遺跡ダンジョン
第30話 遺跡の改変修正
遺跡の地下に作られていたダンジョンにあったゲートによって、遺跡から弾き出された一行。それでもレミアはあのダンジョンに本物のゲートがあると主張する。
「魔界に通じるゲート自体はなくなってはいない。魔物がこの世界にどんどん現れているのがその証拠だ。多分巧妙に隠されている」
「でも何で隠す必要が?」
「私達のように妨害するものを簡単に来させないためだろうな」
この説に明もクロ子も納得する。地上に魔物が増えれば、それを阻止する動きが出てくるのは誰だって予想出来るからだ。そのための対策を講じるのは当然だろう。
と、ここで明はこの問題の根本的な疑問を口にする。
「うーん。そもそも何で魔物はこの世界に来るようになったんだろ」
「単純に人口問題だろうか。数が増えすぎてこの世界に進出してきたとか?」
「魔界ってそんなに狭いの?」
「十分な広さはあるはずだが……? 魔王に会えば全ては分かるはずだ」
レミアは思考を途中で放棄する。その意見にも明は首をひねった。
「て言うか、先生は魔王と知り合いなんすか? 簡単に会うとか言ってますけど」
「ああ、昔はよく一緒にお茶を飲む仲だったんだ」
「ま、マジすか」
「もう40年ほど魔界には行ってないから、その間に何かがあったのかも知れんがな」
魔王との関係を話したところで、レミアは遠い目をする。明には分からないドラマがそこにはあるのだろう。話がそれてしまったところで、クロ子が軌道修正を試みる。
「とにかく、話し合うべきはこれからどうするかですよ」
「ああ、そうだな。じゃあ情報を整理しようか」
と言う訳で、現時点で分かっている事を洗い出す事になった。まずは遺跡自体は特におかしな点はないと言う事。細工がなされていたのはゲートが設置されていた地下だけだ。
その地下は侵入者を拒むダンジョンになっている。ダンジョンを正しく進めば必ずゲートには辿り着ける――。
「と言う事は、ダンジョン攻略をどうするか」
「今のダンジョンは正しいルートが閉ざされていると見ていいな。それを正しい状態にするのが第一段階だ」
「先生はどうすれば正しくなるのか分かりますか?」
「全ての仕掛けは遺跡の中にあるはずだ。まずは遺跡を調べ尽くそう」
こうして、まずは遺跡全体の調査をする事に決定。早速行動を開始する。
もう一度遺跡に入ったところで、レミアが遺跡内部全体を魔法スキャン。どこかに地下ダンジョンと連動しているギミックがないかを調査する。
彼女は魔法の杖を床に当て、遺跡内で稼働中の魔法陣と感覚をリンクさせた。
「なるほど。このまま奥の星祭りの間に行ってみよう」
「どんな場所なんすか?」
「星の運行を調べ、その力を最大限に活かす事を目的に作られた部屋だ。その星座表記が一部改変されていた」
レミアいわく、その改変の影響が地下に反映されている可能性があるらしい。遺跡の資料は異常が起こった時に対応出来るように魔界にも保管されているらしく、魔界の研究者がそれを活用した可能性があるのだとか。
「魔人の中にも賢者みたいなのがいるんですね」
「そもそも、この魔界プロジェクトは師匠と魔人達の共同研究の成果でもあるからな」
「ああ、だから秘密裏に……」
「そう言う事だ」
2人が談義をしている間に、3人はその星祭りの間に到着する。この部屋をいじった誰かが地上からの訪問客用の罠を仕掛けているかもと3人は身構える。
しかし、そう言う対策は特になされておらず、部屋は普通に入る事が出来た。
「あっさり入れましたね」
「まぁこの部屋に罠を仕掛けるくらいなら、さっきのスキャンの時に反応があるはずだからな。あまりいじるとどう言う悪影響があるか分からないから、改変も必要最小限にしたのだろう」
レミアはそう推測すると、部屋の天井に展開されている星座図を確認する。これは、ドーム状の天井にこの地に見える星座が投影されていると言うもの。言ってみれば、魔法で再現されたプラネタリウムだ。
その完成度と美しさに、明は思わず感嘆の声を漏らす。
「これはまた……。壮大で綺麗だなあ」
「観賞用に作られたもんじゃねえぞ。あくまでも研究用だからな」
「わーってるよ」
「2人はそこで見ていてくれ。今からこれを元に戻す」
レミアはスマホを操作するように両手を器用に動かして、天井に表示されている星座の形を少しずつ弄っていく。それはまるでパズルゲームを解いているかのようだった。
明はこの世界の星座についてはあまり詳しくなかったため、大魔女が行ってる作業をゲームのプレイ動画のように眺めていた。
「見事なものだなぁ」
「明、分かって見てんのか?」
「いや、全然?」
明の脳天気な返事に、クロ子は頭を抱える。
「レミア様は遊びでやってんじゃないんだぞ」
「それは分かってるよ。だからじっと見てるんじゃん」
「……まぁいいか。明だからな」
「なんだよそれ。まあいいけど」
付き合いも長くなってきたので、クロ子も余計な労力は使わない。使い魔の彼女でも今のレミアがやってる事はしっかり理解出来ているのだろう。もし明がこの作業によって何が変わっていくのかに興味を持っていたら、しっかり丁寧に解説するつもりだったのかも知れない。
明がそこまで熱心でなかったので、その選択肢はキャンセルされた。
「うん、これで元通りだ」
必死に手を動かしまくっていたレミアの手が止まる。どうやら全ての工程が終わったらしい。表示されている各星座をひとつひとつ指差して星座図の修正を終えた事を確認したところで、杖を床に押し当てて改めて魔力スキャン。どうやら、何かしらの効果はあったようだ。
「これで地下室の次元構造が変わった。だが、それだけではないみたいだな」
「え?」
「遺跡の改変はこの部屋だけではなかったんだ。この部屋の魔力の流れを正した事で、今度は重力調整室がおかしな動きをし始めている。連動していたらしい」
と言う訳で、今度はその重力調整室に向かう。レミアによれば、その部屋に流れる魔力を正常化させれば、今度こそ正しいルートが地下に出現するらしい。
「星祭りの部屋を正した事で鍵が開いたみたいだな。さて、後もう少しだ」
「今度の部屋にはどんな役割が? 名前で予想はつくけど」
「文字通りの重力調整だ。この世界の重力情報を元に魔界の重力を調整している。そうする事で魔界の次元安定を保っているんだ」
レミアによると、魔界は単体では不安定なため、この世界と各種条件をリンクさせる必要があるらしい。特に重力情報は大事で、ここの値がずれると魔界が消滅する可能性まであるのだそうだ。
そうなったら、反動でこっちの世界にも大きな被害が発生するらしい。重力調整室はそれだけ特別な部屋だった。
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