第16話 再会&その後の龍生

 僕と妃菜は、家に帰るために駅まで歩いていた。


 服を選んでいた時は、それどころじゃなかったので何も感じなかったが、歩いていると向かい風が顔にしみる。

 ヒリヒリして痛い。


 龍生…。あんだけ殴ったのだからそれなりの罰は受けて欲しいな。


「お兄ちゃん…。頬、まだ痛い?」

「正直少し痛い……」

「どこかで絆創膏買わない?」

「あ〜。いいか?ちょっとあそこのコンビニで買ってきていいか?」

「いいよ!私も着いて行っていい?」

「もちろん!」


 僕達は今、近くにあったコンビニに入って絆創膏を探していた。


「ん〜、絆創膏‪大きい方がいいかな……?」

 妃菜は、大きい絆創膏か小さい絆創膏、どっちを買うべきかすごく悩んでいる。


 やっぱり妃菜は優しい子だな…。


「あれ?響くんかい!?」

「え…?」


 何か聞いたことがあるような声……。


 僕は、反射的に呼ばれた方へ向くと、そこにはマッスン先生がいた。


「マッスン先生!?」

「あぁ。そうだ!」


 退院した時に、感動の別れみたいなのだったのに、退院してから2週間もかかる前に再会してしまっただと…!?


「2週間ぶりですね…」

「そうたな!2週間だったな…!」


 お互い苦笑を浮かべている。


「ところで響くん…。その顔の傷はなんだい?」

「これは…さっき知り合いに会って駅前でボコスカ殴られました…」

「お、おぅ…!病院には行ったのかい?」

「まだ、ですね……。というか絆創膏だけで大丈夫だと思ってます…!」

「それはダメだよ!誰かからの暴力ならば、病院で診察を受けて、診断書を書いてもらわないといけないよ?それを警察に出せば、捜査が捗るからね」


 なるほど…。診断書というものを書いてもらえば、龍生の罪が重くなる。ということがある訳か…。


「今の時間でも病院って開いてますかね…?」

「任せろ!俺が無茶言って診断する!」

「あ、あはは……」


 俺は苦笑することしか出来なかった。

 けれど、マッスン先生のそういう所は頼りになるな。

 僕も見習わないとだな。


 僕と妃菜は、マッスン先生の車で10分ほど移動して、以前入院していた病院に行った。

(電車だと、30分ほどで隣町に来れるが、車だと道がないので2時間ほどかかる)


 やっぱり2週間じゃ何も変わらないよな。

 僕は、つい2週間前まで入院していた病院を見て思った。


「響くん。少し準備があるからここで待っててくれないか?」

「わかりました」


 僕と妃菜は、待合室で待つことになった。

 人がいないと明るくてもなかなかな雰囲気があってホラー好きとしての心が揺すぶられる。

 一方妃菜は、ホラーが大の苦手なので、周りをキョロキョロして体をふるわせて僕に体を擦り寄せてくる。


 マッスン先生が準備をすると言ってから約5分が経った。


「響くん。入っていいぞ」

「は〜い」


 僕が診察室に入ると、まず初めに骨が折れてないかレントゲンをとった。

 全然痛くないから折れてないと思うけれどな…。マッスン先生ってもしかして心配性?


 レントゲンを終えて、マッスン先生に「ちょっと待ってろ」と言われたので、もう一度待合室で待つことにした。


「さすがに骨は折れてないだろ…」

「お兄ちゃん……本当に痛くないの?」

「あぁ。全然痛くない」

「響くん。レントゲンの結果が出たのだが、頬骨にヒビが入っているよ。しかし、これくらいのものなら、自然治癒で治るよ…!」

「え…!?全然痛くないですよ?」

「そういうものなんだよ。けれど、押すと痛くなると思うから、寝る時にヒビの入っているところが下にならないようにと、顔を殴られないように気おつけておいてくれ」


 まさか、龍生の全然痛くない打撃でも、僕の顔の骨にヒビが入ってしまうなんて…。

 これから牛乳飲んで骨密度を高めないとだな。


「とりあえず外傷は、消毒をして絆創膏を貼るから少し来てくれ」

「わかりました。妃菜、1人で大丈夫か…?」

「え……。やだ…」


 そう言って妃菜は小刻みに首を振っている。


「マッスン先生。妃菜が1人だと怖いらしいので着いてきてもいいですか?」

「いいぞ!」


 それから、マッスン先生は僕の顔の傷口を優しく消毒して、絆創膏を貼ってくれた。


「ありがとうございます」

「あぁ!後は診断書を書くだけだ。少し待っててくれ!」

「はい。ありがとうございます」


「ほら……。頬骨にヒビが入ってるじゃん」


 そう言って妃菜は、僕にジト目を向けてくる。


「痛くなかったから、絶対大丈夫だと思ったんだけどな……」


 そう言って僕は、苦笑をうかべた。


「けれど、手術をしないといけなくならなくて良かったね!」

「そう、だな!」


「書けたぞ!これを警察に持っていくと捜査が捗るだろう。けれど、ここからだと少し歩かないと行けないからな、ちょっと待ってろ俺が連れていくよ」

「いえ!診察もしてもらったので、ここからは自分で頑張りますので大丈夫です!」

「子供が遠慮なんかしなくていいんだよ!」


 そう言って、マッスン先生はサムズアップをした。

 マッスン先生は、せっかく優しくしてくれたのに、ここで断ったらかえって失礼か…。


「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて連れて行って貰えませんか?」

「おう!任せろ!でも、電気などを消さないといけないから5分程待っててくれ!」

「はい!わかりました!」


 マッスン先生は、急いで電気などを消してきてくれて5分も経たないうちに戻ってきてくれた。


「よし。それじゃあ警察に診断書を持っていくか!」

「はい!」



 ──日向 龍生──


 くそっ…!

 俺をパトカーに乗せるなんて…。この警察絶にクビにしてやる……!


 俺は今パトカーに乗せられている。

 理由は、平野 響に対する暴行。


 でも、俺が捕まっても、お父さんは何があっても俺を少年院から出すだろう……。


 今から取り調べか…。だるいな。

 まぁ。俺の時間を奪うってことは警察官をクビになる覚悟があるってことか…。

 やっぱり俺は人生勝ち組だぜ。


 取り調べは、同じことを何度も聞かれるという本当にクソみたいな時間だった。

 何回聞けば気が済むんだよ。

 めんどくせぇ…!


 けれど、それもそろそろ終わりそうだな。

 俺にとってはどんな罪に問われようと関係ねぇぜ。



 俺は少年院に1週間収容されるらしい。

 そして、お父さんに連絡するから電話番号を教えろと言ってきた。


 馬鹿だな…。


 お父さんにこの事が伝われば俺の勝ちだぜ。


 俺は喜んでお父さんの電話番号を警察のじじぃに伝えた。


 クッ…

 ニヤけが止まらねぇぜ。


 警察のじじぃは俺のお父さんと話してから俺に言った。


「君のお父さんは、自業自得だ自分の罪は自分で償えと言ってくれとだけ言って電話を切ったよ」

「は?」

「だから、君のお父さんは────────」


 警察のじじぃの話が頭に入ってこない。

 俺のお父さんは、俺を見捨てたのか?

 いや、きっと何か策があるはずだ。

 きっと、1週間以内にお父さんは俺を助けに来てくれるはずだ…。そうだよな?お父さん……。



────────

今日は、2話更新します〜。

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