2 試合後

『けっ、決着だああああああああああっ!!!!!!!!!し......信じられません...!!!!!3対1の状況から!!【Bumpys】のginギンが奇跡を起こしましたああああ!!!!!!!』

『カオスアリーナ、日本リーグの優勝チームは─────────!!【Bumpys】だあああああああああああああ!!!!!』

『ワアアアアアアアアアアッッッッッッ!!!!!!!』


歓声が会場を揺らす。

【Bumpys】のファンだけでなく【Red Rhino】のファンまでもが立ち上がり、会場はこれまでにない熱狂に包まれた。


─────────────────────────────────────


「っっしゃあああああ!!!」


中央の壇上の上、観客の声援の中心で勝利の咆哮が響いた。

VRの装置を外して椅子から立ち上がったのは、銀髪の少年、鬼瓦 銀おにがわら ぎん。今しがた超人的なプレーを披露し【Bumpys】を優勝に導いたginギン本人だ。


「小此木!!」

「!」


パァン!と軽快なハイタッチが響いた。真っ先に銀の近くへと駆け寄った黒髪長身の男は、okonogi小此木こと小此木 庵おこのぎ いおりだ。


「まさかホントに勝っちゃうなんてねえ.......」

「表面上は3対1だったが、実際は五分くらいあったな」

「俺のナイスアシストだったね」


策が上手くはまったと、小此木が悪そうに笑う。

長身で清潔感のある見た目とは裏腹にだまし討ちなんかを得意とする性格だ。


「.......と、そこで微妙なカオしてる秋緋ちゃんもハイタッチ~♪」


小此木が、傍で複雑な顔をする長い黒髪の少女へ手を伸ばす。

【Bumpys】もう一人のメンバーscarletスカーレットことたちばな 秋緋あきひ

彼女がこの瞬間を素直に喜べないでいるのは、この試合で早々に脱落してしまったからだ。


「微妙な顔してません、悔しいだけです!」

「でもほら、勝ったんだからさ?」


ウザ絡みを続ける小此木に、秋緋が鋭い視線を向ける。


「はあ、...........ナイスアシストでした」


不満げだが、小此木のハイタッチに応じる。


「橘ー?」


そしてそれを見ていた銀も、同じように手を伸ばす。

一拍おいて秋緋も振り返り、手を伸ばした。


「───痛って!なにすんだ?!」


すんなり答えるかと思いきや、秋緋はハイタッチに思いっきり力を込めたのだ。

銀は屈みこみ、痛そうに手を抑える。


「あはは.......もうインタビュー始まるよ」


隣で合図があったことを小此木が伝える。

今回のMVP最優秀選手として、銀がインタビューを受けるのだ。


「........ああ、行ってくるわ。橘、後で覚えとけよ」


銀はとぼとぼと呼ばれる方へ歩いて行った。

そして残った秋緋へと、狙いすました様に近づくのは、小此木だった。


「秋緋ちゃん~これ見て」

「.......なんですかこれ、ゲーム?」


小此木が携帯の画面に写したのは『カオスオンライン』というゲームだった。


「これって.....大会の選手がテストサーバーか何かに招待されてた.....」

「そうそう〜カオス社の新作MMOらしいよ〜!これを皆でどうかなーなんて?」


秋緋が眉を顰める。


「......私はやりません。練習があるので」


「あはは、だよね〜」と小此木が愛想笑いで答える。


「────でもさ、これから大会の無い期間オフシーズンだし、チームは関係ない。銀君ともできるんじゃない?」


小此木の言葉に、興味をなくしていた秋緋が反応する。自分の心を読まれている事に苛立ちを覚えるが、その言葉は好奇心をそそられるものだったようだ。特に、今の秋緋にとっては。


「..........それ、銀はやるって言ったんですか?」


あからさまな反応に、小此木は薄笑いを浮かべる。


「まだ誘ってないけど、誘ったらやると思うよ」


秋緋も、それは確かにそうかもしれないと納得したような表情を浮かべる。

肥前銀はプロゲーマー以前に生粋のゲーマーだ。カオス社の新作で、チームメンバーがやると言えばまず間違いなくやるだろう。


「......そうですね」

「インタビューまだ終わらなそうだし、俺らは先に控室戻っとこうか?」


拍手喝采の中、2人は壇上を後にした。

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