第3話 恐怖
少女との会話を終えた俺は、再び帰路についた。
辺りはかなり暗くなっており、裏路地に近く街灯が少ないこの道は、少し気味が悪い。そんなことを考えながら少し早足で歩く。
歩きながら、少女に聞かれたことを思い返す。
「君は、目の前の現実が現実であるとどう証明する?」
いまいち言っていることがわからなかった。
今目の前に映っている景色は現実ではないと言っているのだろうか。
現実は現実であり、それ以上でもそれ以下でもないと考えていた俺は、現実の証明などということを考えたことがなかった。そもそも現実を証明する手段自体が全く思いつかなかった。
そのため、考えようにも、理解しようにも、何もかもが足りていないと感じていた。
あるいは...
...ただただ頭が痛くなるような不快感だけを残してしまう結果になった。
そんな考えにふけりながら歩いていると、いつも曲がるはずの角よりも一つ手前の角を曲がっていることに気がついた。
一瞬引き返して、いつもの曲がり角で曲がろうかとも考えたが、考えにふけていた俺は、頭を使い疲れていたこともあり、そのまま進むことにした。それに、どの角を曲がったとしても、自宅の表に出ること自体は変わらないため、大丈夫だと考えていた。
しかし、ここであり得ないことが起きた。
本来自宅の表に抜けるはずであったその道の先は、
見たこともない空き地につながっていた。
来た道以外は高いビルの壁に阻まれており、通ることはできない。それに、自身がさっきまでいた住宅街ではなく、廃ビルのような場所の近くに移動していることもおかしい。
いつの間にいどうした?それとも別の場所に転移でもしたのだろうか?
夢でも見ているのか?
...とりあえずこの場所から移動するしかない
そう考えた俺は、振り返って来た道を戻ろうとした。
その瞬間、俺は、振り返ったことに後悔した
仮面をつけた集団が道を塞ぐように立っていた。
立っていること自体は問題がないが、問題はその手に持っている物であった。
刀身が黒光りしたナイフを持っていたのである。
刀身は長く、黒い光を明滅させていた。
俺は逃げた、来た道以外に道がないことを忘れて。
後ろから迫ってくる足音に近づかれないために、ただ前に走った。
しかし、少し走ったところで壁際にたどり着いてしまう。
一心不乱に壁を叩いた
廃ビルの壁、崩れる可能性を胸に抱いて
叩いて
叩いて
叩いた
しかし、現状が変わることはなく、打ちひしがれるしかなかった
壁を背にするようにズルズルと下に座り込む
仮面をつけた人が近づいてくる
ゆっくり
ゆっくり
獲物を狩るような仕草で
なぜこんなことになった?
いつものように家に帰っていただけなのに
こんなところで死んでしまうのか?
気づけば、目の前まで仮面を付けた人が移動していた。
ナイフを振りかざしている
切られる
そう認識した俺の脳裏では走馬灯が流れていた
流れているのは最近の変わらない日常の場面ばかりで昔のことは少なかった
そんな中で一番鮮明に映ったのはついさっきの出会ったばかりの少女の姿であった
振り下ろされるナイフから目を背けるように縮こまった俺は、
「諦めるのは、まだ早いんじゃない?」
女性の声を聞いた。
「うごっ!?」
悲痛の声を上げた仮面の人は真横に吹き飛び、地面を転がりながら止まった。
他の仮面の人たちは一度距離をとり、仲間を吹き飛ばした存在を警戒する。
その警戒心は、
「やっほ、またあったね」
走馬灯に流れた、出会ったばかりの少女に向けられていた。
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