第20話 封筒
──日向 龍生──
ククッ…
想像以上に早く消えてくれたな…。
校長…。
俺の思い通りに校長が消えてくれて良かったぜ…。
次はお前だ…。
俺はとある人にLINEを送った。
(5分後)
ピコンッ♪
『任せろ。俺の好きにさせてもらうからな』
本当に金さえあれば何だって出来る。
人生楽勝だぜ〜。
※
昨日の全校集会で、校長先生が辞職するという話を聞いた。
校長先生は、僕の入院している時にもたくさん頑張ってくれた優しい人だ。
それなのになぜ…?
僕の件のせいで校長先生が気に悩んでいたのかな。そうなると本当に悪い事をしたな。
今日おおのしんに聞いてみるとしよう。
そんなことを考えながら通学路を歩いていると、夏のじめじめした風が前の方から吹いてきた。
そろそろ夏休みだな。
この頃色々ありすぎて土日だけじゃ全然休めない。それに、僕は受験生だ。勉強は得意だけどこの頃は自主学習をサボりすぎている。
このままじゃ高校入試に落ちてしまうかもしれないな。
そろそろ自主学習を再開しようかな。
校門が見えてきた。
あれ?おおのしんが校門の前でキョロキョロと回りを見渡している。
どうしたのだろうか。
「おおのしん。どうかしましたか?」
「お!響。俺は響を探してたんだよ」
「え?僕ですか…?用件はなんですか…?」
「一応言っておくが、響がやらかしたとかそういう話ではないから安心しろ」
よかった…。けれど、おおのしんは僕を探していたと言った。
「実はな、今朝俺が職員室に行くと、俺の机の上にこんなものが置いてあったんだよ」
そう言っておおのしんは、1つの封筒を鞄から出し、僕に手渡してきた。
封筒の表には、『大野先生と、平野 響くんへ』と書いてある。
裏には、必ず2人で中を見るとこと書いてある。
すごく重大なことが書かれていそうだ。
ゴクリ…
僕は、無意識のうちに固唾を飲み込んでいた。
「先生。ここじゃ人目に付くので、どこか空き教室にでも行きましょう」
「あぁ。そうだな」
僕達は空き教室に入り、机を縦に2つ並べ、真ん中に先程の封筒を置いた。
先生の額に少し汗が滲んでいるのが見えた。
果たしてこの汗が緊張によるものか夏の暑さによるものかは、僕には分からなかった。
「先生。開けてみてください」
「俺でいい、のか…?」
「はい」
「分かった」
そう言うと、おおのしんは封筒を手に取り丁寧に封筒の端を開け始めた。手が少し震えているように見える。
ビリ、ビリ…と言う音が、静まり返った空き教室に響いている。
おおのしんは、封筒の端の方から白い2枚の紙を取り出した。
僕達は、1枚目と書かれた紙を開き、目で追って読んだ。1枚目の内容はこうだ。
『何も言わずに、勝手にこの学校を立ち去ったことを、今ここで謝らせて欲しい。本当にすまない。僕がこの学校を立ち去った理由は、簡単に言うと脅されたからだ。誰にかと言うと、文部科学大臣-日向 遥高にだ。この事を知っているのは、僕以外だと君たちだけだ。出来れば口外しないで欲しい』
まさかの龍生の父親が絡んでいるだなんて、考えてもいなかった。
しかし、1枚目で辞職の原因が分かった。となると2枚目には何が書かれているんだ!?
おおのしんも同じことを考えていたようで、お互いに顔を見合わせて頷いた。
2枚目を開くと、先程よりもぎっしりと文字が書かれていた。2枚目の内容はこうだ。
『日向 遥高は、ある日メールで平野 響くんを「退学にしろ」と送ってきた。それを断ると、僕が校長をクビになるということも。ここで言っておきたい。響くんこの判断をしたのは僕だ。響くんは決して気に止めないでくれ。それに、僕の教員人生はまだ終わっていない。実は日向 遥高と総裁選でぶつかる、
僕達は、それを読んでからすぐに声を出すことは出来なかった。
校長先生は、校長先生なりに大事な決断をして、辞職したんだ。
しかし、僕の事が関わっていたなんて…。
「響。校長先生も言っている通り、あまり気に止めるなよ」
「はい。分かってます」
気に止めないなんて、僕にできるかな…。
正直今どんな顔をしているかがシンパだが大丈夫…、だろう。
「響。絶対に僕らのせいだって顔に出てるぞ?」
即フラグ回収してしまった。
おおのしんは生徒のことをよく見ている本当にいい先生だな。
「────せん」
「ん?響なんて言った?」
「今のを読んで校長先生の件を気に止めないなんて、僕には出来ません」
「正直響ならそう言うと思った。けれど、校長先生の言ったこと(封筒の中の紙に書かれていたこと)を、思い出せ!俺達が変な動きをすると校長先生がしようとしていることは全て上手くいかなくなる可能性があるんだ。今は苦しいが、耐えるしかないんだ。校長先生は、やる時はやる方だ。今俺達が出来ることは校長先生を信じる事じゃないのか!?」
その言葉は、僕の胸に深く刺さった。
そうだ。そうだよな?僕達は、今校長先生を信じないといけない。
自分を責めるのは、ひと段落ついてからだよな!
「分かりました。今は校長先生を信じます!」
「お?良いじゃねぇか。覚悟を決めたようだな!」
「はい。吹っ切れました」
校長先生。お願いします!
僕は、心の中で校長先生に思いを伝えた。
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