第8話 そして、彼らは動き出した(後編)
──大野 真──(響が飛び降りた1日後)
俺は今、会議室に、俺と、校長先生と、教頭先生の、3人でいる。
「なるほど。その男子生徒が言っていた事は確かなんだね?大野先生」
と、校長先生は優しい口調で聞いてくる。
けれど俺には分かる。校長先生は今、とても怒っている。
いつもよりも、顔が赤くなっている。
呼吸が少し荒い。
校長先生も、響の事を心配している。
本当に、校長先生と、教頭先生が、味方に着いてくれて良かったと思う。
「はい。その通りです」
「僕は、他の先生達にも何か聞いてないか聞いてみるよ。大野先生は、いじめについてもう少し生徒達に聞いてくれないかい?いじめは、立派な犯罪だ。犯人を炙り出して罪を償わせる」
「
俺のイメージの日本の校長先生は、学校の評判を1番に考え、生徒の事はその後。という感じだ。
だから、校長先生が警察沙汰になる覚悟でいることがとてもびっくりした。
「大野先生。君は何も悪くない。悪いのは、響をいじめた人と、学校長である私だけだ。響くんの、長いこれからの未来を守るためなら、私は辞職する覚悟でいるよ。だから、警察沙汰になってもしょうがないと思っているよ」
と、校長先生が。
「そうだよ。大野先生。僕達は、生徒の未来を作ったり守る仕事をしているんだ。だから、生徒の未来を守るための犠牲が自分達だけなら、僕達は喜んで犠牲になるよ」
と、教頭先生が言った。
俺の胸にはその2人の言葉が凄く響いた。
「分かりました。なんとしてでも犯人を見つけ出します。校長先生、教頭先生、響の件で力を貸していただき、ありがとうございます!」
俺はそう言って、深く頭を下げた。
すると、教頭先生が俺の方を見て言った。
「大野先生。お礼を言うのは、響くんの件が収まってからですよ」
「はい。分かりました!」
「では、響の親御さんに今わかっていることを伝えに行こうか」
と、校長先生が言った。
「「分かりました」」
時刻は、18:37
俺と、校長先生と、教頭先生は今、響の家の前にいる。
家が、明るいから誰かいるだろう…。
校長先生が響の家のインターフォンを押してくれた。
ピンポーンッ♪
すると、家の中から足音が聞こえてきた。
ガチャ!
なんと、中から出てきたのは中学2年生ぐらいの女の子だった。
響に妹なんていたっけな?
なんて思っていると、校長先生が女の子に聞いてくれた。
「僕達は、響くんの学校の先生だ。親御さんはいないかい?」
「すいません。お父さんは今、お兄ちゃんの入院している病院にいて、お母さんは、今仕事中で誰もいないです。要件はなんですか?お母さんに伝えておきますけれど…」
「そうか…。お母さんは、いつ家にいる時って分からないかい?」
と、校長先生が聞くと、響の妹は、スマホを確認しだした。
「11時頃です」
「分かった。響くんの妹くんよ、僕は君のお母さんが帰って来る頃にもう一度来てもいいかい?」
「え!?11時ですよ?夜遅いですよ?」
と、響の妹は驚いていた。
元々俺達は、迷惑かもしれないが、夜どれだけ遅くなってでも真実を響の親御さんに伝えるために来た。
だから、11時であろうと関係ない。
だって、今も響は1人で苦しんでいるのだからな。
「生徒が苦しい思いをしているのを、見て見ぬふりをする事はできませんので」
と、俺ははっきり伝えた。
響の妹もきっと、心配しているはずだ、怖いはずだ。
だから、俺達は響の味方だということを響の家族には知ってほしい。
すると、響の妹は涙を流しながら俺達に言った。
「お兄ちゃんの事を助けようと考えてくれてありがとうございます…!」
(4時間半後)
俺達は校長先生の車の中で響の母親の帰りを待っていた。
白い車が、響の家に止まった。
どうやら帰ってきたようだ。
俺は寝ている校長先生と、教頭先生を起こして、響の母親に話をするために、もう一度インターフォンを押した。
ピンポーンッ♪
「はーい」
先程の響の妹とは、違う声がした。
ガチャ!
「こんな時間に、どちら様ですか?」
「僕達は、響くんの通う中学校の者です。響くんの事で謝罪と、報告に来ました」
と、校長先生は優しい口調で伝えてくれた。
「先生方でしたか」
ここからは、俺の仕事だ。
「響くんのお母様。僕は、響くんの担任の、大野 真と申します。この度は、息子さんが辛い思いをしているにも関わらず、それに気づくことが出来なくて、誠に申し訳ございませんでした!」
そして、俺は深く頭を下げた。
後ろで、校長先生と、教頭先生も、頭を下げているのが分かった。
「顔を上げてください。響くんの事で、わざわざ家まで来てくださり、ありがとうございます。
実は私も、旦那も、仕事で響くんと会うことは、ほとんどありませんでした。
だから、響くんが悩みを抱えていることは、親である私達も気づくことは出来ませんでした。だから、響くんのことは、私達にも責任があります。ですので、頭を上げてください」
と、響の母親は言ってくれた。
「早速ですが、響くんのお母様。僕達は、学校で調査をしてみたところ、響くんがいじめにあっていたということが分かりました。その事について、何か分かりませんか?」
「そうですね。私は、響くんと1週間ほど会ってませんから、よく分かりませんね。ほんと、母親失格ですよね…」
そう言って響の母親は、両手で顔を覆い、泣き崩れてしまった。
「その話。本当ですか?お兄ちゃんは、先週までは元気だったけれど、火曜日の朝からいきなり元気が無くなりました。もしかしたら何かいじめに関係があるかもしれません」
そう言って玄関から、響の妹が姿を現した。
「火曜日の朝…。大野先生。修学旅行での響くんの様子はどうでしたか?」
と、教頭先生が俺に聞いてきた。
「クラスメイトと仲良く話して、お互いに楽しそうにしていました」
「なるほど…」
と、言って教頭先生は黙り込んだ。
「もしかして、失恋…?いや、違うか…」
響の妹は、響の母親の背中をさすりながら言った。
「失恋?もしかして、冬美と龍生が付き合ってそれで…。前から話していた響が悪いように言われている…。というのは充分有り得ると思います」
俺がそう言うと、響の妹は驚いたような顔をした。
「冬美って、菊池 冬美ですか?」
「そうだけど、知っているかい?」
「はい。知っています。お兄ちゃんは、去年の5月頃から冬美って子と付き合っていますよ?」
「な、なに!?」
となると、龍生からしたら響は邪魔者になる。龍生の親は確か政治家だったはず…。
その力で沢山の子分の様なやつがいたな。
そいつらに嘘の情報を流させた!?
充分有り得る。
「分かった。ありがとう。もう少し学校で聞き込みをしてみるよ。夜遅くに済まなかった」
と、俺が言うと、
「いえいえ。こちらこそ、夜遅くまで待ってもらってすいません。お兄ちゃんの事はお願いします。私達もやれることはやりますので」
と、言って響の妹は、深く頭を下げた。
情報は、充分集まった。
明日、龍生の子分と、龍生に話を聞くとしよう。
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