第19話 1人目
――日向 龍生――
ククッ…
「まずはお前だ、…………」
俺はそう言って、とある人に電話をかけた。
「任せたからな?」
「フンッ…。任せておきなさい」
※
今日は、早く起きることが出来た。
けれど、いつも早く起きることが出来ないから染み付いた、朝起きてまず初めに顔を洗うというルーティンがあるせいか、僕は今日も気づいた時には洗面所にいた。
あれ?本当に印象変わってるな。
それに、いつもは爆発している髪が、今日は少しマシな気がする。
本当にまたあの美容室に行こう。と、この時強く思った。
僕は、いつもよりも早く起きることが出来たおかげで、早く準備が終わったので、登校する時間がいつも遅いので、今日は早く家を出ることにした。
いつもよりも早い時間なので、少しいつもよりかは、少し涼しく感じる。
あぁ。これからもっと暑くなるのか…。
登下校が、苦しくなるな。
そんな、どうでもいいことを考えていたら気づいた頃には校門の前だった。
あれ?いつもよりも明るい目で周りから見られている。
なぜ?
「(あんなかっこいい人うちの学校にいた?)」
「(私も初めて見た!誰だろう?)」
何か女子達がこちらを見てコソコソしているがなんと言っているかは聞こえなかった。
けれど、まだ少し収まらない冷たい視線では無いようだ。
だったら何話してても関係ないな…。
いつも通り騒がしい教室。だと思ったら、僕が教室に入った瞬間、空気が凍った。
「「「「「「「「………………」」」」」」」」
この凍った空気を破壊するかのように、クラス委員の高橋くんが口を開いた。
「あの…。教室間違えてませんか…?」
………ん?
「僕は、3年2組だけど…」
「えぇ!?…あぁ!転校生か…!」
………ん?
「僕、平野 響だけど………?」
「「「「「「「「……えぇッ!?」」」」」」」」
こっちが、「…え?」だよ。
どうして?
………まさか、髪を切って印象が変わりすぎてみんな分からなかったってことか…?
「平野くんなのか……!?」
「う、うん…?」
言ったよね!?
そこまで見違えたかな?
「すごく変わって正直驚いたよ。けれど、その髪型すごく似合ってるな!こっちの方がかっこいいと思うぞ!」
僕の髪型を褒めてくれた。
似合ってないと思われてなくて良かった…!
「あ、ありがとう…!」
「平野くん!カッコいいね!今度一緒に遊びに行かない?」
「ちょ!ずるい!私も、私も!」
「おい平野!今度俺たちと、隣町に遊びに行かね〜か?」
みんな口々に僕を遊びに誘ってくる。
結局みんなが求めるのは外見……。
けれど、今までこうやってたくさんの人に遊びに誘って貰えたことがなかったからつい先日までは悪口を言われていたのにも関わらず、嬉しいと思う自分がいた。
「えっ……と……」
「おい、みんな!忘れたらダメだろ?俺達は少し前まで平野くんに散々嫌な思いをさせたんだぞ?それなのに、こんなに手のひら返しされたら平野くんも困るだろ!」
高橋くんがみんなを制してこちらを向いた。
「ごめんな…。こいつらもしっかりと反省してるから今のは許してくれないか…?」
「うん。……大丈夫!こんなに話しかけられたことがなかったから少し驚いただけだから…!」
「そうだったのか…。さっきはごめんな。良かったら今度俺達と一緒に遊ばないか…?嫌だったら来なくても大丈夫だから…!」
先程僕を誘ってくれたクラスのムードメーカーという感じの
「うん!ありがとう!今度、一緒に行ってもいいかな……?」
僕がそう言うと、齋藤くんは手を思いっきり握ってきて言った。「もちろん!」と。
これからは、僕も青春していいんだ…。
そう思うと、胸が締め付けられるように痛んだが、僕の手を握る齋藤くんの笑顔を見たらなぜか治まった。
楽しみだな!
──???──
僕の名前は、
僕は今、これからの教員人生を決める重大な選択を余儀なくされてる。
事の始まりは昨日の夜。
あのときは、仕事を終え家に帰るために荷物をまとめていた時だった。
ピコンッ♪
僕の学校用のメールボックスに一件の通知が来た。
確認すると、僕は思わず目を見開いてしまったよ。
メールの内容は『3年2組の平野 響を退学にしろ。出来ないのであれば、今井 創一校長から校長の資格を剥奪する。なお、このことを他者に伝えても校長の資格を剥奪する』との事だった。
これを初めに見た時は中学生が退学なんてありえない。校長の資格を剥奪するだと?僕を舐めないでもらいたい。と、思った。
しかし送り主はまさかの文部科学省だった。
どうして文部科学省が、平野 響くんを退学にさせたいかはすぐに分かった。
それは、文部科学大臣は日向 龍生くんの父親である日向 遥高だからだ。
日向 龍生くんは、平野 響くんへの暴行で、少し前まで少年院にいた。
その事で、日向 龍生くんは自分が悪いのに何も悪くない平野 響くんを恨んでいるのだろう。
日向 龍生くんは、自分の力では無理だからといって自分の父親の権力を使ったのだ。
本当なら、日向 龍生くんを退学にしてやりたいところだけど、絶対に無理だろう。
平野 響くんは絶対に退学にはしない。
けれど、僕がこの学校からいなくなったらこの学校はこれからどうなってしまうのだろうか…。
新しい校長は、文部科学省の息がかかった人ではないだろうか…?僕がいなくなっても他の先生方は、やっていけるだろうか…?
いや、大丈夫だな。
というか、先生方を信じよう。
僕は、32年間の教員人生を思い返した。たくさんの生徒の笑顔が頭に浮かび上がってきた。
僕は先生になれて本当に良かった。
僕は、そう思いながら昨夜送られてきたメールのメールアドレスに向けて一件のメッセージを送信した。
『平野 響は、退学にしません』
僕は、これでいいんだ。
平野 響くん。先生は、いつだって生徒の味方だからね。
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小説更新遅れてすいません!
お詫びとして、土日に新作2つ更新します!
お楽しみに☆
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