第3話 響の過去&兄妹愛は世界を救う

 僕のお母さんは、他の家とは少し、いや。かなり違った。


 そのことに気がつくまであまり時間はかからなかった。


 僕のお母さんは僕に物心がつく前から、僕に暴力を振るっていた。

 そして、お父さんは単身赴任で都会に住んでいたため、僕は小学校に入学するまでは、お母さんは子供に暴力を振るうもの。お父さんはとても優しいものだと思いこんでいた。


 お母さんは、僕が小学校に入学するまでは顔や体、関係なく殴ったり、蹴ったり。

 時には血が出ることもあった。

「痛い、苦しい…。」


 僕に暴力を振るっているときの、お母さんの顔はとても幸せそうな顔だった。

僕は、その顔が大嫌いだった。


「私があなたに暴力を振るのは、あなたの事を愛しているからです」

 それがいつの間にかお母さんの口癖になっていた。



 僕が小学校に入学する1週間前。


「痛いっ…。やめてお母さん……」

「響?勘違いしないでね。私があなたに暴力を振るうのは、あなたの事を愛してるからですからね」


 あれ?今日は、顔は殴ったりしないんだ。

 僕は少しホッとした。


 

 どうして…?痛くて苦しいから暴力は、振るわれたくない。

 けれど、どうしていきなり顔を殴らなくなったんだろう…?



 今日は、小学校の入学式の日。

 お母さんには、いつも「あなたは病気を持っているから外に出たらだめ」と言われている。

 だから僕は、久しぶりに家を出る。


 けれど、僕が病気になってるならお母さんにうつらないのは、何でだろう?


 お母さんは、僕を小学校に連れていったらすぐに帰ってしまった。


 他の家族はみんな、仲が良さそう。それに比べてうちは……。


 寂しくなるから、考えないでおこう…。



 入学式の1週間後。

 今日は、初めての「体育」の授業がある日。


 僕は『うんどう』を、初めてした。

 息が苦しい。汗で服が濡れて気持ち悪い。

 けれど、『うんどう』をするのは気持ち良い。脳がスッキリする。


「汗で濡れた人は着替えてくださいね~!」

 担任の先生にそう言われ、僕達は教室で着替えることにした。


 僕がシャツを間捲り上げたとたんに、クラスメイト達がザワザワと騒ぎだした。

「響くん…。その傷どうしたの?」


 入学してから仲良くなった、しゅんくんが僕に聞いてきた。


「え…?お母さんに暴力を振るわれただけだよ?しゅんくんはお母さんに暴力を振るわれてないの?」

「……?振るわれてないよ?響くん…。大丈夫?それ先生に言った方がいいよ?」


 それから先生に暴力を振るわれている事を伝えたら、血相を変えて校長先生に伝えに行った。


 僕は今、校長室で校長先生の前に座っている。


「平野くん。お母さんに暴力を振るわれているって話は本当かい?」

「はい。ほんとです」


 そう言って僕は、お腹の傷を見せた。

「うっ…。すまない!傷が苦手でな。すまない……」

 校長先生は、つい口からでてしまった言葉をすぐに取り消し深々と頭を下げた。


「大丈夫ですから」

「すまない、ありがとう。ところで、お父さんは家にいないのか…?」

「お父さんは、遠くの町で働いています」

「単身赴任か…」

「とりあえず、平野くんのお父さんに電話をかけておくよ」

「ありがとうございます」


 お父さんは仕事を休んで、すぐに駆けつけてくれた。


「響!お母さんに暴力を振るわれているって本当か?」

「本当だよ…」

 そう言ってお腹の傷を見せた。


「響…。今まで辛い思いをさせてすまなかった」

 そう言ってお父さんは僕を抱き締めて、頭を撫でてくれた。その時のお父さんの手のひらの感触は今も忘れない。

やっと僕は、救われるんだ。



 2日後。両親は離婚した。

 もちろん原因は僕に対する暴力。



 それから8年間、お父さんは男手ひとつで僕を育ててくれた。


 僕は、そんな優しいお父さんが大好きだ。



 8年後。(響…中学2年生)


「響…。話がある」

 お父さんは、やけに深刻そうな顔をして、部屋に戻ろうとしていた僕を呼び止めた。


「どうしたの?お父さん」

「あの…。実は俺に、好きな人ができてな。それで、その人と結婚したいと思っている。そこで、響は前のお母さんから暴力を振るわれていたから、無理をしてほしくないと思ってな」


