第9話 退院
僕は、約1ヶ月間横になっていたので、リハビリは簡単なものから始まった。
やはり、体力は凄く減っている。
入院する前は簡単にできたことが全く出来ない。
しかし、僕はこんな所で諦めたりはしない。
僕は、妃菜と帰ったらなんでもお願いを聞くと約束をした。だから、なんとしてでもリハビリを頑張る!
(リハビリが始まって1週間が経った)
毎日、体を痛めない程度に本気で頑張っていたからか、走ることは難しいが歩くことは出来るようになった。
そして、軽いものなら持ち上げれるようにもなった。
主治医のマッスン先生は、このまま行けば今週中に退院できると言ってくれた。
この頃、妃菜のテスト勉強が忙しいらしく、家族と会うことが出来ていない。
「早くみんなに会いたいな…」
はっ…!口よりも体を動かさないと!
リハビリで教えて貰った体操を、少ししようかな。
(2日後)
「響くん。おめでとう!君は明日には退院出来るぞ!」
そう言って、マッスン先生は涙を流しながら僕の頭を優しく撫でてくれた。
「マッスン先生…。恥ずかしい…」
恥ずかしさが勝って、僕もマッスン先生のように涙を流すことは出来なかった。
けれど、明日でマッスン先生と、会えなくなってしまうのか…。
何か、お礼をしたいな。
(1日後)
お父さん達が迎えに来るのは、11時頃。
今は、8:56 約2時間程ある。
僕は、マッスン先生にどうやってお礼をしようかと思い、『ネットで思いを伝えるのに1番いい物』と、調べてみたところ、手紙が1番人気が高かったので、僕は今売店に手紙を書くための
僕が、この病院に来てすぐは、体を起こすことすら出来なかったのにな……。今はもう、1人で売店に来ることすら出来ている。
僕は本当に、マッスン先生に感謝しないといけないことが沢山あるな。と思った。
僕は、売店で便箋とシャープペンシルを買うと、急いで病室に戻った。
そして、僕は便箋に、病院で思った事や、マッスン先生への感謝を一切嘘をつかずに書いた。
死のうとしていた僕が、こうやって早く帰るためにリハビリを頑張ったのは、家族や、僕の為に動いてくれている学校の先生のおかげもある(妃菜から聞いた)。
けれど、マッスン先生の優しさは僕の背中を大きく押してくれた。
そう思うと、僕は手紙を書いている時に、何度も涙を流した。
まだまだ書きたいことがあったが、買ってきた便箋を全て使い切ってしまったので、ここで終わることにした。
「後は口で伝えよう」
僕は、便箋をたまたま部屋にあった封筒に入れて、大きく『マッスン先生へ』と、書いた。
カッ、カッ、カッ…!
ガララララ!
「お兄ちゃん迎えに来たよ!」
そう言って妃菜は、僕に飛びついてきた。
僕が、入院する前よりも妃菜が甘えん坊になっているのは気のせいだろうか…。
妃菜に遅れて、お父さんと、お母さんも来た。
「響。荷物は整えてあるか?」
「あぁ。バッチリだ!」
そう言って僕は、立ち上がった。
荷物の入ったスーツケースをお父さんに持たせた。
僕は、病室を出る時に部屋に向かって深く礼をしてから出た。
退院の手続きはもう済ませてあるが、僕達はナースセンターに来ていた。
そこで僕は、マッスン先生を呼んでくれと看護師さんに頼んだ。
マッスン先生は、呼ばれたらすぐに、スキップをしながらやってきた。
「響くん。退院おめでとう。今まで頑張った君にこれをあげよう」
そう言って、マッスン先生は、ロケットペンダントをくれた。
中を開いてみると、そこにはリハビリが終わった時に撮った、マッスン先生とのツーショットが入っていた。
「マッスン先生…。今までありがとうございました!……マッスン先生!手紙を書きました。この手紙を読んで、僕の事を思い出してください!」
そう言って、僕は先程書いた手紙の入った封筒を、マッスン先生に渡した。
マッスン先生は、手紙の入った封筒を我が子のように胸に抱き、僕に言った。
「響くん。もう飛び降りるなよ。また響くんと会いたいが、それは病院でじゃない。いつか、病院の外で会おう!」
そう言って、マッスン先生は右手を出てきた。
「分かってますよ!また会いましょう!」
そう言って僕は、マッスン先生の手を取った。
マッスン先生は、僕達が病院から出てから見えなくなるまで手を振ってくれた。
いつかまた、マッスン先生に会えたらいいな。
僕は、久しぶりに車に乗ったが幸いにも車酔いに悩まされることは無かった。
お父さんと、お母さんは、「せっかく都会に来たから」と言って、アウトレットに入って行った。
僕は、あまり体を動かせないから待ってると言うと、妃菜も待ってると言い出したので、2人で車の中で待つことにした。
それから僕達は他愛もない話をしながら、ゆっくりと時間を過ごした。
ん…?妃菜が、さっきから僕の顔を見てニコニコしている。
気になった僕は、妃菜に聞いた。
「妃菜?どうかしたか?」
「いいや〜!お兄ちゃんが退院出来て良かったな〜って、思ってね」
「そっか、ありがとな」
そう言って妃菜の頭を撫でてやると、妃菜は嬉しそうに僕の肩にもたれかかってきた。
「妃菜?」
「……」
反応が無い、妃菜が肩にもたれかかっていて体を動かすことが出来ないので、首だけを動かして、妃菜の方を見てみると、スヤスヤと眠っていた。
「妃菜。ただいま」
僕は、眠っている妃菜に向かってそう言って、お父さん達の帰りを待った。
お父さん達は、車に戻って来ると僕の肩にもたれかかって寝ている妃菜を見て「仲が良くて何よりだ」と言って笑っていた。
少し恥ずかしかったが、それと同時に嬉しく思えた。
僕も疲れていたので気がついた頃には、僕も眠っていた。
気がついた頃には家の前だった。
「ただいま」
僕がそう言うと、お父さんと、お母さんと、妃菜は、笑顔で
「「「おかえり!」」」
と言ってくれた。
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