第7話 故郷の恵み

ゲートを何者かに奪われてしまって、俺達は路頭に迷っていた。


「これからどうすっかなぁ」


「ごめんね、ボクのせいで...」


「いなりのせいじゃねぇよ!気にすんなって」


いなりは未だに自分に責任を感じている。落ち込んだ姿も可愛いが、ずっとこの調子だと流石に可哀想だ。


「どこか行く宛てはないのか?もう夜遅いし、とりあえず泊まれる場所とか」


「うぅん、あるにはあるんだけど...」


いなりは途端に嫌そうな顔をする。でも泊まれる場所の心当たりはあるようだ。


「じゃそこ行こうぜ」


俺はいなりの案内でしばらく歩き、豪邸に連れてこられた。...なんっだここ、金持ちの匂いしかしないのだが。


「着いたよ、ここがボクの家」


「家っ!?家って言ったか今!!?」


どうやらここがいなりが生まれ育った家らしい。なんて豪華絢爛な雰囲気の家なんだ...果たして俺なんかが入って良いのだろうか。


「ただいまぁ〜」


いなりが大きく重そうな扉を開けると、中には更に豪華な空間が広がっていた。金色が眩しい...目が慣れていないせいで視界がチカチカする。


「お帰りなさいませ、いなり様」


「久しぶりユナタ!元気にしてたぁ?」


家に入ったところのすぐ横に狐の獣人がいる、この家のメイドさんか?にしても可愛いな...いなりとは違った可愛さを感じる。


「いなり様のお連れ様ですね。初めまして、私はいなり様の家来のユナタと申します、以後お見知り置きを。」


「よ、よろしくな」


あまりの丁寧さ清楚さになぜか押しつぶされそうな俺、礼儀正しすぎだろ...でもその丁寧さがこのこの可愛さを引き出している気がする。


「ちなみにユナタ、母上は今いる...?」


いなりはユナタに近づき小声で聞く。何かやましいことを話す時の雰囲気を感じる。


「いいえ現在不在です、ツキ様は野暮用を済ませると言い、つい昨日どこかへ行かれました。数日は戻らないとのことです」


「ふぅーっ良かったぁ!母上がいたら面倒だからなぁ...」


面倒?厳しい人なのだろうか、いなりがやたらと怯えている。あれだけの強さを持っているいなりが怖がるくらいだ、相当威厳のある人なのだろう。(あ、狐か)


「お疲れのことでしょう、お風呂の準備を致します。少々お待ちください」


俺達は風呂に入るために長い廊下を歩き、やっとの思いで着いた風呂は想像通り馬鹿広かった。


「ひろっ!なんだこの風呂はぁ!!」


「えへへぇ、気に入ったでしょぉ!」


シャワーで軽く体を流し広く深い浴槽にはしゃぐ俺。こんなに広いとつい泳ぎたくなってしまいそうだ。


2人で風呂を出て着替えると(いなりは裸のまま)ユナタが食事を用意してくれていた。


「粗末な食事ですが、私が作らせて頂きました。良ければお召し上がりください」


長いテーブルに並ぶ料理の数々はどれも美味しそうで、いい匂いに舌鼓をうたざるを得なかった。


「うまっ!俺の料理の何十倍美味いんだ...」


「ユナタの料理久しぶりだぁ、やっぱり家の味だよねぇ!」


楽しく美味しい食事の時間はあっという間に過ぎ去り、俺たちは眠るために寝室に案内して貰った。


「お休みご主人!ゆっくり休んでね♡」


「お休み、お前もな」


いなりの頭を撫でて寝に入る。しばらく眠っていると、誰かが肩を叩いていることに気づき起きる。


「...んぁ...?」


寝起きの視界はとても悪く見づらいが、そこにユナタがいるのは分かった。


「...何かようか?」


「ゆうと様の旅の疲れを癒しに参りました」


旅の疲れ...?俺の頭は完全に寝ており、正常な判断ができなくなっていた。


「じゃあ頼むわ...」


俺がそう言うと、ユナタは俺の上にまたがってくる。ユナタの温もりを股間越しに感じて興奮してしまう。


「おっお前、何して...やめろよ」


眠いせいで体が言うことを聞かない。今すぐ止めさせるべきなんだが上手く体が動いてくれない。


「お身体は正直ですね、とても硬くなっていますよ」


ユナタが俺のあれを優しく撫でる。ズボン越しでも確かに感じる手の感覚、相変わらず俺の上にあるユナタのあそこの温もり。


「マジでっ...やめろって...」


目眩のようなクラクラする感覚に動揺する。ユナタが顔を近づけて来て、その甘い匂いに余計困惑する。


「ゆうと様は紳士ですね、でも紳士にも鬱憤があるはずです。全て私に注いで下さい...」


ユナタがスカートを下ろそうとしたその時


パチンッ


突然部屋の電気が付く。


「何してるの、ユナタっ!」


いなりが起きたようだ、必死にユナタを俺から引っぺがしている。


「...っ!俺、なにやって!」


ようやく頭が回ってきた俺は事の重大さに気づく。危ないところだった、あのままだと俺はユナタと...


「いけませんいなり様、ゆうと様をまだ癒せていません」


「癒すとかじゃないでしょ!?駄目だよっ、もぉ〜神力まで使って...」


神力?聞いたことはあるが、実際にそれが何なのかは分からないな。


「ごめんねご主人、悪いこじゃ無いんだけど、オスに飢えててさ...」


「...」


ユナタは黙って俯いている。恐らく神力と言うのは神が持つ力、いなりが使う常識改変もその1種だろう。じゃあさっきのクラクラはユナタの神力か?


「も、申し訳ございませんゆうと様...逞しいお身体に興味を持ってしまい...ついセッ」


「わぁーーわぁああ!!」


いなりが慌ててユナタの口を抑える、よくやってくれたいなり。


こうして、夜に起きた軽い事件は幕を閉じた。




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