第3話 親友のレン

 ちょうろういえはいってきたのは、カイトのしんゆう〝レン〟でした。レンは、カイトのおとうさんがケガをしたことをかされて、さきにカイトのいえまでったそうです。


「カイトのとうちゃん、たすかったみたいだぞ? いまびょういんにいるぜ。ほら、てよ」


 そうってやさしくわらいながら、しゃがんだままのカイトにばします。


 レンもカイトも、おなじゅっさいなのですが、さきこえわりがはじまっており、いつもたよれるレンのことを、カイトは『おにいちゃんみたいだ』とおもっているようです。



 レンにふくっぱられながら、カイトはびょういんまでのみちのりをあるきます。レンから、おとうさんがたすかったことをかされたのに、なんだかカイトはかないよう


「でも……。マモノのどくは、おしゃさんのほうでもなおせないって……。おかあさんも、レンのおとうさんも、みんなベッドのうえで、だらけになってんじゃった」


「俺のとうちゃんは〝ジューショー〟だったからな! マモノに〝かじられた〟ようなもんだったし。でも、カイトのとうちゃんは、ちょっと〝かまれた〟だけだろ?」


 レンのおとうさんも、カイトのおとうさんとおなじく、ヤッコスむらまもせんでした。しかし、むらおそったマモノをかえしたときに、いまよりもちいさかったレンとカイト、そしてカイトのおかあさんをかばってじゅうしょう――つまり〝おおきなケガ〟をいました。



げんだせって! おまえのとうちゃん、カイトのことしんぱいしてたぜ?」


 うつむいたままのカイトをはげましながら、レンがあかるくわらってみせます。するとカイトも、ようやくかおげ、ちいさく「うん……」とつぶやきました。


「ありがとう、レン。……それから、ごめん。おとうさんのこと、おもさせて」


にすんなよ! おまえって、そういうとこマジメだよな。きらいじゃないぜ」


 レンはったようにい、こんれたようにわらいます。カイトもつられたようにわらい、それからふたは、びょういんまでげんはしっていきました。


             *


 ふたいたしょは、いっかいてのちいさなびょういんでした。しかし、にはいくつものびょうしつがあり、たてものよりも、ずっとひろびょういんです。カイトたちは、はくおんなひとあんないされながら、へとりるかいだんくだります。


「さあ、どうぞ。……ふたとも。びょうしつでは、おしずかにおねがいね?」


 おんなひとやさしいこえで、ふたびょうしつなかはいるようにいました。ドアのよこには〝いつぼし りき〟とかれています。これが、カイトのおとうさんのまえです。


 カイトはおんなひとに「ありがとうございます」とおれいい、びょうしつのドアをしずかにけました。そこにはいちだいのベッドがかれており、そばのイスにちょうろうこしかけています。そんなちょうろうちかくには、みじかつえった、おしゃさんがっています。


「じっちゃん! ほら、カイトをれてきたぜ!」


「こら、レンや。しずかにしろとわれたじゃろうが。ごろうじゃったな」


 じつは、ちょうろうはレンのでもあり、ふたは〝おじいさん〟と〝まご〟のかんけいです。そんなちょうろうは、イタズラきでげんいっぱいのレンにたいして、「もっときなさい」と、いつもちゅうをしていました。



「カイト、げられたみたいだな。てのとおり、とうさんもだいじょうだ」


 ベッドによこたわったままのおとうさんはカイトをて、「ハハハ」とげんわらいます。しかし、おとうさんのみぎうであたまにはしろほうたいかれており、ムキムキにきたえているはだかじょうはんしんも、ほうたいやガーゼでいっぱいです。


「おとうさん……。やっぱり、おしゃさんのほうでもケガはなおらないの?」


 おとうさんの姿すがたたカイトは、ベッドのわきっている、おしゃさんのかおげます。眼鏡めがねをかけたせんせいは、ほうをかけるために使つかう、〝ワンド〟というしゅるいの、みじかつえっています。



「ああ。ざんねんながら、マモノのどくには、どんなりょうほうつうようしないんだ。こうして、つうじょうやくざいによるしょおこなない、ぜんまかせるのがさいぜんなんだよ」


 せんせいせつめいむずかしかったのか、くびをかしげるカイト。そんなカイトに、せんせいやさしくほほみながら、「きみのおとうさんをしんじよう」とだけいました。


 しかし、カイトはちいさいころに、ぶんのおかあさんがマモノのどくくなるところをています。おとうさんがんでしまうことは、カイトにもわかってしまうのです。


「このままじゃ……。おとうさんも、おかあさんやレンのおとうさんみたいに……」


 そこまでってことをつまらせ、またしてもカイトは、ゆかにしゃがみんでしまいます。そんなカイトのようて、ちょうろうが、しずかなこえいました。


「そのことじゃが……。もしかすると、おまえのちちすくほうほうがあるやもしれん。そうじゃな、もうゆうしょくどきじゃ。ワシのいえで、くわしくはなそうかの」

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