 お父さんは、いつも自分の幸せよりも、僕の幸せを優先してくれる。

 僕のお父さんは、こんなにも優しい人で、とても誇らしく思う。


 だから、僕の答えは決まっている。


「結婚の話なんだけれどさ」


 お父さんは、ゴクリと喉を鳴らした。


「僕は、お父さんにも幸せになってほしいと思っている。だから僕はお父さんが結婚する事に、反対しないよ」

「俺は響と居られればずっと幸せだぞ?……結婚を認めてくれてありがとう」


 そう言ってお父さんは僕の事を抱き締めた。

 もう。お父さんったら。


 僕はお父さんの結婚を認めたけれど、実は新しいお母さんがどんな人かがすごく心配。

 きっと御父さんが好きになった人だから優しい人に決まっている。

 けれど、1度根付いた恐怖心などは、そう簡単には除ききれない。


 今は、お母さんになる人が優しいであることを祈ろう。



 1ヶ月後。


 今日は、お父さんの結婚相手と会う日だ。

 いつもより少しオシャレな服を選んだ。これで、お父さんが恥をかくことはないだろう。



 今の時刻は17:48。確かお父さんの結婚相手との待ち合わせ時刻は、18:00。

 10分と少し早く着いた。


「坂井さんが迷わないように店の前で待っておこう」

 ん?


「坂井さん!」

「あら、平野くん」


 一瞬僕が呼ばれたのかと思い反射的にそちらの方を見た。

 そこにいたのは、お父さんの結婚相手と、だった。

 顔立ちはとても大人のようだ。


「あ、良い忘れていた。あの子は今日から響の妹になる子だぞ」

「え!?」


 お父さんは、言うことを言って坂井さんという人のところに行って楽しそうに話している。

 良かった。お母さんになる人の外見は、とても優しそうな人だ。


 僕達は、少し値段の高いステーキの店に来ている。

 恐らく僕と、坂井という人の娘さん(二人とも坂井だけど)が、少しでも2人の結婚に前向きになるようにするためだろう。



 ステーキは、とても美味しかった。

 本当ならもっと味わいたかったが、気まずくてすぐに食べ終えてしまった。

 お父さんと坂井さんは、ずっと楽しそうに話していてまだまだ料理が残っている。


 どうしよう……。


 そういえば!この店には、美しい自然が見られるバルコニーの様なところがあると、店に入ってすぐのところにあった店内の案内図に書いてあったはず…。


 ここにいても気まずい。そして美しい自然を見たいと思ったので、バルコニーの様なところに行くことにした。


「ちょっとお手洗いに行ってくる」


 適当に嘘をついて、あの場から逃げ出した。


「わぁ…!」

 あまりにも美しかったので、つい声が漏れてしまった。


 僕は、その美しい自然をもっと満喫するために木の柵から体を乗り出した。


「(美しい…)」

 そう呟いたそのとき、


 カツン、コツン…


 誰かの足音がした。

 慌てて後ろを振り返るとそこには妹になる子がいた。

 もしかしたら、今の呟きを聞かれてしまっただろうか…。だとしたら、とても恥ずかしい。


 近くで見ると、とても美しく、可愛い子だな…。

 おっと、いけない!こんなことを考えていたらこの子が家に来てからずっとソワソワしてしまう!


 それから僕達はお父さん達の結婚に対してどう思っているかを話し合った。(少し嘘をついてしまったのは、ここだけの話)


 僕の妹になる子は、お母さん思いの良い子だった。

 僕達は親の前では仲の良い兄妹きょうだいを演じることを約束し、握手を交わした。


 月明かりに照らされて、妹になる子の顔がさっきよりも美しく見えた。



 2週間後。(4月下旬)


 お母さんと妃菜(妹)が家にやって来た。


 2人は、とてもいい人だったので義理のお母さんや、妹と思わず、本当のお母さんや、妹だと思って接することにしよう。

 そんなことを考えながら家の近くを散歩していた。

 すると、公園の方から悲鳴のような声が聞こえてきた。


 近づいてみると、妃菜が3人組の高校生に腕を捕まれていた。


 慌てて僕は、警察に電話をかけるふりをすると、高校生達は逃げていった。


 !?

