第2話 遭遇
その日の授業は淡々と進み、気づけば授業はすべて終わり、放課後になっていた。
俺は、放課後に部活動などをやっているわけではないのですぐに帰ることにした。
部活動を行っている生徒たちの声を聞きながら帰路につき始める。
いつものようにまっすぐ帰ろうとしたが、冷蔵庫の中身がほとんどからになっていることを思い出した。
俺の家は、俺以外に誰も住んでいない。両親は顔も覚えておらず、いついなくなったのかも、今生きているのかも、全くわからない。
しかし、帰る家が存在することだけは唯一の救いだと感じている。
顔のわからない両親に心の中で感謝しておく。
俺は、少し遠回りをし買い物を済ませ、再び帰路についた。
今歩いている道は、裏道に近く、人通りも少ない。その上、自宅への近道にもなっているためよく通っていた。
夕日に照らされている道を歩いていると、不意に隣を誰かが通り過ぎたように感じた。
その少女は、夕日で茜色に反射した髪が美しく、思わず見入ってしまった。
そんなきれいな髪の持ち主は、こちらに気づいた様子で、話しかけてきた。
「君、どうかしたの?」
「...いや、この道は、あまり人が通らないから気になって」
さすがに初対面の人に対して、髪がきれい言えるほど肝が据わっていない俺は、それ以外に感じていた疑問を聞いた。
「あー...私も普段はこういう道通らないけど、今日は通らなくちゃ...いや、通った方 がいいって思ってね?」
「...なるほど?」
通った方がいい道などあるのだろうか?と疑問に思ったが、特に聞くようなものでもないため胸の内にしまった。
「君はこの道よく通るの?」
「...たまに、ですかね。そこまで通りませんけど。
まぁ、たまには違う道を通るのもいいかなって。」
「なるほどね...まぁ、そういう日もあるよね。」
そういうと少女は少し考え始めた。
日が沈みかけ、夜に近づいている。
これ以上会話をする必要性がないと感じた俺は、短い返答で終わらせて帰ろうと会釈をしようとした。
「...食料品が傷むといやなのでそろそろ帰りますね。」
「...あっ、ちょっと待って!最後に一つだけ!」
「...何でしょうか?]
呼び止めた彼女は俺にこう聞いてきた
「君は、目の前の現実が現実だと思う?」
言っている意味がわからなかった
「...よくわからないですね。」
「...そっか、まぁ、今はわからなくても大丈夫だよ。」
頭に?が浮かんでいた俺に彼女は、
「またね」
とだけ残して行ってしまった。
何だったのだろうかと考えようとしたが、ふと見上げてみると、かなり空が暗くなっていた。
「...早く帰らないと」
目の前の現実が現実かどうかなど、どんな風に検証するとよいのかがわからない
しかし、その言葉はずっと心の中に残り続けていた
(少女side)
「急に知らない人に話しかけたりするから驚いたよ」
耳に女性の声が響く
「だって今日あの道は危険でしょ?
それなのに歩いてる人がいたら、そりゃほっとけないよ」
少女が答える。
「それに危うく、何でこの道歩いてたのかを答えそうになってたし」
「あっ、あれは危なかっただけで実際にやってはいないから大丈夫!
未遂だから!」
「未遂でも危ないことに変わりはないよ...」
女性の声に呆れが混じる
「でも、彼に何も起きないといいけど...」
「そこは彼次第じゃないかしら。私たちが何かできる範疇じゃないわ」
「...それもそうだね。私は、私のやるべき事に集中するよ」
そう答えた少女は、裏路地に入り、闇夜に溶けていった。
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