第15話 嵐のようなデート
「あんたはどれだけ浮気したら気が済むの?少しは浮気された人の気持ちを考えたらどうですか?」
「はぁ?どういうことよ!というかあんた誰よ!」
日向 龍生の今の彼女が、妃菜の言葉にのってきた。
「わ、私は…!正直その男と関係は一切ない!けれど、その男が何度も浮気をして、沢山の人が傷ついているのは知ってる!」
「龍生!今の話ほんとなの!?」
日向 龍生の彼女が日向 龍生に問い詰めた。
「な、何言ってんだコイツ。おい
「………」
花恋と呼ばれた子は、黙り込んでしまった。
「そうか、俺の事を信じれないならもういい。別れよう」
「え…!?う、うん……。分かった……」
花恋という子は、以外にもあっさりと日向 龍生との別れを受け入れた。
「よし。これでお前はもう赤の他人だ。俺を信じないとどうなるか教えてやるよ!」
そう言って日向 龍生は右腕を振り上げて、花恋という子に襲いかかった。
まずい…!!
僕のいるところからじゃ止めに入れない…!
パァン!
鋭い音が駅前に響いた。
………!?
どうして………?
殴られていたのは、花恋という子。
ではなく、その子を守るようにして2人の間に入った妃菜だった。
「妃菜…!!」
僕は、妃菜のところに駆け寄って、妃菜の顔を確認した。
幸いにも、唇は切れているけれど傷が残るようなものではなかった。
「おい龍生!お前、女の子の顔に手を上げるなんて最低だな…!」
そう言って僕は、龍生の目を鋭く睨んだ。
「は?何言ってんだ!?俺に逆らうからこうなるんだよ。俺のお父さんは文部科学大臣だぞ?そして、次期首相だ。そんな俺にお前も逆らうか?」
そう言って龍生は、フンッと鼻で笑っている。
ちく…しょう………!
ここで逆らったら、きっと妃菜や家族にも矛先が向いてしまう…。
「お、俺はお前のように簡単に暴力を振るうようなクズじゃない…!」
「チッ!ふざけんじゃねぇ!」
そう言って龍生は俺の顔や体、関係なく何度も殴り続けた。
「ぐっ………」
僕が殴られ始めて、約5分が経った。
「くそっ!くそっ!どうして、お前は立ち上がるんだよ!」
僕は、何度龍生に殴られても、立ち上がり続けた。
駅前だったので、時間が経てば経つほどに人が集まりだした。
龍生は僕を殴ることに夢中で、周りに人が集まっていることに気づいていないようだ。
龍生…。僕が龍生に手を出しても、僕は暴行罪で刑務所送りだ。
しかし、逆に龍生が僕に手を出したら暴行罪または致傷罪で刑務所送りだろう。
僕は、龍生のことだから軽く挑発すると、殴りかかってくると思い、軽く挑発してやった。
龍生は、僕の想像通りに動いてくれた。
それに、今気づいたのだが、周りに集まった人の中にはスマホをこちらに向けている人もいる。
これで警察に、僕は手を出していないということが証明できるな。
「おい!君たち!駅前で何事だ!?」
警察の来るタイミング、少し遅いがまぁいいだろう。
龍生は、警察の声を聞いてやっと、周りに人が集まっていることに気づいたようで、驚いた顔をしている。
正直その時の龍生の顔は見ものだった。
一方妃菜は、龍生が僕から離れた途端、僕のところに寄ってきて綺麗なハンカチで僕の顔に着いていた血を拭き取ってくれた。
僕が血を流してるのは自業自得なのに……。
「妃菜。ごめんな…」
「どうしてお兄ちゃんが謝るのよ…!最初に喧嘩を売ったのは私なのに……」
妃菜は泣き出しそうな顔をしている。
「泣いてるよりも笑顔でいた方が僕は嬉しいよ」
そう言って、僕は妃菜の頭を撫でてやった。
妃菜は最初は驚いていたが、すぐに僕の手を受けいれ、ようやく落ち着いたような顔をしていた。
「あの……。君があの子に殴られていた子だね?」
先程、僕が龍生に殴られている時に止めに入って来てくれた警察のおじさんが、僕達の方へ走ってきた。
「はい。まぁ、顔を見たらわかると思いますけれど……」
