デヴィト・ボウイに憧れて

@johnny773

第1話 

 死ぬほど嫌いな夏が終わった。彼らには理解できないだろう。あの熱されるような地獄のような暑さの苦しみが。

 新宿の夜に鈍い音が響く。越沢亮介は馬乗りになり、血走った目で血だらけの男を見下す。生暖かい夜風が彼の長い金色の髪を靡かせる。

「これでいいだろ…金は無いのか…」

 亮介は男の財布を放り投げて、酒を片手に新宿の街を歩く。

「星が綺麗だなぁ…Starmanはいるかなぁ…」

 拳と美しい顔が赤く染まった亮介は遂に酔いが回り始めて路上に倒れ込む。しばらくして風が冷たくなってきた頃、亮介の周りを警官が囲む。

「ちょっとお兄さん、飲み過ぎじゃ無い?血も出ているし、ちょっと行こうか」

 そう言ったのは口髭を蓄えた50歳後半ほどのダンディーな男性だった。

「フッ…何…?私を誘っているの…?」

 そう亮介は挑発して、警察たちを嘲る。すると、そのダンディーな警察は「舐めんなカマ野郎」と言い放った。キッと亮介は警察たちを見つめて妖しくニヤリと笑った。

「大人しく着いてこい」

 そう言われて屈強な男に立たされた、長身で華奢な男は月夜に響くように高笑いしながらパトカーに乗り込んだ。

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