第3話 超絶癒しタイム

いなりと契約を交わした俺は、いなりに癒しを求めていた。


「癒す癒す言ってるけど、具体的にどんな風に癒してくれるんだ?」


そういえば「癒す」という内容を知らぬまま契約をしてしまっていたことに気づいた。我ながら軽率な判断だったなと少し後悔している。


「どんな風にかぁ。ボクはご主人が望むことならなんでもするよっ!」


「な、なんでも…」


なんでもと言う言葉の魅力に飲まれながらも、俺は理性を保とうとしていた。


「えっとじゃあ…」


何をお願いしようか。うっかりすると性的なことを要求してしまいそうで怖い。


「じゃあ、俺とハグをしてくれないか?」


「良いけど、そんなので良いのぉ?」


「良いんだ、俺はいなりにハグして欲しいんだ。」


俺は毎日一人で暮らしていたため、人肌恋しくなっていたのだ。最後に人とハグをしたのなんて随分前だしな。


「(それにいなりはもふもふして気持ちよさそうだしな...)」


「分かった!はい、ぎゅう〜っ♡」


「ぅぉおっ!!」


いなりが両手で俺を抱きしめる。もっふもふの体が俺を包み込み、いい匂いが俺の鼻を喜ばせる。


なんだこの感覚っ…一生こうしていたいぃ!!いなりを抱き返そうと思ったが、あまりのいなりの体の小ささに躊躇した。俺が触ったら壊れないだろか…


「やっぱりご主人いい匂い〜!すりすりぃ♡」


いなりが顔を擦りつけてくる。目を瞑って嬉しそうな表情しやがってぇ!思いっきりもふもふしてぇ!!!


「どぅお?癒された?」


「もちろんっっ!すげぇな、これが神様の力か!!」


「まだ何もしてないけどぉっ!?」


恐ろしきもふもふ加減だ、俺じゃなかったら死んでたな。この毛並みの良さ、もふっと柔い感触、獣とは思えないいい匂い...駄目だぁ…このままじゃ駄目人間になってしまうぅぅ!


「気に入って貰えたようで良かったよぉ!いっぱい甘えて良いんだよぉ♡」


これからこれを毎日もふれると思うと...あぁぁ、幸せだぁ。


「...ん?あっ、ご主人怪我してるっ!」


いなりが俺の腕を見て言う。最近はストレスの影響で体を掻く癖がついてしまったのだが、腕は特に酷く、今も少し血が出ている。


「大丈夫っ!?すぐに癒すからね!」


いなりは俺の腕を持ち上げ、自分の額に近づける。一体何をしているんだ...?


すると、俺の怪我をした部分が神々しく光り始めた。


「うぉっ!!?」


思わず驚いたが、なんだか、怪我がほんのり痛くなくなっていくような...


「よし、治ったよ!」


いなりは笑顔で言う。治った?怪我が今ので治ったって言うのか?いやっ、流石にそんなこと...


治ってるーーーーーっっっ!!!!


どっひゃあ!マジで治ってんじゃん!何が起こったんだ、癒すって...マジで癒されてんじゃん!?


「すげぇなお前...何をしたんだ?」


「ボクも立派な神様だからねっ、怪我を治すぐらいわけないよぉ。死に至る病とか重症もすぐに直せるんだよ!」


ぉおっ、さらっとすげぇこと言ってんな。段々いなりの凄さが分かってきた気がするぞ。


「ボクは神様の中でも1番すっごい段位、至極だからね〜」


いなりはドヤ顔で言う。段位が至極?なんのことだろうか。


「その段位ってのは何だ?」


「段位は簡単に言えば、神様の実力を表す階級みたいなものだね。全部で3つあって、下から愚民、非凡、至極だよ。」


「じゃあお前っ、1番上じゃねえか!」


そりゃあドヤっても良いな...つうか、そんなに偉いんなら俺はこんなに親しく接しても良いんだろうか?


「えっと、いなりさん...?」


「わっ止めてよその呼び方ぁ!ボクは確かにめちゃんこ偉いけど、関係的にはご主人の従者なんだからねっ」


「そ、そうか。」


なんだか複雑な気持ちだな。でも本人が良いって言うんなら良いの、か?


「あ、ご主人〜そんなことよりボク、一緒にお風呂入りたいなぁ」


「OHURO!!?」


「早くいこうよぉっ、もう夜遅いし!」


いなりは俺の手を引っ張って強引にお風呂に連れていく。早鐘を打つ俺の心臓、このままお風呂に行ったら俺の心臓は保つのだろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る