そう言って僕は苦笑していると、つられて警察のおじさんも苦笑した。
「さっきの暴力を振るった子と、君は知り合いかい?」
「はい。知ってる人ですね…」
「そうかい。詳しい話を聞きたいのだけど少し着いてきてもらえないかな?」
「はい。わかりました」
僕と妃菜は、警察のおじさんが運転するパトカーに乗り、近くの交番で何があったのかを丁寧に伝えた。
人生初のパトカーは、少し加齢臭臭いと思ったのは、ここだけの話。
「お疲れ様。話を聞かせてくれてありがとう。君たちに暴力を振るった子は、話を聞いた限りただじゃすまないと思うから安心してね」
「「ありがとうございます」」
僕と妃菜は、小1時間ほど聞かれたことに答えるという作業をしていたが、やっと解放される。
同じ事を、何度も聞かれて結構疲れた。
「もう昼になっちまったな……」
僕達は交番を出て、たくさんの道が立ち並ぶ大通りの脇を2人歩いていた。
「そうだね…。なにか食べに行こっか」
「わかった。あ!あの店行かない?」
そう言って僕は、目に入った『ふわっふわのパンケーキの店』という店を指差した。
確か妃菜は、甘いものが大好きだったはず…。
「お兄ちゃん。わかってるね~!早く行こうよ!!」
甘いもの効果、凄すぎる……。食べる前から効果が出ているだと!?
けれど、妃菜の元気が戻ってよかった。
「お兄ちゃん?早く行かないと店の中いっぱいになっちゃうよ?」
妃菜は、僕の手を引いて走りだした。
パンケーキは、僕の想像を遥かに越えるほどのふわふわなものだった。
妃菜は、頼んだパンケーキが届くのを待っている間から足をバタバタさせて、すごく楽しみそうにしていた。
僕は妃菜のそばで、そんな妃菜の姿を写真に納めたが、妃菜はパンケーキが楽しみで仕方がないようで、少しも気づいていなかった。
僕達はパンケーキを食べ終えたら、僕の服を買うために大きなアウトレットに来ていた。
うわ…。人が多すぎる。
田舎出身、田舎育ちには、少しきついかもしれない。
妃菜も僕と同じことを思っていると思い、妃菜の方をチラッと見てみると、目を輝かせていろいろな店を眺めていた。
「お兄ちゃん早く行くよ!」
「お、おぅ……」
それから僕は記憶がない。
1つ覚えているとすれば、たくさんの店に行って、いろいろな服を着て、すごく疲れたということ。
気づいた頃には、広い公園のベンチで妃菜と休んでいた。
「お兄ちゃ〜ん?大丈夫ですか〜?」
「あぁ。大丈夫だ」
「お兄ちゃん途中から死んだ魚の目をしてたよ?」
「マジかよ……」
「マジマジ!」
妃菜は、その時の僕の顔を思い出してか、笑いそうになっていた。
「疲れたけど楽しかったなぁ…」
龍生に殴られるのから始まって、交番で事情聴取。それから、凄く美味しいパンケーキを食べて、たくさん服を着た。
(結局買ったのは、上下2着ずつ)
嵐のようなデートだったけれどなかなか楽しかったな。
「でしょ〜?お兄ちゃんもたまには外に出ないといけないよ〜?」
「分かったよ。たまには出るよ…!」
「お、お兄ちゃん…!また、一緒にデート来ようね…?」
妃菜は、恥ずかしそうに顔を赤くしているが、目は力強く、僕の目を真っ直ぐ見ていた。
「うん!絶対来よう!」
妃菜は嬉しそうにはにかんだ。
やっぱり妃菜には、泣いている顔よりも、笑顔の方が断然お似合いだなと思った。
「次は〜♪︎どこに行こっかな〜♪︎」
妃菜は、そんなことを口ずさみならが立ち上がった。
そして、僕に右手を出して言った。
「ずっと一緒にいようね!」
と。
それに対しての僕の答えは1つしかない。
「もちろん!」
そう言って、僕は妃菜の手を取った。
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日記書き始めます。
良かったら見てください!
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