第4話 油断
「君、大丈夫?どこか怪我したり、切られてたりしない?」
少女は俺に聞いてくる
「...だ、大丈夫です。切られる寸前、といったところでした」
「よかったー、あの武器で切られるとかなりめんどくさいからさ」
...正直、かなり危なかった。確実に殺されたと思っていた。
危機一髪という言葉はこのときのことを言うのだろうと感じていた。
「...ほんとにありがとうございます」
「全然大丈夫だよー...って言いたいところなんだけど」
少女が視線を仮面の人たちに移した
仮面の人たちは警戒しているのか、闇雲にこっちに迫ってくることはないものの、明らかに少女に対して敵意を抱き、ナイフを構えている。
「先にあっちを処理しないと安心して会話もできないからね」
そう言った彼女の手には剣が握られていた
刀身が淡く白い光を明滅させているその剣を彼女は仮面の人たちに向けた
「少し待っていて、すぐに終わらせるから」
彼女はかけだし、一番近くの仮面の人に肉薄した
走ってきた彼女を迎撃するように仮面の人はナイフを上段から振り下ろす。そのナイフを彼女は受け流すことで相手の体勢が崩れた。カウンターをしようとした彼女にたいし、仮面の仲間の一人が阻止するように右から斬りかかった。
その様子に気づいた彼女は、カウンターをやめ、そのナイフを受け止めた。
受け止めたナイフを跳ね返し、斬りつけることで、一人目を無力化する。
すぐさま彼女は、別の仮面の人に視線を向ける。再びかけだした彼女は、体勢を崩した仮面の人に近づく。体勢を立て直した仮面の人は、迎撃しようとナイフを振りよりも速く、彼女が切り捨てる。二人目が無力化された。
速い、ただそう思った。力強く、それでいてしなやかなその戦いぶりにただ目を奪われていた。
残り一人になった仮面の仲間は、かなり警戒しているのか、全く動こうとしていない。そんな仮面の人に向かって彼女は走り出す。彼女が斬りかかると、仮面の人はそれを容易く受け止めた。受け止められたことに少し目を見開いた彼女であったが、再び攻め始める。
振り下ろし、なぎ払い、斬り上げる。何度も斬り結ぶその情景は、ナイフの黒い光と剣の白い光が残光を残して移動しているため、ひどく鮮やかに見えた。
やがて、決着がつき始める
...ピシィ!
「...!」
ナイフにヒビが入った。
その直後
バキィ!!
ナイフが砕け散った。
「これで...終わり!」
最後の一人に剣を振り下ろした。
3人目が無力化された。
「ふぅ...なんとかなった。正直キツかったなー」
少女は一息ついて、こちらに近づいてきた
「お待たせ、これでもう安心して話せるね」
「...改めてありがとうございました。助かりました」
「全然大丈夫、これも仕事だからねー」
こんな仕事があるのだろうか?と思ってしまった。
刃物を持った人たちと戦うような仕事が存在することも驚いたが、何よりもそんな仕事を同世代に見える少女がやっていることに驚いた。
「...この人たちはどうするんですか?」
「とりあえず回収かな。いろいろ情報聞きたいところだし」
「...死んでないんですか?あんなにバッサリ斬ったのに」
「うん、だって血が出てないでしょ?」
よく見たら、誰一人として血が一滴も出ていなかった
「どういうことですか?」
「...えっと、まぁ、それはいいじゃない。
それより君はなんでこんな場所にいたの?」
「...俺も聞きたいですよ、それ。」
俺は、彼女にここに至るまでの経緯を説明した
「なるほどー、それは運が悪かったね。たまにあるんだよねこういうこと」
どうやらかなり珍しいことのようである
...まぁ、こんなことがかなりの頻度であることはないだろう。というかあってはいけないと感じた。
「まぁ、とりあえず元の場所に帰れるように手伝ってあげる」
「...ありがとうございます」
どうやら、やっと帰れるらしい
今日は明らかに色々ありすぎため、自宅でゆっくりしたいと考えていた
食料品は...後で考えよう
俺の思考は完全に停止した
「さっ、帰ろっか」
「...はい」
だからだろうか
後ろの気配に気づくことができなかったのは
背中に衝撃が走った
少女の方に目を向けると、彼女は目を見開いていた
倒れた先で後ろに目を向けると、最初に吹き飛ばした仮面の人がナイフを振り抜いた姿勢で固まっていた
少女がすぐさま倒すと、こちらに何かを叫びながら近づいてきた
血は...でていない
しかし、血ではない何かが、確かに身体から抜けていくのを感じた
斬られた部分から確かにこぼれていく何かと同時に、身体の力が抜けていくのを感じた
...意識が遠のいていく
...やはり死ぬのだろうか
...死にたくは、ないな
俺は 意識を手放した
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