第12話 浮気の発覚
──菊池 冬美──(土曜日)
あぁ。明日が待ち遠しい…。
私は今、明日龍生くんの家に着ていく服を選ぶために、隣町のアウトレットに来ている。
龍生くんは、どんな服が好きかしら?
可愛い服を着て、明日は沢山ドキドキさせるんだから!
何を買うか悩んだ末、私は最初に丈の短いスカートを買いに行くことにした。
えっ…………。
ここにいるはずのない人がいた。
しかも、他の女の子と…。
ただのそっくりさん?いや違う。
私のあげた少しチャラいネックレスをしている。
あの人は
どうして…?
もう私はいらないの…?
違う…!違う!
龍生くんは、私の事が大好きなの!
おかしい…!きっとあの女の子は、たまたま会っただけの知り合いだよ…。
えっ…。
龍生くんがあの子の手を取って、エスコートしだした。
どうして…?嘘だよ…ね……?
私は、龍生くんとあの子の関係を見せつけられても信じたくなかったので、少しだけ
龍生くん達は、私が尾行をしてすぐに、コンビニに入って行った。
コンビニは狭いから、中まで尾行したら流石にバレてしまう。
仕方がないので、2人が出てくるまで店の前で待っておくことにした。
「う〜ん…」
あの女の子副会長をしている2年生の
けれど、倉本 咲には彼氏がいるって噂があるからきっと、気のせいだよね…。
あっ…!
2人がコンビニから出てきた。
何を買ったのかは分からないが袋を持って出てきた。
しかも、まだ手を繋いでいる。
「何よ、あれ…」
私はそれからも尾行を続けた。
2人は駅に入っていった。
どうやら帰るようだ。
どうしよう…。服を買いに来たけれど、結局なにも買っていない。
けれど、あの2人の事が気になって、服を買う余裕もない。
……よし。ついていこう。
私は、スマホを改札にかざして、2人を追いかけた。
私は2人に存在がバレないように、大きな柱の陰に隠れて2人の話を盗み聞きしていた。
「龍生くん。今から楽しみ♡」
「俺もだよ。────」
龍生くんがあの子の名前を言ったのに、ホームに電車が入ってきたせいで聴き逃してしまった。
けれど、このまま追いかけて2人が別れたら龍生くんに聞けばいい…。
2人は、遠くで横に座っているのが見える。
やめてよ…。そこに座っていいのは私だけなのに…。
電車は発車し、30分ほど経って2人は席を立った。
時計を見た。14:25
別れるには少し早い時間だけど、私からしたら、早く龍生くんにあの子との関係を聞きたいので早く別れて欲しい。
あれ…?
前に龍生くんの家に行った時は、彼の家はこっちじゃなかったはず…。
龍生くんは、彼の家のある方向と逆の向きに、あの子と歩いていく。
もちろん手は繋いでいる。
3分ほど歩いて、2人は立ち止まった。
もしかして気づかれた…?
いいや、違う。
2人は道沿いの綺麗な家に入って行った。
恐らくあの子の家。
私は無意識のうちにスマホを取りだして、家に入っていく2人の様子を撮影していた。
カチャッ…!
2人が家に入ってすぐに、鍵の閉まる音が聞こえた。
私は家の中にいる2人に気づかれないように、あの子の家の標識を見た。
『倉本』
………どういうこと?
倉本って子はうちの学校には1人しかいない。
そして、ここは私が通っている中学校区だから、あの子は私と同じ中学校に通っている。
ということは……。
倉本 咲…?
けれど、倉本 咲には彼氏がいるんでしょ?
浮気をしてるってこと…?浮気をするなんて最低ね。
いや…。私が言えない。
響…。
私は、2ヶ月前まで付き合っていた元彼の顔を思い浮かべた。
響は、私がわがままを言っても、いつも嫌な顔1つ見せずに私のわがままを聞いてくれた。
そのせいで周りからも、悪口を言われていた。
そうだ。全部私のせい…。
響は1ヶ月前に、悪口が原因(恐らく)で自殺を試みた。
けれどその悪口は、元はと言うと私のせい。
私がわがままを言わなければ、響は悪口を言われなかった。
私が浮気をしなかったら、響は自殺を試みることはなかった。
響が苦しんでいるのは全部全部私の…せい…。
「うっ…」
私は急な吐き気に襲われた。
私が苦しい時は、響はいつも優しい言葉をかけてくれた。
けれど、龍生くんはどうだ?
家に行くと、いつも私の体をベタベタ触って、すぐにキスやハグを求めてくる。
……結局龍生くんは、体目当てで私と付き合っているんだ。
涙が絶えず出てくる。
気持ち悪い。
私は、必死に声を殺して倉本 咲の家を後にした。
私の家までそれほど距離はなかったが、あまりにも苦しくて、本当に死ぬかと思った。
私が家に帰ると、お母さんが「おかえり」と、リビングの方から声をかけてくれたけれど、私はそれを無視して、自室こもった。
辛いことがあっても、話を聞いてくれる人はもういない。
というか、私がその関係を壊した。
「響…ごめんなさい…。私のせいで……」
私は本当にクズだ。
響は、私のことをいつも大事にしてくれていた。
私は、響が私に告白してくれたよりも、もっと前から響のことが好きだった。
それなのに…。私は龍生くんの優しい言葉に騙されて、正しい道を踏み外してしまった。
私に、龍生くんと一緒にいる資格もない。
………今すぐ別れたい。
プルルルル、プルルルル♪
突如、スマホが鳴った。
画面を見てみると、龍生くんからだった。
私は恐る恐る通話に応答すると、息を切らした龍生くんが出てきた。
「龍生くん…。どうして息を切らしているの?」
「あぁ、これか?それは今まで部活だったからだ」
部活?ふざけないでよ。後輩と、隣町でデートをしたあげく、家であんなことをしたんでしょ?
「龍生くん。これは何?」
そう言って私は、龍生くんに先程無意識に撮った写真を送った。
「龍生くんだよね?」
「ふ、冬美。この写真どうした?」
「DMで送られてきた」
私はあえて嘘をついた。
「こ、これは冬美と付き合う前の写真だよ…!」
「龍生くん。本当は私見つけて今日撮った写真だよ…。龍生くん、本当は浮気をしてるんでしょ?」
「フッ…」
龍生くんから、笑っているような声が聞こえてきたのは気のせいだろうか…?
「そうだよ…!俺は、咲と付き合っているよ!そして、咲は俺達が付き合っていることも知っている」
「そ、そんな…」
「一応言っておくが、俺はお前のことを好きだと思ったことなんかないからな?俺は、平野 響に復讐をするためにお前と付き合ったんだよ。しかし、今日バレなかったら明日一緒に出来たのになぁ?」
その言葉を聞いた時、私は反射的に通話を切っていた。
今日、浮気に気づかなかったらと思うと、背筋が寒くなる。
それと同時に、怒りが込み上げてきた。
龍生くんは、響に復讐をするために私と付き合った?
ふざけないでよ!これ以上響に嫌な思いをさせる訳にはいかない。
私はもうクズ女。今更響に好きになってもらおうなんて思わない。
しかし、私は影で響を守ることはできる。
もう、龍生くんの思い通りにはさせない。
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