 妃菜は、足の力が抜けたかのようにその場に倒れかけた。

 支えようとするも咄嗟だったので、抱き締めるような形になってしまった。

 妃菜の小さな体を抱き締めたとき、「僕がこの子を守らないと」と思った。


「おっと!妃菜大丈夫か?」

「お兄ちゃん?」

「あぁ。そうだ」


 妃菜は、とても怖い思いをしたのだろう。僕の胸の中で大声で泣き出した。

 僕は、本当の妹を守るかのように、大事に妃菜の頭を撫でてあげた。


『あの日を境に、妹の様子が少しおかしくなった』



 1日後。


 僕は、いつも学校から帰ると、手を洗ったらすぐに部屋に籠って、読まずに貯まっているラノベをコツコツ消化している。


 今日もラノベを消化するために帰って手を洗って、すぐに部屋に入った。


 ここまではいつもと同じだった。

 しかし……


 コン、コン、コン…

「お兄ちゃん?部屋に入っていい?」


 妃菜?どうかしたのかな?

「いいぞー!」


 ガチャッ…

「おぉ…!」

 部屋の扉の開く音と共に、妃菜の驚くような声が聞こえた。


「妃菜。どうしたんだ?」

「え、?あ!え~っと、お兄ちゃん。昨日は、助けてくれてあ、ありがとう」

「大事な妹を、守った。当たり前の事をしただけだよ」


 ん?いきなり妃菜の顔が、赤くなっていったのが分かった。


「(大事な妹…?)」

 妃菜は、そう呟いてもっともっと、顔が赤くなっていった。


「お兄ちゃん!私達、仲の良い兄妹を演じるって言ったよね?」

「あぁ。言ったな」

「でも、お母さん達の前だけで、仲の良い兄妹を演じてたらいつかばれると思うの…」

「たしかにな」


 ?全く妃菜が最終的に言いたいことが分からない。


「そこで、私達お母さん達の前だけじゃなくても仲良くしない?」

 なるほど、そういうことか。


「妃菜は…、僕と仲良くしていいのか?」

 妃菜は、その言葉を聞いた途端キョトンと、首を傾げた。

 え?僕おかしなこと言ったかな…?


 妃菜は、少し考えてから口を開いた。

「いいに決まってるじゃない!」

「いいのか…。ありがとう妃菜」


 そう言うと、妃菜はニカッと笑って僕にお願いをしてきた。

「お兄ちゃんお願い!今そこであぐらをかいてくれない?」

「あぐら?いい、けど…?」


 よく分からないが、僕はあぐらをかいた。


「よいしょ、よいしょ」

「妃菜さん??」


 妃菜は、なぜか僕の足の中に収まってきた。


「普通の兄妹は、こんな感じだよ?」

「普通の兄妹すごいな!……ちょっと恥ずかしくないか?」

「誰もいないのに、恥ずかしいってまさかお兄ちゃん私に惚れちゃった?」

「なんでだよ!…少し前まで全く知らない人だったけれど、いきなり距離が近くなるのは恥ずかしいなって思って……」

「………むぅ。お兄ちゃん!妃菜は、拗ねたもんね~だ!」

(どうして、所詮は義理の妹のように言うのよ…。私はお兄ちゃんの事大好きなのに…)

「ごめん妃菜。何でもいうこと聞くから許してくれないか?」


 妃菜は、いきなり目を輝かせた。

「お兄ちゃん?何でもって言いましたね?」

「言ったぞ…?」

「なら、今からいうことは絶対に守ってください!私は将来、お兄ちゃんと結婚します。わかりましたね?」


 け、結婚…?

 多分すぐに忘れるだろ~。


「いいよ…?」

「はい!言いましたからね!約束ですよ?」


 そう言って妃菜は、小指を出してきた。

 僕は、それに答えて小指を絡めた。

「「ゆ~びきりげ~んま~んーーー」」


「お兄ちゃんありがとう!」


 そう言って妃菜は、僕の胸に飛び込んできた。

 まったく、中学生になったら女子は反抗期になるものじゃないのか?可愛い妹だな…。



 1ヶ月後。(5月下旬)

 ーー平野 妃菜ーー


 お兄ちゃんは、幼馴染みだという菊地 冬美という人と付き合った。

 私との約束は、もう忘れちゃったのかな…。


「(お兄ちゃんの嘘つき…。お兄ちゃんが他の人を好きでも私はお兄ちゃんのことが大好きなんだから…)」





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長文になってしまってすいません。

今さらなんですけど、長文(4000字程度)、普通?(2000字程度)←投稿頻度多くします

どちらがいいか、今後の参考にしたいので、コメントしてほしいです。


ここまで読んでくださりありがとうございました!

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