七月二十一日(日曜日)
第27話 最後の日がやって来る
土曜日になり、真夜はカレンダーを見た。明日はとうとう誠也に会える最後の日だ。
大雨が降っていた。ざあざあという激しい音と共に、窓に大量の雨粒がつたう。
「明日が誠也に会う日なのにこんな雨なんて……ちゃんと行けるかな?」
明日は誠也に会う日だというのにあまりの雨だったら自転車で約束の場所へ行くことはできなくなるのではないかという不安があった。
市の体育館はバスで行くこともできるが、乗り換えが必須でかえって時間と料金がかかる。
バス停への待ち時間や乗り換えの時間を考えると、結局自転車が一番いいになってしまう。
不安になり、真夜は新聞の天気予報欄をチェックした。
「でも明日は曇りみたい。それなら行けるかも」
天気予報では雨は今夜をかけて強く降り続けるが、明日にはやむとのことだ。
それならば自転車に乗ることはできる。
日曜日になり、いよいよ約束の日が来た。天気予報通り、今日は曇りだった。
「よかった。雨やんだんだ」
スポーツ観戦である市内の中学校の部活の大会は屋内で開催される催しなのだから、雨が降っても関係ない。雨天決行である。
屋外で開催される野球やサッカーといった大会ならば雨天中止もあるが、屋内での大会は雨天でも決行だ。
しかし真夜の主な移動手段は自転車のみなので天気は気がかりだった。
昨晩は大雨だったが、雨はやみ、今は曇り空だった。きっと昼には晴れるだろう。
雨が朝方にやんだためか道も乾いている。それならばタイヤが滑る心配もない。
「今日は誠也に会える最後の日だもんね。絶対行かなきゃ」
もちろん誠也に会えなくなるのは寂しいが、だからこそ、今日はしっかりと思い出を作る最後の日として楽しもうと決めた。
真夜は持ち物の用意をした。ハンカチ、ティッシュ、財布などいつも持ち歩くものの他には暑いから飲み物も必須だろう。冷蔵庫のペットボトルのお茶を一本、手提げトートバッグに入れた。
マンションの駐輪場から自転車に乗り、目的地の体育館へと向かった。
市営体育館は自宅から自転車で約三十分くらいだ。
自転車をこいでる間も複雑な気持ちだった。
今日が誠也にまともに会える最後の日、とうとうこの日が来てしまった。
今日のイベントが終われば、そのままお別れだ。
今日が終わったら、誠也にはどんな風に言って家に帰ればいいのか。
最後なのだからこれまでのお礼を言うべきか、とそんなことを考える。
曇り空で太陽は出ていないが、その分じめじめとした暑さがもわんと外には広がっている。
しかし曇りの間から太陽の光がさしている。
いつもの晴天の直射日光ではなくじめじめしたむすような暑さだ。
今は曇りだが、やはりまだ天気は安定しないのだろう。
「あそこ、いつも誠也と会う場所だ」
自転車に乗っているといつも行く保羽川の河原が見えた。
目的地へはちょうどここの土手を走っていくことになる。
川は昨晩の大雨で増水していた。いつもより水位の位置が高い。
水の色もいつもの青く澄んだ色ではなく、茶色く泥が溶けたよどんだ色をしていた。
とてもだがこんな場所でいつものように河原に座ったり川遊びをしたいとは思わない。
こんな日に河原へ行くのは無理だろう。きっと地面も雨でぬかるんでるし、生えている草もびしょぬれだ。川も水位が高くて危険だ。
誠也との最後の日が屋内でよかった、と心から思った。
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