだった。


「あ、わかりました。ちょっと待ってて下さいね」


私はすぐキッチンへ。

リビングからキッチンは、支柱で少し隠れて見えない。

「はいお水…あれ?」

戻るとリビングに彼女は居なかった?


「ん…?」と思っていると、

玄関の方から静かにガチャ…ガチャリ…と聞こえた。

「何してんの…?」

と思いながらリビングを出て玄関の方を見ると、

そこに棒立ちのようにして立ってる彼女が居た。


一気に異様な空気が漂ってくる。

「………(な…なに…?)」

とりあえず言葉は出ない。


彼女はほとんど無表情ながら、

それでも何かに挑戦するような顔をして、

私の方へゆっくり歩いてくる。

さっきの音は鍵を閉めた音だ。


「…な、何なの…や、やめてよ…」

彼女はニヤァと笑った。

彼女は、彼女じゃなかったんだ。


そのとき私の中に、こんな言葉が浮かんできた。

「女は女に騙されやすい」

「最近、女に似た男が増えてきた。でも本性は男」


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=Ls54dw8Anv0

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やめればよかった 天川裕司 @tenkawayuji

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