第13話 形勢逆転
──日向 龍生──
くそっ…。浮気がバレたから、明日はヤれないじゃないかよ。
にしても、本当に冬美は馬鹿だなぁ?
軽い女は扱いやすい。
それに、インスタの裏垢で投稿した、平野 響の合成写真も、いい感じで伸びている。
なんていい気分だ!やはり世界は俺を中心に回っているんだ!
※
(月曜日)
あぁ。また月曜日か。
また色々言われるのか…。
どうにかして日向 龍生の弱みを握れないかな?
あぁ、ダメだ。
朝からこんなことを考えていたら夜には、僕消滅してない?
今は考えないようにしよう。
今日は、久しぶりに早起きをしたので、なにかいつもとは違うことをしようと思う。
とりあえず、いつもは見ないニュースをつけた。
ん〜、面白いニュースないかな…?
なんとなくチャンネルを変えていると、聞いたことのある名前が聞こえてきた。
『文部科学大臣の
………日向 遥高!?
確か、日向 龍生のお父さんだよな!?
どうしてこんな時に…。
日向 龍生の学校での人気度がまた上がってしまう…。
困ったな……。
僕は、このニュースを見ていると、また嫌な方向に考えてしまいそうだったので、テレビを消した。
ニュースを見ていたらいつも起きる時間になっていた。
あれ?いつも早起きの妃菜が、起きてこない?
僕は、少し心配になったので、妃菜の様子を見に行くことにした。
コン、コン、コン!
「………」
反応無しと。
寝ているのかな?
「入るからな」
僕は、一応そう言って妃菜部屋に入った。
何度か入ったことがあるけれど、改めて見ると妃菜の部屋は『The女子の部屋』って感じだな。
妃菜は、ぐっすり寝ていた。
けれど、起こさないと妃菜は遅刻してしまう。
「お兄…ちゃん……」
僕が妃菜の肩を揺らしてやると、妃菜は起きる気配もなく、寝たまま僕の腕に抱きついてきた。
「おい…。妃菜?遅刻するぞ?」
「………」
全く起きる気配がない。
どうしよう…。
そうだ!体を起こしてあげればいいのか!
僕は、妃菜の触ってはいけないところを触ってしまわないように、慎重に妃菜の体を起こそうとした。
しかし────
「お兄ちゃん食らえ!」
妃菜は、寝ている振りをしていたのか、夏用の薄地の掛け布団で、僕を拘束してきた。
「ひ、妃菜!?…先週の仕返しか!?」
「ふふん!お兄ちゃん、油断したらだめだよ?さてと、何をしてやろうかな?」
「ちょっと待て!時間を見ろ。急がないと遅刻するぞ!?」
「え?昨日も言ったけれど、私今日開校記念日で学校休みだよ?」
「あ…。そういえば昨日言っていたかも……」
「てことでお兄ちゃん。何をしてやろうかな?」
「僕が遅刻する…!や、やめろ……。イヤァァァァ!!」
「はぁ、はぁ…。妃菜。覚えてろよ?」
僕は、3分間くすぐられ続けた。
あまりにもくすぐったかったので、少し変な声も出てしまった。
なんて恥ずかしい…。
「ん?楽しみにしてるね!」
どうしてだよ…!普通、嫌がるだろ…!
けれどまぁ。頭の中にあった嫌な考えが全て吹き飛んだ気がした。
今日も頑張るか!
「やべぇ!遅刻する…!」
僕は、いつもより家を出た時間が遅く、いつも通り歩いて登校すると遅刻すると思ったので、走って登校している。
しかし、退院してすぐで、体力がまだ完全には戻っていないので、全力でははしらないようにしている。
校門が見えてきた!
時間は、まだ大丈夫だ。良かった…。
「はぁ、はぁ…」
なんとか遅刻は免れたが、少し運動した方がいいな。
周りからは、相変わらず冷たい目で見られているけれど、今日は妃菜のおかげでなんとも思わない。
ほんと、妃菜には助けられてばかりだな…。
あ…!そういえば、妃菜の願いを1つ叶えないとだな。
今日帰ったら何がいいか聞いてみよう。
「響。おはよう!」
おおのしんが、こちらに手を振りながら近づいてくる。
「おはようございます」
「響。この頃何か言われたりはしてないか?」
「この頃…、言われてる。というか合成写真のようなものをばらまかれてみんなに勘違いされてます」
以前の僕なら絶対に言わなかっただろう。
けれど先生達は、僕が入院している時に、僕のために頑張ってくれていた。
少しは、信用してもいいだろう。
「そうか…。その写真って今あるか?」
写真?僕は、見せてもらっただけだから持ってないな。
「すいません。僕は、森くんに広められていると教えてもらっただけなので持っていません…」
「そうか…。ばらまかれているということはSNSとかか?」
「そうですね…。SNSで広められています」
「なるほど…。そうなると肖像権侵害で弁護士に相談してみると、どうにかなるかもしれないな…」
「弁護士、ですか…」
「響。安心しろ!弁護士への相談は今はネットで無料で出来たりするんだ!もし、心配なら俺も着いていてやるからな…?」
おおのしん…。なんていい人なんだ…。
「ありがとうございます。考えておきます…」
「あぁ。わかった!」
僕は、おおのしんと別れてから教室に入った。
あれ?先週よりも冷たい目で見てくる人が減っている…?
気のせいかな?
けれど、みんな仲のいいグループで固まってコソコソ話している。
あっ。目が合ってしまった。
最悪だ。どうせ嫌がられるんだ…。
あれ?僕と目が合ったクラス委員の、
高橋 碧斗は、僕の目の前で立ち止まり、大きな声で言った。
「今まで本当にすまなかった!平野くん、君は本当は菊池さんと付き合っていたんだろ?」
なんで知っているんだ!?このことをこの学校で知っているのは僕と、…………冬美?
「どうしてそれを……?」
「実は菊池さんが今日、学校に来てから仲のいい子達に、「元々響と付き合っていたけれど、浮気をしてしまった。けれど、龍生くんも浮気をしていて、私がした事の重大さに気がついた。自分勝手なのは、分かっているけれど響を助けて欲しい」って言ったらしいんだ」
冬美も浮気された…?
日向 龍生……。お前は人の心ってものを持っていないのか?
して、いいことと悪いことの見境が無いのか?
それにしても、冬美は浮気のことを悪いと思っているのか…。
少しは見直した。
けれど、浮気されたと言ったら冬美も日向 龍生から嫌がらせを受けるのでは?
大丈夫かな……?
一応そこも警戒しておこう。
「そういうことか…。そうだね。付き合っていたのは本当だよ…」
「そうか。浮気された上に、周りから悪口を言われてたんだよな…。本当に悪かった!俺達は取り返しのつかないことをしたことは分かっている…!しかし、俺達に少しでも償う機会を作ってくれないか?虫のいい話だとわかっている。けれど…俺達は平野くんに散々嫌な思いをさせてしまった。だからこうするしかないんだ…!」
その言葉につられるように、他のクラスメイトが僕の周りに集まってきた。
そして、────
「ごめん平野くん…。今更謝ったって何も変わらないかもしれない。けれど、私達に出来ることがあればなんでも言ってね…!」
「僕も、ごめん。みんなが言っていて僕も乗っかっちゃった」
などと、みんな口々に僕に謝ってくれた。
しかし、完全に許す気はない。
正直みんなが謝ってくれている時も、僕の気持ちを知った気になってなどと思ってしまった。
けれど、みんなはちゃんと反省しているのだろう…。
それならば、僕はみんなに協力してもらって、日向 龍生にこれ以上被害者を出させないためにも日向 龍生を止めてやる。
「……信じるか信じないかは、みんな次第だけど、日向 龍生は、僕以外の人にも今まで散々嫌な思いをさせてきたんだ。これ以上僕みたいな被害者を出さないために、僕に協力してくれないか…?」
「「「「「………」」」」」
教室が
しかし、その静寂を破るかのように高橋 碧斗が手を挙げた。
「……俺は協力する!」
「私も…!」
「僕も…!」
「俺も協力する…!」
高橋 碧斗に続くように、沢山の人が協力の意向を見せた。
これなら、日向 龍生を止めることが出来るかもしれない…!
「みんな…!ありがとう……!」
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